第77話 紫色の瘴気
「……なにか、龍穴へ入った当時と様子が違っています。気をつけて」
そういうと、ドラジェさんはうっすらと消えた。
田舎村はシアンの担当の地なので、ドラジェさんには手出しできないそうだ。
「姉様……」
不安そうな様子で、シアンはドラジェさんを見送った。
「大丈夫? シアン」
「大丈夫。でも尼と以前戦ったようになったら……」
珍しくシアンが言いよどむ。口をつぐんで下を向いてしまった。尼さんと一緒に戦ったときの死闘を思い出しているんだろう。
「まあ、なんとかなるぜ、ちびっこ。気に病むなよ」
ミカゲがワシャワシャとシアンの頭を撫でる。その行動で周りの気配を察知したシアン。顔を上げ周りの様子を伺った。俺も洞窟内部をぐるっと見回す。なにも変わった箇所はないが、なんとなく空気が……重いような。
ミカゲも同じ気持ちだったらしく、
「なんか、胡散臭い空気が混じってるな。これはここの洞窟だけじゃねぇだろ?」
俺たちは急いで洞窟を出ると、その妙な空気は濃くなった。というかうっすらと、大気が紫色に染まっている。
「魔王の瘴気が広がっている。危険だ」
「おい、瘴気って一体なんなんだよ」
ミカゲがシアンに問う。がシアンはうまく説明できないようだ。あ、そうだ、あれかな。田舎ファンタジアの発端となった呪いかな。
「ミカゲもなってたと思うけど、あの耳鳴り。あの呪いが目に見えるほど濃くなったんじゃないか?」
「耳鳴りか……あれはひどかったぜ。つまりあれか、それがこの村全体に広がっているってか?」
「わたしが目覚める前の呪いとは違う。もっと強い呪い。……魂を魔王が喰っている」
不穏なシアンの言葉が気になって、まずは村民の様子を見ないと、という意見が全員一致でまとまった。
なので、洞窟を出たところにある民家にお邪魔してみることにした。
「ここは、龍の洞窟です。えらい龍神さまが祀られています」
目線をあわさずに、農作業の格好をした男が、ぼーっと突っ立って、その言葉だけを繰り返す。奥にいたばあちゃんは、あぁいい天気だねぇ、と繰り返していた。
あかねんが民家にあるテレビを付けてみる、が電波が届いていないらしく、テレビは砂嵐をうつすばかりだった。
「おかしいですっ! と、隣も見てきます!!」
あかねんとタローは隣家を見に行ったのだが、そこでも村民は同じようにどうでもいい言葉を繰り返すだけだった。
「ちっ!! 恵奈もなのか……!!?」
ミカゲが恵奈ちゃんちに行こうとする、が俺はそれを一旦止める。バラバラに動くことは危険だからだ。
なのであかねんとタローと合流して、全員で恵奈ちゃんちに向かうことにした。
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