第11話現実(リアル)を侵食する虚構(フィグメント)④

空を覆っていた厚い雲は去り、顔を出した星々が明さやかな光を放つーーその真下、光流達四人と真紅のドレスの少女は対峙していた。


閑しずやかな中にも一分の隙もない佇まいで、銀色に輝く刃を少女に向け、刀を構える夜叉丸。


片や蜘蛛丸はというと、未だ唇を尖らせぶすくれたままではあるもののーーしかし、やはり此方も全く油断のない様子で、短槍の穂先を少女に向け構えている。


「・・・・何故・・・何故、わたくしの邪魔をするの・・・?」


一方、四人と対峙している少女は、先程より、より強くなったーー最早、憎悪に近い程の憤怒の炎をその瞳に宿し、四人に向けてその己の血に濡れた右手をすっと伸ばして来た。


瞬間ーーー


ぼんっという激しい燃焼音と共に、激しく燃え盛る蒼白い焔の塊が少女の掌の上に出現する。


「なんだ、あれーー」


光流がそう言い終わらない内に、恐ろしい程の神速で火球が光流に向けて放たれた。


「え!!はっ?!み、水!消火器!」


自分に向けて真っ直ぐ突っ込んでくる燃え盛る火球。


動転した光流は思わず消火用の水や消火器を探すがーー墓が一基しかない、野外の小さな墓所であるこの場所に都合よくそんな物等ある筈もなくーーー


「あぁ、くそっ!マジか!」


今度こそ本当に終わったーー。


光流が再度そう諦めかけたその時


ーキィー・・・ンー


まるで、何か金属と金属を軽くぶつけた様なーー高く、しかし耳に心地好い、聞いていて体の内側から浄められる様な『音』が辺りに鳴り響いた。


そして、その音が響き渡るのと同時に


「消え、た・・・・・?」


光流に迫っていた業火の火球は跡形もなく消え去りーー辺りには再び静寂が訪れていた。


(・・・一体、何が起きたんだ・・・?今の音は・・・・・?)


光流が音のした方を振り返ると、其処にはーーY字形をした銀色の金属と、宵闇の中でも淡く光る鉱石をその手に持ち、相変わらず底の見えない微笑みを浮かべた葉麗が立っていた。

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