OCERO(オセロ)

しょーや

第1話 プロローグ

これは、君たちの住んでいる時代の遠い遠い先の話・・・。人類は「億年戦争」と呼ばれる、果てしない戦争を始めた。そこにはもちろん君たちの住んでいる国も参加している。いわば、世界戦争である。様々な兵器が投入された。核の数百万倍の威力を持つ、「ハイパープロトン砲」。使用方法が簡略で、威力の高い「電撃銃(パラライザー)」だが、その中でも目を引いたのが、「毀攻戦鬼」である。見た目は、人型で、頭には弱点である一つ目を保護するため、君たちの時代のVRゴーグルのような形の巨大なヘルメットを鼻までかぶっている。身体は性能によって、色分けされており、身体の様々な部分から管が通っている。見た目は歪だが、侮ってはいけない。すべての性能において従来の兵器を上回っているのである。その後数百年は、その兵器を作った、「宵闇王国」の独壇場であった。だが、もちろん、その時代にも終わりが来る物で、「白夜王国」と呼ばれる王国が毀攻戦鬼の弱点を見つけ出し、それに対抗する兵器を生み出したのである。それが、「生命の樹(いのちのき)」。見た目は、枯れてしまった、大木その物なのだが、それに毀攻戦鬼が近づくと、それを吸収してしまうのである。それを白夜は、自国の周りに置いた。そうすれば、必然的に毀攻戦鬼は近づけず、そのまま勝ててしまうのである。そうして、白夜はこの世界の80%を手に入れることに成功した。

そして、やっと僕の物語に移れるわけだ。僕の名はシュウ。このとき、11歳。白夜王国の住人で、宵闇の国境沿いのコゴリオと言う村に住んでいる。友達もたくさん居るし、勉強も普通に出来る君たちの近くにいる子と何も変わらない人である。

そんな僕はある日、僕の友達を連れて、村の禁足地である、毀攻の森と呼ばれる、森に足を踏み入れた。噂によれば、ここには、今は失われた、毀攻戦鬼が闊歩しているというのだ。それを本当か確かめるため、村の掟を破り、ここに足を踏み入れたのである。

「ねえ、本当に大丈夫なの?」

右橫にいた、ハカセが声をかけた。丸渕眼鏡をかけて、本をいつも持っている。本当に博士のような奴である。

「大丈夫に来まってんだろ!」

僕は、力強く答えた。だが、左横にいたカリナに、

「大丈夫じゃないから、禁足地なんでしょ」

と、一蹴された。カリナは、綺麗な見た目で、垂らした長い髪が目を引く。そして、そう言ったカリナでさえ、好奇心には勝てず、結局、奥まで進んでしまった。そして、最深部まで来た。そこには、冷たい風と、無が広がるだけで、何もなかった。

「ほらな!やっぱ何もねえじゃねえか!」

僕はそのまま、背を向け来た道を引き返そうとした。そのときだった。

「ね、ねえ、シュウ・・・」

ハカセが恐怖に震えた声を上げた。

「なんだよ?」

僕が振り向くと、そこには本でしか見たことの無かった、あの特徴的な姿が映っていた。肌は恐ろしく白く、口からは生き物のように、息を吐いている。そう、毀攻戦鬼である。

「う、うわあ!!!!!!」

僕は、一目散に逃げ出した。すぐに橫をむくと、右には博士が居るが、左には、カリナが居ないのである!

「あれ?カリナは?!」

二人で後を振り向くと、そこには、腰を抜かしているカリナがいた。

「カリナ!」

僕は吠えたが、その声は届かず、恐怖をにじませた顔で、毀攻戦鬼の腹の中に入っていった。

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