EP 3



「ただいまあ!」


帰ってくると、家には誰もいない。

小学一年生の秋。


この頃わたしは父親方の祖母の家の

近くに引っ越しをしていた。弟もできた。

名前は こうき。祖母がつけたものだ。

わたしは初めての兄弟に嬉しくて

すごく可愛がった。


ママは専業主婦だ。


あれ、なんで家に誰もいないんだろう。


買い物でも行ったのかな なんて思いながら

わたしはゲームをつけた。



プルルルルップルルルルッ


家の電話が鳴った、


「はあい?どちら様ですか?」


近くの祖母からだった。今から家に

いらっしゃいと。


んーゲームしてたのになあ、、

急いで支度して向かった。


家に着くなり何故か祖母が

泣いていた。


?????なんだ?


「あっごめんね、夜ご飯にするね」


え?ママが買い物にいってるから

夜ご飯は、、、


「?ママが買い物いってるから

夜ご飯いらないよー?」


「あっ、えーと、、、ママは

遅くなるかもしれないって!だから

食べていきなさい」


んー、、どこにいったんだろうなあ

と思いながら、祖母が作ったご飯を食べる。


そこへ父が帰ってきた。


「美蘭、帰ろっか」


父が迎えにきてくれたので

そのまま一緒に帰った。


家にはまだ ママも弟もいない。


「今日はもう寝なさい」


「えっママは?」


「、、、っ。」


ん?ん?

まあいいや、明日も学校だ。寝よう。


そう思って、なにか言いかけた父を無視して

わたしは目を閉じた。



翌日

「美蘭、おはよう!」

いつものようにママがご飯を作ってくれた。


昨日はどこにいってたんだろう。

そう聞こうとしたけど、何故か

聞いてはいけない気がして、いつも通りに

学校にいった。


それからは、いつも通りだった。


そして父がいきなりわたしを

ディズニーにいこう!と誘ってきた。


家族旅行だ!と嬉しかった。


けれどママは行かないらしい。

野球の応援も行くことになり、

ママは興味ないって。


ディズニーだけでもくればいいのに、、


ちょっと寂しくなりながら支度をした。


翌日、新幹線乗り場まで送ってもらい

父と2人でディズニーへ向かった。


野球の応援は、わたしにはよくわからなかったが

風船を投げたのが楽しかった。


そして、帰りにママに電話をかけた。

この頃わたしは携帯を持っていた。

父がなにかのためにって買ってくれたのだ。

その携帯をママに預けていたので、

今から帰ると伝えるため、かけた。


だが一向に出ない。試しに家にもかけたが

出なかった。


寝てるのかなあ、、


とも思ったが違かった。

家に着くと、誰もいなかったのだ。



弟は祖母の家に預けられていた。


しかし、ママの姿はどこにもない。


不意に泣き出してしまった。

「ママは?ママは?」


昔から泣くと嘔吐してしまう癖がある。


電話も出ない、どこにいるかもわからない。

そして、一件の電話がなった。


父が急いで出ると、なにやらもめていた。

そして私に受話器を渡してきた。


「もし、、もし、、、?」


「美蘭ごめんね、ごめんね、すぐに

帰るからね、ごめんね、、、、」


ママが泣いていた。


ちなみにこの電話は、正確には

警察からだったらしい。

どうやら、捜索願いを出していたらしく、

東京で見つかったとのこと。


父に受話器を渡すと、またもめている。


そして、とうとう、わたしは聞かされてしまった。


「ママは、家出して、死のうとしたんだよ。

美蘭を置いて、こうきも置いて。

何度も何度も家出して、その度に

美蘭にバレないように、探してきたけれど、

さすがにもうわかっちゃうよね、、。」


聞きたくなかった。幼いながらにして、

わたしにはわかっていたんだ。


幼稚園の頃も友達の家にいろと言われたり、

母方の祖母が家に来ているのに、ママは

祖母の家にいるんだって、と聞かされたり。



翌日、ママは帰って来たが、

父方の祖母と父ともめていた。


わたしはおとなしくゲームをすることにした。


その晩、父とコンビニへ行った。

当時流行ってた女性アイドルのメモ帳が

欲しくてたまらなくてねだったが

買ってもらえなかった。


深夜に不安で目を覚ました。


すると、母と父がトランプをしていた。


わあ!仲直りしたんだ!って

とっても嬉しかった。そしてそのまま

目を閉じた。


翌朝、父はすでに仕事に行っていた、

そして昨晩ねだったメモ帳が置いてあった。


“これからはしばらく会社に泊まるので

美蘭は早く寝るんだよ”


そう残してあった。




これが 家族として過ごした

最後だった。


あれから父は帰ってくることはなかった。


そして 父から一通の手紙が来た。


“父親らしいことしてあげられなくてごめん

がんばったんだけど、もう無理みたい。

ママとはもう暮らせないんだ、美蘭に

寂しい想いさせてごめんな。

いつまでも 美蘭のお父さんだからね”


わたしは声を殺して泣いた。


わかってた、もう帰ってこないなんて。

本当は、祖母の家に帰ってたんだよね。


だけどわたしにはどうすることもできない。

全てを受け入れて、過ごすしかない。


この手紙からすぐに引越しが決まった。

こうきとママとわたしとそして母方の祖母と

暮らすことになったのだ。



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