第12話現実(リアル)を侵食する虚構(フィグメント)⑤

「ふふ、これ・・・とても綺麗でしょう?」


狐華晶石こかしょうせきっていうんですよーーー。


そう言って、光流に微笑みを向けながら、手の中の鉱石を小さく振って見せる葉麗。


「いや、今そんな悠長なこと言ってる場合かよ?!」


今置かれている状況に余りにそぐわない彼女の言葉に思わず突っ込みを入れる光流。


しかしーー彼女の手の中で揺れるそれは、水晶の様に透き通り、更によく見ると中にゆらゆらと揺らめきながらも燃える薄赤い焔が内包されている様で・・・確かに、光流が今までこの世界で見たどの鉱物とも違い、美しかった。


その鉱石を、真っ直ぐに向かってきた蒼白く燃える炎の球が掠める。


「・・・そうですわよ。悠長にお話をしている時間などなくってよ・・・?」


其処にはあの金髪の少女がーー両手や、それに背後や頭上などに無数の火球を浮かび上がらせ、此方を睨み付けていた。


「言ったでしょう・・・?わたくしの邪魔はさせない、と・・・」


そう言うが早いか、少女は素早く両の腕を動かし、光流達に向けて沢山の火球を一気にぶつけてくる。


「うぉっ?!」


必死に体を捻り、幾つかの火球を辛くも躱す光流。


火球は背後の壁に打ち当たり、どぉんっ!という激しい音を立て、大穴を空けながら崩壊させていく。


大破した壁に腰を抜かしそうになりながらも、しかし、躱せたことへの安心感から、思わず安堵の息をつく光流。


しかしーーー


「んなっ?!ありかよ、こんなの!!」


壁に空いた大穴の直ぐ隣から、どんっ!という衝撃音と共に、光流が躱した筈の火球がまるでブーメランの様にーー勢いや大きさもそのままに、光流の方へ戻ってきたではないか。


「わたくしは、貴方を殺さなくてはいけないのよ・・・・!」


怒りと、強い決意の様なものを秘めた眼差しで、光流達に向かってそう言い放つ少女。


彼女は、火球を細長い帯状の形に変化させると、手元にある部分を己の手首に巻き付け、反対側を鞭の様にしならせ光流達の方に向けて打ち放ってきた。

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