第70話 勇者なんです
「わしは反対だったのだ」
俺たちが、みよちゃんが魔王へ変わってどこかに消えてしまったことを伝えると、村長は力なく古めの村長椅子に座る。そして、ぽつりと話し始めた。
「きさまが深夜子を唆した、そうだろう? 大和田啓介。きさまが深夜子にその知識を与えなければ、深夜子は魔王にならなかったはずだ」
ん? 村長は魔王を崇拝し、復活させるのを是とするんじゃなかったのか?
「村長、あなたの一族は魔王……穢を崇めていたのではないですか?」
「……たしかに守り神として祀っておった。がしかし、まさか今の現代で穢が魔王として復活するとは思わんだろう。ほんのちょっとのささやかな願い事をしたり、見守って下さいなどの気持ちしか持っていなかった」
しかし、みよちゃんは小さな頃から、村の歴史を細かく調べていたらしい。村の歴史に興味を持つような娘は、父親を支えてずっとそばにいてくれるものだと思いこんだ父親。なので自分で知っている知識なども教えていた。
魔王のことは「本来はこの地の持ち主だった神様なんだ」と教えていたそうな。
……まあ、間違いはないけどさ。
そして、みよちゃんが大学へ行くことになり、大和田さんと知り合う。大和田さんは大学時代から少しづつ田舎村を調査し、みよちゃんと共同で魔王を復活させる手がかりを見つける。
その手がかりは、先程見せてもらった本と謎の物体。
あの物体にみよちゃんが触ったら、ツノが生えたらしい。
「僕は、深夜子があんなふうになるって思わなかった」
大和田さんは大和田さんで、村を純粋に活性化させるためだけに奔走していた。その気持ちを利用していたみよちゃんはツノが生えたことをきっかけに、どんどん村の歴史を紐解いていく。
そして、大和田さんに対してみよちゃんは魔王にとって都合のいいように事実を曲げながら、調査を進ませるように籠絡していた。
「わしはそのツノを見て、とんでもないものを信仰していたんだと、後悔した」
村長がみよちゃんのツノに気づいたのは、田舎ファンタジアの呪いが発動してから。大和田さんがこちらに移住してから、みよちゃんが大和田さんのところへいくようになり、村長とは顔を合わさなくなっていた。
まあ、村長がみよちゃんの結婚に反対してたのは、単純に父親が娘を取られるという、嫉妬だったんだろうな。
無言でうなだれ、落ち込む二人の男性。
そのとき、ゴスッと頭を叩かれる。シアンが俺にドラゴンチョップをしたのだ。
「マスターが言わなければならない」
そうか。
「大丈夫です。俺がみよちゃんを救います。……勇者だからね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます