魔王編
第57話 父さんの帰宅
勇者になって初めての休日である。
朝寝坊を思う存分堪能し、お昼頃までシアンと惰眠を貪った。
そのあとは散歩に行ったり、畑仕事の手伝いをしたりと、平穏な1日だった。
「かえったぞー」
「おう、おかえり」
夕方、ガラガラと玄関の戸を開けて、父さんが帰ってきた。
俺が実家に帰ってきた、という理由もあって、今日から一週間の休みを取った父さんはその間ここにいるらしい。
「いやー、飛行機と電車乗り継いでくるのは、この歳になってくるときついわ」
定年間際の父さんは、少しぽやんとした人物である。俺がぽやんとしている人物だとわかるってことは、俺自体は父さん似ではない……はずだ。ぜったい。
「カレーじゃないのか」
シアンが母さんに、今日の夕食献立を聞きに行っている。
「今日は和食だよ」と母さんに言われ、シアンはとても残念そうにしていた。
そんなシアンは、最初に食べたカレーの味が忘れられないほど美味しかったらしく、毎日カレー食べたいと言っている。
だけどここ数日はシアンの望みが叶わないので、夕食なに? と聞くんじゃなくて、カレーじゃないのか? みたいな言い方になってるんだろうな。
ずっと母さんにくっつきまわっていたシアンだが、母さんの作る和食から出汁の良い香りが漂ってきたので、
「カレーじゃなくてもいいか」
とひとり納得して、俺の隣に座る。
「おお、こちらはどなたさん?」
「ええと……交換留学生?」
「そうか、可愛らしい子がきたんだのー」
父さんもあっさり納得してた。ちょろいなうちの両親。
夕食も終え、風呂に入って一段落したころ、父さんは1人で居間でビールを飲んでいた。
母さんとシアンは居ないから、早めに布団に入ったようだ。
「あのさ父さん、聞きたいことがあるんだけど」
魔王に関わる俺の先祖のこと。それを、父さんに聞くことにした。
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