小気味よいテンポが織りなす旋律

 会話文と地の文のとのテンポがとても小気味よくて、読みやすい話でした。
 文章の織りなし方、単語の選び方、文節と文節の使い方、主語述語と、基準よりも高い文章力で書かれており、新聞で連載されている小説といわれても謙遜無いレベルの実力と受け取りました。やはり、しかしなどの接続詞もしっかりとしており文章と文章のつながりがスムーズに読めるのもとても素晴らしい。
 見やすさも、WEB小説としての利点である、段落と段落の間に改行をいれられることが徹底されており、文字と文字との間隔が窮屈になっておらずとても読みやすかったです。
 文章の編成のしかたも、何かあったら「」の会話文が先行し、その後に地の文が内容を説明するという、会話で興味を引いて想像させ、地の文で会話の内容の理由を答え合わせするという仕組みが最初から最後まで徹底して守ってあり、大変わかりやすい形になっておりました。
 あと、語尾の選び方が大変よく、連続して同じ言葉で文章を止めているところが見当たらないのは、語彙力の高さを伺わせます。

 話の内容としては山あり谷ありはしっかりとありますが、大きな沈み込みや盛り上がりには欠けます。
 しかし、この話はそういうコンセプトの話なのです。
 死と、か大きな感動とか、驚きの結果が! とかを求める話では無く、
春になれば道ばたに開く花に心をほころばせるような、心にゆとりを持たせ穏やかにする暖かな話。それがこのカルム食堂物語という小説でした。
 日常。小説としては話の突起がとてもつけづらく描くのが難しい題材の一つですが、コレがしっかりと問題なく何話も続いてかけるのが作者の発想力の高さと、普段からの観察の高さを表せているでしょう。
 私的な想像ですが、作者のかたはツッコミが上手かもしれません。
 あと、人物の感情表現も豊富に描写されており、しっかりとキャラクターに血肉が流れており人物像の彫り込みが深くなっているのが素晴らしかったです。

このレビューの作品

カルム食堂物語