第2話 序章2
僕たちは、今、生きるために走っている。まるで、風になったように。だが、状況はそんな詩的な物ではない。古代に撲滅されたと思われた、最強の兵器、毀攻戦鬼が、今僕たちの目の前に現れ、僕たちの大事な友達である、カリナを目の前で喰われてしまったのである。
「ハカセ!何が何でもこの森から抜け出るぞ!そして、村のみんなにこのことを伝えるんだ!」
僕は隣で、今にも倒れそうなハカセに声をかけた。だが、橫を向いた瞬間、絶望的な光景が目の前に広がった。なんと、森を覆い尽くすかのように、毀攻戦鬼達が地響きを鳴らしながら、村の方角へ向かっているのである・・・
僕は、もう逃げられないのかと、絶望したその瞬間だった。ハカセから驚きの一言が飛んできたのは・・・
「シュウ、君だけでも逃げてよ・・・」
ハカセは恐怖と疲れに覆われた声を出した。
「何言ってるんだ!二人で逃げるんだろ!カリナの犠牲を無駄にするつもりか!」
僕は喉をからしながら吠えた。だが、ハカセはそんな僕の様子など気にも留めず、言葉を続けた。
「君の方が足も速い、体力もある、何より、この森を熟知している・・・論理的に考えれば、このまま二人とも死んでしまうより、君が生き残る方がずっといい・・・」
僕は、続けて吠えた
「論理とか関係無えんだよ!二人で生き残るんだろうが!」
だが、その言葉を跳ね返すようにハカセも吠えた
「君は何で分からないんだ!君だけでも生き残って欲しい僕の望みが・・・」
そう言うと、ハカセは膝から崩れ落ちた。
「最後くらい、言うこと聞いてよ・・・」
そう言うと、ハカセは、毀攻戦鬼に向き合った。
「今まで、ありがとね・・・」
そう言うと、足下に転がっていた石で、音を出した。すると、その方向に釣られるように、毀攻戦鬼も動いていった。
「じゃあね・・・」
そういうと、家へと急ぐ、子供のように、走っていった・・・
これが僕、シュウの物語の序章。僕にとってはこれから本編なんだけど、その本編さえ、この国にとっては、序章に過ぎなかったのである。そして、最後に一言、
この物語は白夜王国に生まれ、そして、真実を知り、宵闇に行く僕、上野秋の物語である。
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