第76話 それぞれの装備

「俺は二刀流を習得したぜ、和哉」


 ニイっと笑ってミカゲが言う。レベルも上がって、イケメン度も増している気がする。そんなミカゲの背中には、2本の刀っぽいものが差さっている。


「新しい刀は火炎刀というらしいな。熱を持った刀身の刀らしいぜ。熱を出すっていったから、てっきり溶接機みたいなものがついてるのかと思ったらよー、刀だけで熱を出すんだってよ。すげーな」


 ミカゲは龍族トレーニングで、長い刀タイプのものが合っていたらしく、大太刀と呼ばれるタイプの刀をぶん回していた。そこから、大太刀二刀流まで腕を上げたらしい。そして、火炎刀ともう一本、氷結刀を新調してもらったそうだ。そして、アイスソードは腰に差している。


「道具は使えなくなる最後まで、だしな」


 俺の視線がアイスソードに注がれていることに気づいたミカゲは、またかっこいいことを言った。くそー、レベルっていうかイケメンレベルが上がってんだろおおおお!! ちっ!!!

 鎧っていうのはなく、作業着の上に着物みたいなものを羽織っている。ちょっと和風でサムライっぽいよねー。


「作業着、思ったより便利だぞ? ポケット多いし」


 作業着は良さそうだけど、着たら便利で脱げなくなりそうだからいいや。それに鎧を着ちゃうとポケット使えないし。



「わたしの装備もすごいんですよ!!」


 あかねんがくるん、と一回転して、新しい装備品をお披露目する。まずは杖だ。どこかの魔術師から強奪した木の棒的な杖ではなく、きらびやかなプラチナっぽい素材の杖になっている。ペラペラとした手作りっぽいワンピースだった服も、鮮やかな青色の服に変わっている。


「杖を振るだけで風の魔法が出るようになってるんです。異世界ってこうじゃなくっちゃ!!」


 あのう、異世界じゃない……とは言えなくなってきている事実に、俺は頭を抱えた。トラックにぶつかって、全然知らない場所に飛ばされて、勇者ですドーン!! じゃないから異世界じゃないよ、と小声であかねんに言うが、彼女はジャンキーなのでそれをシャットアウトしているらしい。

 あかねんはそれ以降、俺たちから逃げるように、タロー君っ! とか言って、ブリブリポーズを取っている。


 そんなタローはとうとう鉄腕ア○ムっぽい格好は卒業したようだ。そんな俺に気づいて、やたらと得意げに俺に近づくタロー。


「ぼ、ぼくもバージョンアップしましたよ!!! 見てください!」


 あぁ、うん、黒魔道士だよね。顔が黒くて目だけ光ってるやつ。鼻と口は見えないやつだよね。


「こ、これ、チリやホコリも防いでくれるんですよ!! ガスマスクで呪文が遮られることもないんですよおおお!!!」


 とタローは大興奮して説明してくれるものの、ちょっと大きめな麦わら帽子の素材っぽい帽子、覆面マスク、あかねんと同じ素材の青色のマント、と、古式ゆかしい黒魔道士としか言いようがない。まあ、あかねんとペアルックだし、本人たちが喜んでいればいいか。


 龍族の方々に別れを告げて、俺たちは龍穴をあとにした。



「では、行きましょうか」


 ドラジェさんが手をぽんっと軽く叩く。それがここを出る合図のようだ。シアンのことが心配なので、ドラジェさんは龍穴の外まで、俺たちを送ってくれるらしい。クリーム色みたいな金色の光が薄れ、俺たちは元の洞窟に戻ってきた。

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