第29話 居酒屋☆一番星
役場からの帰宅準備中にスマホが鳴った。
ミカゲからの電話で、ちっと飲みいかねーか? との連絡だった。
即YESだ。
「おー、和哉、ここだー」
ここは『一番星』田舎村にある大衆居酒屋である。
「生ビールと鳥から」と店員さんへお願いし、ミカゲの向かいに座る。
あかねんとタローも一応誘ったのだが、あかねんは
「新刊の発売日なんです! 急いで昭和堂に寄って帰ります!」
と言い、タローは
「ミカエルたん☆キュンキュンの放映が7時からありますので、ぼ、僕も録画予約がきちんと出来ているか確認しないといけないので、ご、ごめんなさい」
と2人ともそそくさと帰ってしまった。
「お、来たか。勇者の和哉が知らないことを教えようと思ってな。多分マズい状況になってるんだろーし」
吸うか? とマルボロを渡されるけど、断っておいた。
吸えないからね!
そしてミカゲの言葉を、店員さんが運んできた生ビールをクイッとやりながら待つ。
「今年始まったころ、1月15日ぐらいだったか、村民新年会で村長が大々的に村おこしをする、と宣言したのが始まりだと思うぜ。だから村長がなにかの関与をしている可能性はある」
俺はそのころまだ都会にいたし、あかねんは隣の市の高校に通っているころで、タローはまあ引きこもってたんだろうし、当時の村の状況はミカゲ以外の仲間は知っていない状況だ。
「でも、村長の息のかかった人物だけが、田舎ファンタジアに関与してるわけじゃないよね? それに、村民だけがお芝居してるわけじゃないし、たぶん近くの市町村から仕事に来てる人たちも巻き込まれている、と思うんだけど……」
俺はミカゲの意見の他に、不可解な点を指摘する。
「だな、境界がいまいちわからねーけど、そこを突き詰めるのは犯人がわかるときだな」
鳥からと他、追加注文した物でーっす! と、法被を着たおねえちゃんが、手際よくテーブルに注文の品を並べていく。
ここは安くてうまく、定評のある居酒屋である。
それらをつまみながらミカゲが手招きをし、店員に聞こえないように俺に耳打ちする。
「で、その犯人だけどよ、村長に近い人物の可能性があるぜ。役場職員をちっと注意深く見ておいたほうがいい」
発端は村おこしだからなぁ。確かにその線が強い。
俺はミカゲへ頷く。
そして気になっていたことをミカゲに話す。
「封印の石のときの魔王の言葉、鈴成の子孫って気になるんだよね。俺んちのご先祖って、普通の農家だったと思う」
「そこだよなーー。和哉にわからなかったら、俺たちもお手上げだ。まあうちの親にも聞いてみるけどよ、和哉もかーちゃんに聞いてみろよ。なにか秘密が出てくるかも知れねーぜ」
「うん、わかった。聞いてみるわ」
そのあとは、耳鳴りのすごさはハンパねぇとか、仕事でいずれ独立したいとかの話をミカゲはしてくれた。
「独立したら、恵奈ちゃん寂しくなるよ。むしろミカゲが、恵奈ちゃんちの跡継ぎになればいいじゃん。恵奈ちゃんと結婚してさ」
「おい、和哉! そんな世迷い言は、や、やめろ――!」
とミカゲは口で否定するも、顔は真っ赤であった。
うん、これはいじりがいがあるね!
明日はミカゲも役場にくるし、俺たちはちょっと注意深く役場内を伺うことにしよう、と作戦を立てた。
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