第24話 いもざえもん

 仲間が、信頼した顔で俺を見る。


 そう、モンスターの特殊能力がこの昏睡状態を引き起こしているのなら、いつも通りちょっとしたダメージを与え、モンスターのお面を剥がすだけだ。


 あかねん、タロー、ミカゲ、そして恵奈ちゃんが俺の顔を見てこくんと頷いた。


 ……ってえええええ、恵奈ちゃん起きてるし!!

 昏睡状態治ってるしいいいい!!!


「ふふふ、勇者、待ってました。今こそわたしの力を開放し、勇者とその仲間を葬り去りましょう………」


 恵奈ちゃんはみるみるうちに皮膚と髪を青く変え、下半身が魚のように変わっていく。

 ほほう、最新のコスプレは進化してるんだなぁ。

 まるで本当に恵奈ちゃんが変身しているように見えるね!


 皆が戦闘モードになったので、俺はたけのヤリを構えた。



「くそっ!」


 ミカゲが玉のような汗を吹き出して、ギリギリと音を立ててつるはしを掴む恵奈ちゃんを抑え込む。


 そんな恵奈ちゃんの迫真の演技力に、俺は息を呑む。


「ワードトラクションっ!」

「キャリーパミュパミュぅ――」


 あかねんの補助魔法で、ついに来た!

 タローの召喚呪文がとうとう成功したのだ!


 まばゆい光が部屋を照らす。


 そしてその光の中から、楕円のシルエットの召喚獣が出できた。



「呼んでくれてありがとイモーーーー!!」


 おしりの部分に少しドロ汚れをつけた田舎村のマスコットキャラ、いもざえもんが登場した。


 ぱっと見は○なっしーとか○びーるくんのようなキャラクターだった。

 そして声も丸かぶりである。


 さらに言わせてもらえば全然パミュパミュ関係ないし。

 ただ言いにくいワード設定してるだけだろ、それ。


 いもざえもんは登場するだけでエネルギーを消費したのか、そのあとは突っ立ったままでぜいぜいと息をするだけであった。



 だが、いもざえもんの登場シーンのまばゆい光で恵奈ちゃんは動きを止めた。

 そうだね、セイレーンって夜の怪物だしね。


「すずくん! 今だよっ」

「いてまえーー、和哉っ!」

「よし、わかったっ! 面胴小手ぇぇぇっ!」


 俺の三連撃が、セイレーンとなった恵奈ちゃんにヒットする!

 そして頭に載っていたセイレーンのお面がはらりと落ちた。



 とうとう、俺たちは恵奈ちゃんを救うことに成功したのだった。

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