四天王編

第30話 3代目ミス田舎村

 普段は挨拶したあと、みよちゃんに外回りじゃー! と言われるんだが、今日は外に出てもなにも手がかりがないため、俺たちのパーティ4人とみよちゃんでミーティングを行うことにした。


 ついでに情報室のアプリ担当職員も、アプリ改良のためにミーティングに出席するらしい。



「ようこそ! 田舎村にある田舎城へ!」


 あ、情報室の担当職員さんってようこそ職員だったのね。


 話しかけてもようこそしか言わないけど、俺たちが話す言葉を聞いて、なにやらメモを取る様子でミーティングに参加している。


 せっかくなので、アプリに関しての使い勝手なども、俺たちが自由に話すことにした。

 話す反応はようこそだけど。


「まずはアプリの使い勝手から話しましょうか。ようこそさん……ええと名前はなんでしょうか?」


 俺も大概失礼だと思うけど、ようこそさんの名前を知らないのでみよちゃんに聞くことにした。


「いいわ、答えましょう。彼は大和田啓介くん。中途採用だけど、以前は大手のアプリ開発担当だったの。その腕を買われて、今は情報室職員になっているわ。まあ他にそれだけの腕のある職員はいないから、基本的に田舎ファンタジアのアプリについては大和田くんの独断で開発されているわ」


 なるほど。


 大和田さんは、絵心がなさそうですもんね。

 アプリの棒人間の惨状を、俺は思い出していた。


 ちなみにみよちゃんについても質問すると、なんと3代目ミス田舎村だったらしい。

 ……正直どうでもいい情報ではあるが、タローはそれを聞いて興奮していた。


「アプリですが時間外でエラーが表示できるところを、更新されなくてもいいから、画面が出るようにできませんか? 夜に使いたい魔法とか見たいときに見れないのが困るんです」


 あかねんがきっちりと意見を言う。


 そんなあかねんは使える呪文が10を超えているので、いまのところは別のメモ帳に書き写して使っているらしい。


 その意見に大和田さんは大きくバッテンとゼスチャーした。

 アプリの基本的な部分を替えないといけないのと、サーバーを動かすのは勤務時間外は難しいらしいとのこと。


 大和田さんの回答は手元にあったノートに大和田さんが書き、それを俺たちに見せる方法を取っている。

 つまりは一方通行の筆談だ。


 口を開いたらようこそしか言えないし、それはどうしようもないよな。


「俺たちが覚える魔法や細かい数値ってどこから情報を仕入れてるんですか?」


 俺は気になったことを聞く。


 だって、基本的な部分を大和田さんが平気で更新してるし、ゲームで言ったらゲームマスターと同等だよ?


 つまり……魔王じゃないの?



 俺たちが現在、魔王の手のひらで転がされているようなものであり、アプリも魔王の息がかかっていてそれに俺たちは一喜一憂させられている。

 ステータスとか一番基本中の基本だしそれを元に行動してるわけだから、それが一番よく分かる基幹部分の更新を大和田さんがやってるからな。


『魔王から、基本データがメールで送られてきた。それに則って更新をしているだけだよ。魔王メールは村長のアドレスに偽装しているけど、村長はそのデータを送っていないと裏付けがとれている。なぜなら僕は情報室に在籍しているからね(キラーン)』


 と、大和田さんは筆談で回答してくれた。

 (キラーン)の部分までしっかりと。


 ……やっぱりここから魔王のしっぽをつかむのは難しいか。



 でも、この冒険は犯人探しをして見つかったら、俺たちが脅しをしたり土下座をしたりして終了っていうわけじゃないんだろう。

 悔しいが魔王の筋書き通りのシナリオをなぞっていかないと、クリアできない。


 俺のうろ覚えのロールプレイングゲームの知識からすると、そうだ。



 いささか面倒ではあるが俺は今の現状を仕事と割り切り、だれが主犯かは考察するものの、シナリオをなぞっていくのはしょうがないことだと諦めることにした。



 でもさ、たまに犯人考察しないと、俺の精神がぶち壊れちゃうっっ!! とちょっとエロ目のおねえさん風に心の中で愚痴っておいた。

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