第55話 サイクロプス社崩壊

「……ねぇ、なんであんなことをしたの?」


 放心状態から立ち直ったあかねんは、俺が縄でぐるぐる巻きにした少年に問いかける。


「さっきも言ったけどさァ、俺犯罪者なんだよねェ。でもまだ14歳だからァ、捕まらないしィ、勇者勇者ってこの村の連中ウザいからさァ、色々ちょっかい出してみたかっただけェ」

「そうか……魔王とは直接つながりがあるのか?」


 少年の態度に言葉を失ったあかねんの代わりに、俺が少年を尋問する。


「……あいつかァ。さあねェ。俺はお面をつけた部下をォ、貰っただけだぜェ」

「お前が、ここのボスなのか? サイクロプス社の」

「そーだよォ、未成年が会社を興して、デカイ図体の大人たちを意のままに操るゥ。世の中ってチョロいよねェ、実際ィ」


 ヘラヘラとして少年は語る。全然反省の色はない様子だ。



 パンッ!!!



 そのとき、少年の頬をあかねんが思いっきり叩いた。痛みと衝撃と、あかねんの涙で、少年は呆然とする。


「その、ふざけた態度はやめなさい! 悪いことしたら、謝るのが当然でしょ!」

「ご、ごめんなさい……」


 あかねんの剣幕で、少年は涙目になり謝った。

 それから、素直になった少年は俺たちに魔王とのかかわりを話してくれた。


「中学校の部活、あ、部はフィールドワーク部っていう少し変わった部活で、今回は田舎村の古い祠についての調査ってことで、色々な人に聞きまわっていたんだ。そのときに多分、魔王と思われる人に会った……と思う」


 老人から金を奪い取るという詐欺行為については、少年一人で部活と称して老人宅を周りお小遣いをもらうという感じの、犯罪にもならない行為が発端だった。

 そのお小遣いがある程度貯まったころ、魔王と出会う。


 魔王に唆され、魔王がどこからか集めてきたガラの悪い連中26人を使い、会社を興すよう言われたようだ。

 そのときに魔王から細い金属の立方体のついたピアスを渡され、それを必ず耳につけるように、でないと26人はお前の言うことは聞かないから気をつけろ、と申し付けられたそう。


 元々その26人は少年と出会う前からお面をかぶっていて、ピアスをつけた少年の命令だけに絶対服従だったそうな。


「お面のあの人たち怖そうだったけど、仲良くなってくると、ちょっと楽しかった」


 ガラの悪い連中ではあるけど、魔王に巻き込まれてなかったなら、きっと犯罪を起こすようなサイクロプスさんたちじゃないんだろうな。


 具体的な魔王の特徴を少年に聞いたら、どこにでもいるうだつの上がらない普通のおっさんだったそう。とにかく目立った特徴がないっていうことだった。


「ま、マッポがきたら、素直にそれ話せよ、ガキ」

「わ、わかりました。本当、ごめんなさい。そして、これ、ピアスです」


 ピアスを外し、それを俺に手渡す。

 細い立方体の部分が淡い青色に光っていて、幻想的である。


「それ嫌い。早くしまえ」


 シアンが俺のバッグにピアスを突っ込んだ。


 ……あ、このバッグは俺のお手製です。昨日夜なべして縫い物しておきました。

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