第20話 諦めたらそこで試合終了

「さて、昨日の残業分の成果を確認しようか」


 現在、俺は支給された作業着を着ている。さっきまで着ていたリクルートスーツはロッカーにしまいこんだ。


 だって、あかねんにまた汚されたくないんだもん。


 そんなあかねんとタローは作業着を着ずに、昨日の装備のままである。

 まあ、個人の自由だし。

 恥ずかしい云々は、もうこの2人には言っても無駄だということは、昨日のうちに勉強してある。



 そして、役場の玄関前の隅っこで俺たちはステータスを確認する。

 あかねんとタローが揃って、


「ステータス画面オープンっ♪」


 ええい、もう突っ込むまい。俺は黙ってアプリを開く。


 すずくん(俺)

 レベル28

 HP:588/588

 MP:253/253

 特技:ツッコミ、螺旋切り、面胴小手

 魔法:クイック、アイスブラスト、アイスシールド


 お、結構上がってる。

 田舎唯一のコンビニ、さすがに夕方から夜にかけて人がいっぱい集まっていたらしく、かなり効率よくモンスターさんたちを退治していたらしい。


 あと2レベルぐらいなら、昼間のコンビニに張っていればすぐに上がるだろう。



「魔法いっぱい覚えてますけど、ヒール以外使えないみたいですね」


 あかねんが先程からなにかブツブツ唱えていたのは、魔法の確認だったのか。

 でもここは役場の玄関だし、もし万が一魔法の効果が現れるようなら、危ないと思うよ? うん。


「魔法が出ないってのは、封印の石で封じられているか、なにかの条件が揃わないといけない、もしくは城の中は魔法が使えない設定になっているとか?」

「そうですよね、せっかく覚えたし、わたしもモンスター退治の役に立ちたいし……」


 そうか、昨日は相当暇だったろうなぁ。

 今日はあかねんにも活躍してもらうよう、なにか考えておこう。

 あまりにもあかねんががっかりしているのはやっぱり、かわいそうである。


「ぼ、僕、どうも呪文を唱えるのは、無理みたいです」


 タローは何度か簡単なキャリーパミュパミュを唱えてみるも、撃沈。

 その次に覚えた呪文がもう、コノクギハヒキヌキニクイクギダだったらしい。


 どんな暗号か! と最初は思ったけど、早口言葉なのねこれ。


「タロー、諦めたらそこで試合終了だよ!」

「で、でも昨日2時間しか寝ないで、れ、練習してたんですよ」


 そうか。

 無事唱えられたとしても、ゆるキャラがうろちょろしてたら面倒だし、稼働時間は30分だし、結構微妙系な召喚呪文と新しい呪文は言いにくい上に、効果がわからないから大変だよね。


 でも、タローはバハムートとかそういうかっこいい系の召喚獣がくると思っているので、ガンバレ! と応援しておくだけにしておいた。



 それぞれのステータスを確認後、俺たちはやはりコンビニの前で、モンスターさんを待ち構えることにした。

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