第71話 37564
「さて、ごちゃごちゃになってきた。とにかくまとめよう」
俺がこういう発言をしたのには、理由があるからだ。
ミカゲは、もう話についてこれないらしく、
「とりあえず三代目をぶっ倒す! あー! めんどくさい! 村長と大和田もぶん殴る! でいいんじゃねぇか?」
と、皆殺し発言をしていたからだ。話半分イチャつき半分のあかねんとタローも「悪いのはみよちゃん」で一致しているけど、話を聞いていないため理解できていなそうなので仲間へ簡単に説明することにした。
役場の俺たちのデスクに座る。ミカゲはみよちゃんのところにあった椅子を持ち出してきていた。そしてコピー機そばに置いてあるA4の裏白用紙をメモ紙にする。これはミスプリントの再利用である。
そこに油性マジックペンでキュッキュと俺は書き出す。
みよちゃん→魔王に乗っ取られる。穢の血をひいている。
村長→魔王に利用されていた人、一号。
大和田→魔王に利用されていた人、二号。
村民→呪いをかけられた哀れなひとたち。
俺→尼さんの子孫。勇者。
ミカゲ、あかねん、タロー→勇者の仲間。呪いや魔王に喰われることはないらしい。
シアン→尼さん時代に魔王と戦った龍。地主神。
ヨネばあちゃん→ただのばあちゃん(推測)
ヨネばあちゃんちの封印の石→魔王を封印していた石。俺が封印を解いてしまった。
俺の父さん→残念なえらばれし廃人。
「こんな感じかな」
「じゃあ三代目だけぶん殴っておけばいいんじゃねぇの?」
「まあ、そうなんだけどね……魔王が飛び立つ前にミカゲが攻撃したときにさ、剣技が通らなかったよね。ということは、俺たちみんな……魔王より弱いと思う」
ミカゲは現時点で、俺よりレベルが2つ上だ。それなのに、ちっともダメージを与えた気配がなかった。だから、今、魔王を目の前にしても、勝てないだろう。
「……うむ。マスターの今の力量では無理だな。そして時間もない」
シアンはちょっと悩んで、言った。
「わたしの龍穴から行ける場所で修行しよう。でないと間に合わないぞ」
シアンがそう提案してくれた。というか決定事項だな。
村長と大和田さんには、俺たちが留守にしている間に、魔王の居場所の特定と、魔王の行動による村内の異常がないかどうかを見てもらうことにした。村長は村内でなにか異常があれば、すぐ気づける立場にいるし、居場所の特定は大和田さんが詳しいだろう。
……今まではみよちゃんがいつも送り出してくれたから、なにかこう物足りないな。あの人はあの人で残念な美人だけど、一生懸命で元気をもらったよなぁ。狙いは魔王復活だったんだろうけど、もともとは楽しい人なんだろう。
そんなことを大和田さんに話すと、
「深夜子のそんな能天気な部分が、一番好きです。だからどうか……強くなって帰ってきてください。そして魔王を倒して深夜子を取り戻してください……!」
申し訳なさそうにペコペコする大和田さん。その大和田さんの肩に手を置く村長。よかった、村長と大和田さんは少しわだかまりが溶けたんだろう。
そんな様子の村長と大和田さんに見送られる俺たち。
「では、よろしくお願いします」
村長と大和田さんに挨拶して、俺たちは出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます