第69話 バックロールは殴打技
大和田さんの調査は、シアンの話により、いろいろと食い違ってる点が判明した。その代表的なものとしては、尼さんが田舎ファンタジアを作った張本人という誤解であった。
「尼はわたしの気をこの土地に流す仕組みを作った。今、地主神の仕事は妹にまかせてある」
つまり、シアンは地主神と呼ばれているものらしい。龍穴と言われるものはシアンたちの住処なんだそうだ。そして、尼さんは気枯地だったここの土地にシアンの気を流して土地を潤すため、どの場所に何を建てるかなどを調べて実行し、現在の田舎村になったということだ。
……ん? 妹?
「うむ、まだ力は弱い。でも成長すればわたしより強くなる」
「そ、それって人間の姿になったらもっと小さいですよねそれなら僕が修行ということでその子をあずかりますよそして弟子にして一緒に修行と生活してお兄ちゃんとか呼ばれt……」
ドコッ!!!! あかねんが回転しながら、杖でタローを殴りつける。そして、その攻撃で目が回ったようで、その場へへたり込むあかねん。
「ふん、バックロールよ!!」
い、いちおう技名あるんだ……。
シアンはそんなタローに「妹はまだ人型には変化できんぞ。年数を経ないとだめ」と追い打ちのような忠告を言い聞かせていた。
「三代目がけがれの末裔ってのは三代目の先祖がけがれの血を飲んだのか……」
あかねんとタローの痴話喧嘩は放っといて、ミカゲがシアンに問いかける。
「うむ。穢に心酔するあまりに尼の邪魔をしてた連中だ」
「ということは、村長も魔王派になるのか」
俺がそう発言したけど、元々は、村長って田舎村の村おこしで、ここに人を集めようとしてたんじゃないのかな。魔王派の村長が村長の地位について村の発展に奔走するのにはなにか違和感があるけどなぁ。
「村おこしというのを全面的に押し上げて、田舎ファンタジアの仕組みを起動する。そして……すずくんを担ぎ上げるためにやってたってことなんじゃ」
だって、チュートリアルすら魔王直々だったし。とあかねんが推理した。
確かに村云々よりも穢を崇拝し、それの復活のためなら手段を選ばないとなったら、村長は言うことなしの地位である。ただ、村長の地位で魔王の意に沿ってたとしたら、とっくに村長を降ろされているよね。
以前に聞いた、脅されてある程度は魔王の意向に従ったけど、それから俺たちに頼み込んだ村長は、本心からだったのかな。
そして俺は俺で、封印した尼さんの血筋だっていうことを最近になってから知ったわけだし、同じ血を引く父さんは単身赴任中だし。あれかな、俺が地域協力隊員に選ばれたことも関係してくるのだろうか。
「魔王が現れるところには、勇者も現れる。これは全ての世の決まりですもん」
あかねんがどやっとしながら言った。いやそれやっぱり小説の受け売りでしょ。タローもあかねんの意見にうんうんと同意するんじゃない。
「なー、こうなっちまった以上、三代目の父ちゃんに話をしなきゃいけないんじゃないか?」
「ふむ、村長に話を聞くべきだな。まずは」
ということで俺たち5人と大和田さんで、村長のところへ向かうことにした。
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