第72話 シアンの穴
俺の剣を入手した折ノ下鍾乳洞の最奥。
そこにシアンの龍穴があった。つまりシアンが土地神だったときに寝ていた場所である。現在は、シアンが龍化したときより二回り小さい、シアンと同じような龍が静かに眠っていた。たまに寝息が聞こえるぐらいで静かなんだろうけど、それでもかなりの大きさと迫力がある。
「ほら、かわいい妹たんだよ? タロー」
「い、いやその……ごめんよあかねん」
ぶんむくれているあかねんは、タローを龍のほうへぐいぐい押している。結構、嫉妬深いなあかねん。
そんなあかねんとタローを放置し、シアンはスタスタとその龍の横を歩いていき、俺の剣が置いてあった一番奥から少し手前の岩のくぼみで止まる。
「ここから入る」
シアンが以前に寝ていた場所の中でも、寝息がよくかかっていた場所。
そこが龍穴を開く場所だという。
「なにもねぇぞ」
「大丈夫」
ちょっとした岩のくぼみに俺たちを立たせるシアン。そして、人の言葉じゃない、なにか不思議な言葉を言った。それは、神社で参拝するようなときの言葉に少し似ていた。そのシアンの言葉に合わせて、ふわっと金色の光が岩のくぼみ全体を光らせる。
……気づいたら、うすいクリーム色にも見える全体的に金色に光った空間に移動していた。
「ここが龍脈。ぱわーすぽっととかいうもの」
俺たちに解りやすく説明しようとするシアン。ここは現実世界にある別の場所ではなく、龍の夢の中だと、一生懸命シアンは説明していた。前にシアンが寝ていた場所からほかの龍の寝ている場所までと、全ての龍穴自体が見えない流れでつながっており、それがまとまってこんな空間になっているらしい。
「ここで特訓をするってこと?」
俺の言葉にこくんとうなずくシアン。姉様を呼ぶといって、シアンが念じると、何もない空間から、シアンと同じ色の髪の毛が地面につくほどの長さの、流麗な女性が現れた。
「どうも、はじめまして。シアンの姉です。名前は……そうですね、ドラジェ、とでもお呼びくださいませ」
シアンと同じようなロングコートの女性、でも年齢は20代後半ほどに思えるドラジェさんは、丁寧に挨拶し説明を始める。シアンはそんなドラジェさんにぴたっと寄り添っている。ちょっと俺、さびしい。
「シアンは口下手なので説明がうまくないので申し訳ありません。ここではわたしたち龍の一族が集まり、情報を共有したりする場所なのです。ここで、貴方がたのお手伝いをさせていただきます」
そういうと、ドラジェさんは俺を見てニコッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます