第90話 梵天寺ボンテージ

「い、いやぁ、しかし、異世界の冒険はすごかったなぁ。こ、これで終わってあとは帰る方法を考えなきゃいけないのかな?」

「そうだよ、タロー。帰る方法を見つけるまでに、ここで王様とかに重用されつつ、色々すったもんだしながら暮らすんだよねっ」


 いやあのさ、あかねんとタローよ。

 異世界ジャンキーが健在なのはいいけど、ここは現実よ? リアルよ?

 だって「ようこそ! 田舎村にある田舎城へ!」からのドッキリなのかなーと思った始まりの、冒険は終わったんだから。


 それともあれですか?

 光あれのおっさんはタローの父ちゃんだけど、それすらまるっと無視ですか。そこまで空想できるあかねんとタローは、違う意味でスゴいと思います、マジで。



「しかしこの城、どうやって作ったんだ? てーかこのままずっと残るもんなのか? この城って」


 魔王にミカゲが質問している。


『魔力で土を変成させ我が一晩で作り出した城だ。我の魔力が残っていれば、撤去もできよう。だがもう我には魔力はない。だからこのままここに残るであろう』


 ふうん、大きな焼き物のようなものなのか、これ。たしかに、城の高さ分の山が低くなってるから、山の土を使用したんだろうな。

 コンコンっと魔王城の壁を叩いたり、あちこちをみてまわるミカゲ。


「建物はうちんとこの仕事じゃないんだが、面白いよな。色々参考にしてぇよ」


 魔王城全部を見て回ったが、雰囲気は某外国の大聖堂みたいな、洋風の雰囲気である。緻密に作られた彫刻や、鮮やかなステンドグラスっぽいものまである。センスのいい意匠の大きな建物ではあるが、デザインは悪魔っぽい感じの趣きがアクセントとなり、見たことのないお城だった。


『その寝っ転がってる女の中に居たときに、テレビというもので見た。カッコイイと思ってアレンジして作ったのだ』


 魔王、センスは悪くないよな。この建物もすごいし。俺とミカゲが魔王にすげーすげー言っていると、魔王はふふん、と得意げな顔をした。


『ま、まあ、我に魔力が残っていれば、このぐらいの城であれば朝飯前よ』


 うん、ちょっとツンデレ気味ですよね。魔王様。



「ふぁぁぁぁ――――!! あ゛ぁ゛~~、よく寝たわ……」


 打ち捨ててある毛布の中から、ものすごくおっさんくさい声がした。こっちのほうが魔王っぽい声じゃないすか。


「あ゛――――寝違えた。だるいし眠いし……また寝とこ――――」

「待てや、このババア!!!」


 ミカゲがもういろいろと包み隠さずに、みよちゃんに詰め寄る。そして理路整然と今までの過程を話しつつ、みよちゃんに謝罪をするように強く求める。みよちゃんも断片的に魔王でいたときの記憶があったようで、すぐにミカゲに謝罪した。


「迷惑をかけて、ごめんなさい……。村長、いえうちのおとうさんにも謝らないといけないわね。それと村民全員にも」



 すっくと立つみよちゃん。そんなみよちゃんは自分の格好を改めて見て、


「いいいいいいいいやあああああ!!! ちょっとなにこれええええ!!!」



 あぁ、あまり見たくないです。お姉様。

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