村おこし編

第91話 始動

「あの建物は、村おこしに使えるな!」


 村長が大興奮で話す。猪狩山は猪狩さんちの所有する山だった、つまりは村長の所有する山であり、そんな村長はたいそう魔王城を気に入った様子であった。

 みよちゃんはボンテージを着替え、村長のところへ真っ先に向かい、今までのおかしな現象はみよちゃんが発端だったと、謝ったそうだ。


 だが……村長は王様になっていたことや、呪いにかかっていたことなどの記憶もあいまいで、適当な返事をされたようだ。


『我らの絡んでいる事件は、人の記憶には残りづらいのだ。残っている城も、人の都合のいいように記憶が改鼠されるだろう』


 魔王がそう説明していますが、でも俺はきっちり覚えてますけどね?


『貴様ら勇者一味は別だ。あの女も記憶はそのうち消えて行くぞ』


 あ、そうですか。まあそんなもんですよね。

 俺、ミカゲ、あかねん、タローは冒険の記憶は忘れないそうだ。あかねんとタローは異世界ジャンキーでどうでもいいだろうけど、ミカゲはどうなのかな?


「ん? まあ面白い体験させてもらったぜ。それに、まあ――――――」


 恵奈とも付き合えるきっかけになったしな。と小声で照れるようにミカゲは言う。そうか、いずれは恵奈ちゃんちの会社、継ぐのねミカゲさん。



 それから、俺たちは一週間の休暇をもらった。俺はシアンの剣の柄にあったサファイヤを取り外して、ペンダントにし、常に身につけることにした。剣そのままでは持ち歩くことは、もう出来ないもんね。なので、剣は自分の部屋の押入れに袋にかけてしまってある。もちろん袋は俺の手作りである。



 休みが明け、俺たちは村長の命で、村おこしとなった田舎ファンタジアの整備を俺、あかねん、タロー、みよちゃん、大和田さんで担当することになった。

 なんでも、これから魔王城を目玉に『中世ファンタジーの冒険を体験できる村』として、村おこしをすることに決定したそうだ。

 その部署に俺たち5人は任命され、協力会社として、ミカゲのいる会社が担当することになった。


 俺はイベント全体の管理や、観光客の目線に立ったアドバイスなどを行うことになり、村民が準備していたアイテム販売などの選別や、観光促進のパンフレットを作ったり、村を回ってセリフの指導をしたりと、田舎ファンタジアという一大プロジェクトの村おこしのための仕事に忙殺される毎日だった。

 あかねんとタローもそれは同じ。だけど、


「異世界では、ぼくたちの知識が重要で重用されるんですよ!!」


 と生き生きと仕事をこなしていた。

 そんなジャンキーたちは、とても幸せそうだった。


 ……俺は、仕事を無理やりつめこみ、あの人のことを考えないように、剣も押入れにしまってなるべく見ないように、思い出さないようにしていた。

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