爆乳お姉さん系聖女
俺は高校二年の一般男子・
魔王討伐の為に召喚され、
そしてその功績を認められエリスと言う彼女(?)を手に入れた。
「さてっと、久し振りに愛剣の手入れするかなーっと。
おお、今日も俺の愛剣は良い輝きを放ってますな」
「ふふ、久し振りってハルヒトさん昨日も手入れしてたじゃないですか」
「ん? いやぁ何かこう、何と無く気分的に?」
そして俺は今、功績を認められて何不自由無い暮らしを送っている。
魔王討伐と言う実績で衣食住全てを保障され、多額の賞金を貰った。
更には俺を慕ってくれるエリスと一緒に城内で生活をしている。
彼女に名誉、何不自由無い生活、使い切れない程の金。
人が人生を賭けても手に入れる事が難しい物を俺は手に入れてしまった。
そう、俺は十代にして早くも人生勝ち組となったのだ。
好きな相手と楽しく会話をし、そんな中で愛剣を手入れし、時間を過ごす。
幸福と言う物は今この様な時間を指すのだろう。
椅子に身を預けながらそんな事をしみじみ思う。
「失礼するわぁ~ホモ勇者様ぁ」
「誰がホモだ」
しかしそんな時間をいきなりブチ壊される。
俺とエリスの
と、怒りを胸に振り返って俺は固まった。
「ってエリエットか……どうかしたのかよ」
開いたドアの前には一人の女性。
彼女は扇情的なラインを強調し、俺へ微笑むと当たり前に部屋に入って椅子へ腰掛ける。
掻き上げるピンクの髪は淫乱を象徴したような色合い。
そして左右非対称の髪形は、ロングかショートかわからない独特なヘアースタイルだ。
彼女はお土産のメロンをテーブルに置くと、自慢の柔らかメロン2個も並べて置く。
「木の魔法で作ったフルーツのおすわけ。
あとはついでに勇者様のマジックアイテムのメンテしようと思って」
「ありがとうございますエリエットさん。じゃあちょっと切ってきますね」
「あぁん待って。
折角だから冷たくして食べた方がおいしいと思うわぁ。
良かったらあとで味の感想聞かせて?」
彼女はエリエット。
この世にある攻撃魔法全てを扱える聖女だ。
そしてエリスに聖女としての基礎を教えた教育者の一人だとか。
彼女はお姉さん系キャラも相まって、聖女の中でもエロさがヤバイ人。
動きも見た目も口調も何もかもがエロくて、エロの権現と言っても過言では無い。
今日もシースルーな服装にスカートくっそ短いし、胸も一部分しか隠れてないし。
なので俺はよく、エロエットさんって呼んでます。
「マジックアイテムのメンテとか聖女なのに色々やってんだな。
ビッチな見た目に反して真面目っつーか……はいよ、これで良いのか?」
「やぁん、勇者様ったら相変わらず私に辛辣ねぇ」
「別に普通だと思うが」
「えーそうかしらかぁ?」
身内に似たようなのが居たもんでと付け加えると、妙に喜ばれる。
そんな嬉しそうにされても困るんだけどなぁ……ま、いっか。
「あら、
こっちの2本はあまり使っていないのかしら?」
「スキルがややこしいから一切使ってない」
テーブルの上に並べた3本の内、2本が新品の輝きを放つ事に彼女は首を傾げた。
この3本は魔王討伐に合わせて渡されたチート装備の一つ。
勇者に渡される武器だけあって、全部申し分ない性能とスキル持ち。
だが俺的にはアマハバが便利すぎて、他2本には手を出していなかった。
「え、ちょっと待って勇者様。
トツカノツルギしか使ってないなんて、まさか冗談でしょう?
ダウィンスレイヴとヴォーパルソードは、スキルを駆使すればレベル以上の力が―――」
「だって支援とかめんどいじゃん。
トツカなら、アマハバスキルぶっぱしたらすぐ終わるんだし。
他いらないだろ」
その一言にあんぐり口を開けられてしまう。
「そうは言ってもアマノハバキリは必要魔力が多くて、燃費が悪いので有名なのよ?
トツカノツルギその物は確かに強いわ。
でもスキルは底なしのせいで、レベルダウンを引き起こし易くて―――」
「俺、レベル552だからその辺は問題無いよ」
「……は?」
レベルを聞いたエリエットさんは凄い顔で固まる。
そして不審がられた結果、根掘り葉掘り聞かれる事に……。
□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □
「ごめんなさい、ちょっと理解が追い付かないわぁ。
ええ、わかるわ、まだそこはわかるわ
でもいくらエリスの力が
そして短期間で高レベルに至った方法も疑われ、細かく説明した。
しかし、その方法が変だったようで彼女は頭を抱えていた。
「しかもレベル500超えって何……。
報告じゃエリスより少し低い、280くらいだったハズよぉ?」
「最初はキチンと報告したのですが、審査で信じてもらえず低めの数字で報告したと言いますか……」
苦笑するエリスを前に、俺の守りの腕輪に表示されるレベルを彼女は見やる。
「通りで報告に変な内容が多いと思ったわぁ。
急にエリスのふとももが輝いて魔王を倒したとか、変だと思ってたのよ」
「実際はエリスのふともも舐めて自滅だぞ、魔王」
「ここ十年近く、誰も倒せなかった魔王の終わり方がそれってぇ……。
ごめんなさいエリス。
お茶のおかわりいただけるかしら……意味不明な内容ばかりで熱くなってきたわぁ」
彼女はそう言って、艶やかな双丘に浮いた汗の上を指でなぞり、小さく吐息を吐く。
アンタ、そんな恰好で更に熱いとかエロい動きすんなって。
目のやり場に困るからほんとソレ。
「とは言え、
異世界の住人は発想が突拍子もないなんてよく言うけれど、正にそれねぇ」
そんな評価をされ、俺は顔をそらす。
東の村に居る時、入浴中のエリスを覗こうと空気になる方法を考え、それを元に考案した戦法とは絶対言えない。
「でも正直、レベル分だけスキルが習得出来る勇者の剣で、スキル1つしか取らないのは危ないわよぉ?
どんなに強力でも、それが通用しない場合は無力になる訳だから」
エリエットさんさらっと痛いところ突いてきますね。
つい最近、痛感した事を指摘してくるとは侮れねぇ。
「俺もエリスみたいに魔法使えりゃなぁ。
そうすればこう、色々ドカーンっと別の戦い方もあるんだろうケド」
「えーっとそうなると中級上級の魔法になりますね。
中級以上の魔法は幼い頃より訓練しても、習得に5年近くかかります。
適性があっても3年はかかりますし、大変だと思うと言いますか……すぐには扱えないですね」
習得に軽く5年とかマジかよ。
しかも適正どうのとか元一般高校生の俺にある訳ないじゃん詰んだわ。
「その習得時間や面倒さを簡略化させたのが、微精霊を宿した勇者装備なのよぉ。
個人的にはトツカノツルギ一本でそこまで強くなった勇者様が、いまだに信じられないわ」
「エリスが居ればすぐに傷を治して貰えるしな。
脳死レベリングらくっつーか」
「ちょっと勇者様ぁ。
エリスの治癒能力があるからって、死にかけながら戦うのは流石に」
「脳死ってそういう意味じゃないかな」
何も考えずにひたすらって意味だったが、ネットスラングなんて通じる訳もなかったわ。
「ハルヒトさんって無茶に思える事をやっちゃうから、凄いと言うか何と言うか」
「い、いやぁそんなに褒められても」
なんともむず痒い評価と視線を前に顔がにやける。
つってもレベルしか上げてないケドさ。
「はい、ハルヒトさんは凄い人ですから」
「いや、褒めてないかしら」
「どっち!?」
息ピッタリに被った2人へ突っ込みを入れると、互いにクスクス笑い出す。
そしてエリエットは苦笑しながらも嬉しそうに微笑み、小さく一息付いた。
「けれどこうやって話せたお陰で、私の心配も杞憂ってわかったから安心したわぁ」
「心配ってどうかされたんですか?」
「表彰の場で色々あったじゃなぁい? それでちょっと気になってたのよ。
でも珍しくことわざ通りの勇者様でビックリねぇ」
「ことわざ?」
「英雄は剣と等しくそれを愛す、ですか?」
「そうそうそれねぇ」
彼女はエリスに相槌を打ちながら、マジックアイテムをメンテする。
ああそうか。
エリスと関わりの深い人間からすると心配にもなるか。
俺らもつい先日までぎこちなかったし。
とは言え、『エリスと付き合ってっから!』なんて公言するのも恥ずかしいっつーか。
絶対かわれるしな。黙っとこ。
しかしエリエットも何で心配なんか……。
そう言えばエリスの面倒見てたんだっけ?
見かけによらず、世話好きと言うか優しいんだな。
「あらやだ。
と、そんな関心をしていると彼女は唐突に声を上げる。
「ヒビ……? それって大丈夫なのか」
「かなり危ないわねぇ。
変身中に珠が割れでもしたら元の姿に戻れなくなるしぃ」
「マジかよ!?
どうにか直りませんか先生。
それないと色々リアルに困るんすよ!」
「直せるけれど流石にこれは部屋に戻らないと無理ねぇ……。
仕方ないわ~。これだけは少し預かりましょう」
そう言ってエリエットさんは手にした球を繁々と眺める。
そしておもむろに自前の2つの実りの間へ、それをしまい―――
「ってちょっとマテぇええええ俺のアイテムどこに突っ込んでるんですかね!」
「おっぱいよ?」
「そう言う事聞いてんじゃねぇよ、ソレ後で俺使うんだからさ!?」
「ナニに?」
「レベリングにだよ意味深な聞き方すんな!」
慌てふためく俺をからかってクスクス笑いながら胸元をあえて強調してくる。
前言撤回、こいつ見た目まんまのビッチだわ。
「冗談よ冗談。可愛い反応してたからちょっとからかっただけよぉ」
「お前が言うとシャレならんからマジやめろし」
辛辣に返しても艶色を見せながら首を傾げ、悪びれる様子が無い。
「とりあえずこれは預かって行くわ~。それじゃまたねぇ」
そして彼女は立ち上がるとたわわな物を震わせて、部屋を後にする。
お、俺の
大事なたまたまがおっぱいに挟まれたまま持ってかれちゃったよ。
次使う時、色々と気まずいんだが。
はぁ。
自分の姉もそうだったが、何故お姉さん系はああ言った変な事をなさるのか。
対処に困るので、そう言ったプチイベは画面内限定で頼みたい。
「やっぱり……ハルヒトさんもその、おっぱいある方が良いんですか?」
違うから。
俺のアイテムが不憫で見てただけだから!
おっぱい見てた訳じゃないから!
□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □
「こーんばんわ。どうもぉ~」
「どうもこんばんわビッチ系聖女代表のエロエットさん」
「ちょっとぉ女性に対してそんな事言うかしらぁ普通ぅ。
いくらなんでも傷付くわよぉ~?」
「だったらもう少し慎みのある格好して下さいどこのマイクロっすかその格好」
寝るか寝まいかベッドでぼーっとしてると、昼の痴女さんが更に痴女になって来客する。
昼間より過激で扇情的な格好で、自身のナイスバディを強調した姿……。
裸よりハズくねぇか、ソレ。
このエロエットさんにゃ
「ネグリジェよぉ知らないかしら~?」
「シースルー過ぎて脳内検索に引っ掛からなかったわ。
で、こんな時間に何だし」
「修理終わったから持ってきたの。
よく使ってるみたいだからペンダントにしてみたわ」
彼女は谷間へ手を入れると革ヒモを引っ張り、それに釣られてスポンと珠が現れる。
その勢いで揺れる胸を前に、俺は顔を逸らしながら珠を受け取る。
コイツ絶対ワザとやってんだろ、ったく。
「……ドウモアリガトウゴザイマス」
「あらぁ素直にお礼なんて……怒らないのねぇ~」
「こんな時間に騒いだら迷惑だろ。エリスも寝てんだし」
部屋の時計を見やれば夜の11時過ぎ。
エリスは自室で既に休んでおり、こんな時間に大声出す訳にもいかない。
そう思うならからかい混じりに珠渡すなし。
「あの子の事、ほんと好きなのねぇ」
「わ、悪ぃかよ」
「いえいえ~。
男が好きな変わり者なのかなって思ってたんだけれど、どうも違うみたいだから色々不思議でねぇ」
「……どう言う事だし?」
「だって勇者様ったら私を見る時の目付き、雄その物なんですもの……」
「は?」
何言ってんだお前と発する前に突然、彼女は胸をはだけさせる。
そしてなめらかに桃色の髪が揺れたかと思った瞬間、俺はベッドへ押し倒されていた。
「え、ちょ、お、おま……急に何!?」
「あらあら、女にここまでさせておいてわからないなんてぇ……。
勇者様ったら思わせぶりの割に鈍いのねぇ?」
「待った、待った!
意味わからんし、お、おおおお俺にはエリスって相手がだな!?」
「こんな時間に騒いだら迷惑、じゃなかったかしらぁ……。
エリス、起きちゃうわよぉ?」
「……っ!」
ベッドの上で覆い被さられ、蕩けた声が耳元を這うと言葉に詰まる。
文字通り目の前にはエリエットの顔があり、潰れた胸はネグリジェ越しに俺の上で艶を放つ。
熱と共に鼻をくすぐる甘い香りは、俺の理性を揺らしてくる。
ここで騒げば、エリスが部屋に来てあらぬ誤解を受けかねない。
ならば騒がずに何とか押しのけねば……と頑張るがビクともせず。
体重かけて乗っかってる上に、うまく手まで押さえ付けやがって……。
とは言え辛うじて手にあんのはさっき受け取った、変身の珠のみ。
モンスターに変身して振り解く事も出来るが……
ドラゴンくらいしか知らんし、そんなデカイものに変身したら部屋が壊れて大騒ぎだ。
「て、てててーかアンタ、エリスの面倒見てたって話だったのに良いのかよ。
付き合い長くて仲良いんじゃねぇの!?」
「大丈夫よぉ。
私と勇者様2人だけの秘密にすればぁ、これからする事はバレないわ」
―――あかん。
密着状態で囁かれるもんだから、下半身が反応しすぎて色々エマージェンシー。
それに気付いたのかエロエットさん、女豹のポーズで体重かけてくるし……。
駄目だ、このままじゃ俺はエリエットにパクっとされちゃう。
折角エリスと良い感じに関係築けてるのに、全てが水泡と帰してしまう。
どうにかしなきゃ、どうにか……
「た、食べないで下さい」
「……ムリ、食べちゃう♪」
女豹さんは嬉しそうに舌なめずり。
すでにビーストスイッチ入っていらっしゃるようで、息もハァハァとめっちゃ荒い。
「ちょぉおおっとマテ、マテマテマテマテ。
確かに俺は女の子が好きだし、可愛い子が好きだ。
そんでエリエットって綺麗だし、スタイル良いし、エロいし、それは認めるぜ?
でも何でエリエットが襲ってくんの? おかしくね?」
「勇者様ったら私と話す度に、胸やお尻ずぅーっと見つめてくるじゃなぁい?
あんな熱視線受けて昂るなって方がむぅ~りぃ。
さぁ、素直になって楽しみましょうよ勇者様ぁ……♪」
「いやいやいやいやいや。
そんな見てないからチラ見だから誤解しないで。
ってかそんな格好見んなって方が土台無理あんだろ好い加減にしろし」
「……男のチラ見は女の凝視♪」
彼女はクスクスと微笑んで全てはぐらかし、猫撫で声で甘く誘う。
くそう、人が未経験なのを良い事にこのビッチめ。
何だって胸のデカい人は、こうもエロい事ばっかしてくるんだ。
ああもういいや。
こうなったら泣き出すまで本能の赴くまま全力でおっぱい揉みまくってやろうか!
自己防衛だから後から騒いでも知らねーからなマジ!
―――っと、ちょい待て。
中学……いや、小学校の時に似たような事があったような。
あ。
「ふーん。
じゃあ俺が好きなようにしてイイワケ?」
「良いわよぉ。
貴方の好きに、してちょうだい?」
彼女はそう誘うと俺の上で今一度胸を押し付け、柔らかな双丘はふにゅんと形を歪める。
圧迫された胸は熱と共にトクトクと心音を伝えてくる。
ふむ。
このサイズは多分、EかFはあるな。
おもむろに思い出される、JK時代の姉ちゃんと同じくらいあるし。
「……わかった。2人きりの内緒な」
「あらぁ、その気になってくれたのね嬉しいわぁ♪」
「でも俺ってば、すっげーカチカチだから覚悟しろよ?」
妖艶に微笑んだエリエットに俺もニヤリと笑って返す。
そして重みを受けるベッドは今一度深く沈み、ギシリと音を立てる。
「やだぁステキぃ♪
って……ゆ、勇者様ちょっと!?」
「どうしたし」
「い、いやだってそんな。こ、こんなのぉ……無理よぉ」
おいおい、そんな驚きの声を上げられたらこっちもドキドキすんじゃん?
でも折角俺も覚悟決めたんだし、待たせんなよ。
こっちは誰かさんのせいでマイ・サンがいつもよりビルドアップしてんだ。
そんなオロオロされると俺も待ちきれなくなっちゃうだろ?
「おいおい、早くしようぜ?」
「ふざけないでよぉ、こんなの無理に決まってるでしょぉ?
全部、全部カチカチじゃないの……」
と、彼女はあまりに固くなっている俺を前に呆れた声を出す。
そして口をへの字にしながら身を起こし、拗ねた顔をしながら人の胸を叩いてきた。
だがペチンとコンクリを叩いたみたいな音が響くだけで、俺は痛くも痒くもない。
「まさかサモシャで石になるなんて予想外よぉ」
「言ったじゃねぇか。すっげーカチカチって」
俺は全身石化したままそう返すと、彼女は眉を八の字にして降参を露わにする。
エリエットさんは確かに美人で、そのおっぱいはとても魅力的だとは思う。
しかしな、今の俺にはエリスと言う女神がおるのだ。
おっぱいくらいじゃ揺るがんよ、胸だけにな!
「ワザとっていつから気付いてたのぉ?」
「エリエットの顔見てたら、姉ちゃんにからかわれたの思い出して」
「あら、勇者様ってお姉さんがいらしたのね」
「まぁ男運の全く無い、色々残念な姉だケドな……」
ガキの頃に姉ちゃんと遊んでて、色々と反応してしまった事がある。
で、今回エリエットの見せた表情がその時の姉と似てたのだ。
『あっらー晴ちゃんったらねーちゃんのおっぱいで興奮してんのー?』
『ち、違うよ! そんなんじゃないし!』
『えーほんとかねー? ほーれほれ素直になりなー♪ うへっへ』
『うっわぁああ! ねーちゃんマジやめろし!』
懐かしくも思い出したくない、とても恥ずかしい子供時代が鮮明に蘇る。
7つほど歳が離れてた事もあり、よくからかわれたもんだ。
マジ恥ずかしい。
「んで、俺にこんな事した理由はどうせエリス絡みだろ?」
俺は石化を解き、身を起こす。
彼女は俺の言葉に真ん丸と眼を見開き、驚きの表情を浮かべる。
「……ただの変態勇者様と思ってたけれど、妙に鋭いのね」
「そりゃぁエリスの心配してた矢先、ワザとこんな事してきたってなりゃわかるよ。
女は時に、体を武器にする事を躊躇わないって姉ちゃんの迷言だったし、それを考えると自ずとな」
「……凄いお姉さんねぇ。
ええ、そうよ勇者様の言う通り。
貴方があの子を選んだって事が不安でこんな事をしたの。
試すような事をしてごめんなさい」
「でもそれでどうしてこんな真似したんだ?
鎌かけるなら、他にもっと良い方法があった気がするんだが……」
「勇者様が私を見る目で昔、あの子と契約してた勇者を思い出しちゃって……。
そうしたらこの人もまた、エリスを傷付けるんじゃないかって不安になってね。
気付いたら居ても立っても居られなくなって、ふるいに掛けやすいこんな手段を取ったの」
よくよく考えればそれもそうか。
あんな可愛い子が、他の勇者に選ばれないなんてありえない話だ。
過去にあの子を選んだ勇者も実際の性別を知って、色々あったのだろう。
しかし理由はどうであれ許せんな……。
「要するにあの子を選んだ前の勇者が、俺のエリスを傷付けたんだな?」
「……簡単に言うとそうなるかしらねぇ」
「よぉおおしエリエット、ソイツらの居場所今すぐ教えろ。
全員ぶっ殺してきてやる」
「待って、待って待って勇者様。
そこは話に同情したり、過去に何があったか聞くのが普通じゃなぁい?」
「そのクズ共はエリスを傷付けた。
なら話を聞くよりソイツらの息の根止めるのが先決。
OK全て俺に任せろ。
同郷のよしみで全員仲良く打ち首にしてくれるわ居場所プリィイイイズッッッッ」
「落ち着いてってばぁ~。その勇者達はもうお城に居ないわよぉ」
彼女は慌てて俺の腕へ縋り付いてくる。
何だ、もうおらんのかツマラン。
「でも勇者様、しつこいようだけれどあの子の性別は男なのよ? 後悔は無いのぉ?
女の子なら他にいっぱい居るのよ」
「色々あったケド、その辺はどうでも良いっつーか。
俺はエリスが好きだから性別はうん、また別だよもう。
あの子は性別エリスなんだよ」
「変わってるわねぇ」
「うっせ。誰がどうこう言おうと今付き合ってんだし、良いんだっての」
へんっと返すとエリエットはポカンと口を開けて固まる。
…………あ、やばい。
言っちゃった。
「付き合ってるって、ちょっと待って。
もしかして2人ってもうそんな関係なの……?
はっ!
だから女の私の誘いもかたくなに断ったのねぇ」
「あらぬ想像で補完すんのやめてくんね。
清く正しい関係だっての」
エロエットさんは大袈裟に手を合わせ、目を輝かせる。
そして俺の言葉にクスリと笑い、冗談よと小さく返した。
「そうなると勇者様には伝えておくべきかしら、ね」
「何をだ?」
「あの子、本当だったら女の子に生まれる筈だったのよ」
エリエットはそう語ると遠くを見るように目を細める。
予想外の話を前に、俺は反応出来ずに暫し固まった。
「エリスは呪いによって性別を塗り替えられてしまって、男の子として生まれた子なの」
更に続けられる内容に、思わず顔をしかめてしまう。
ちょい待て、呪いってなんぞ?
「で、その呪いに混じってた魔力と同じ物が、貴方のその珠に残ってたの」
「それってどゆことすかエリエット先生」
「残っていたのは魔王の魔力。
そしてあの子は占いによって、生まれる前からとても期待されていた聖女だった。
でも生まれたのは前例を見ない、
恐らく危機を感じた魔王達が妨害の為に呪いをかけ、そう言った事になったのでしょうね……」
「おいおい。そんな重要そうな話をして良いのかよ」
「あの子の全てを受け止めた貴方には、話すべきだと思ってねぇ」
そうなるともしや、呪いならどうにかする方法が……?
「でも悲しい事に現状では性別を変える魔法は存在しない。
そして呪いを解いても望みは薄いわ。
だからその事実を口外しないのが、関係者内では暗黙だったのだけれどぉ」
「国王も似たような事言ってたっけか。
でも呪いの話をしたって事は、どうにかする方法があるかもしれないんだな?」
「そうね。
でも魔王を倒してしまった今となっては、呪いを解く事が出来ないから無理だわ」
「じゃあ何で話したんだよ……」
「けれど可能性はゼロじゃないと私は思ってるの。
そして貴方なら……勇者様ならもしかしたら―――」
語られる続きを待っていると沈黙が続く。
どうしたのかと彼女が向ける視線の先を追うと、ドアの前に寝間着姿のエリスが佇んでいた。
「ご、ごめんなさい。
トイレに起きたらドアが少し開いてて、灯りが漏れてたので気になって……」
「ごめんなさいねぇこんな時間に。
そう答え、エリエットはベッドから立ち上がるとその場を後にする。
「エリス、貴方の勇者様……良い人ねぇ。大事になさい。
じゃあおやすみなさい。期待してるわね、勇者様」
エリスとすれ違い様にそんな事を告げ、俺に投げキッスをかます痴女様。
あかん。
さっきの事思い出して、つい猫背になってしまったわい。
そして夜遅く尋ねてきたエロ聖女様は残り香を残し、お帰りになった。
―――で、その後エリスは無言でベッドへ腰かけて来た。
マジックアイテムの修理が終わったんで来たと言っても、時間が時間。
しかしどう説明すべきか。
「ハルヒトさん、エリエットさんの石鹸と化粧水の匂いがします」
「ふぉおおおうっ!?
そ、そんなに俺からエリエットの匂いする……?」
「ベッドからって意味だったんですけれど……
言われてみればハルヒトさんからも匂いがしますね」
「ぬぁああ自爆した!?」
自ら暴露してしまった事に頭を抱えるとエリスはクスクス笑う。
ちくしょうやっちまったわ……。
「でもこんな時間に、エリエットさんはどうして来られたんでしょうか。
不安そうに俺を見やるエリスを前に、俺はあった事をそのまま話す事にした。
ここで変に誤魔化して、またぎこちない関係は嫌だしな。
□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □
「彼女が自分と契約した勇者さんを、誘惑するって噂があったんですが……。
本当だったんですね」
「え、それマジ?」
一通り話を聞いたエリスは言い辛そうにそう答えた。
「自分と契約した勇者さんはその、事実を知ってから素行に問題がある方々が多かったんです……。
そんな方が突然、自分との契約を切って国を出るって事が何度かありまして。
勇者さんへ理由を聞いても教えて貰えず、どうして去ったのかわからなかったのです。
ですが一部で教育係のエリエットさんが何かしたのではって、噂があったんです」
「要するにエリエットはハニトラ的な事をして、弱みを握って勇者を脅したのかね?
付き合いが長いからほっとけなかったんだろうケド、アイツも自分大事にしろって言うか。
しかし俺がその気なってたらどーすんだよ、危ないな……」
エリエットが口にしてた内容から考えるに、俺以外にもそう言う事をしていたんだろう。
しかしエリスの為とは言え、危なすぎである。
「そ、その辺はハルヒトさん絶対大丈夫って自分は、信じてますから」
「いやまぁそうだケドさ……その、万が一があるじゃん?
男なんて馬鹿なんだしさぁ」
仮にそう言った気持ちが無くても、ヤケクソになる可能性もある訳だ。
実際、俺も気付かなければちょっぴり危なかったし。
何も無かったからOKってのは釈然としないっつーか。
「大丈夫です!
だってハルヒトさんはことわざ通りの方ですから」
俺の不安にエリスは強くそう返し、赤らみつつ俯いて胸元の髪を指先で弄り出す。
そう信じて貰えるのは嬉しいが、面と向かって言われると恥ずかしい物がある。
「ことわざって昼に言ってたあれか。どう言う意味なの?」
「―――英雄は剣と等しくそれを愛す。
英雄の様に優しさを持つ人は、付き添う聖女を愛剣と同じ様にずっと大切にする。
……何があっても変わらず、一途と言う意味ですね」
そう言う意味だったのねと思いつつ、熱が顔を覆う。
てーか俺そんな風に見られてたのか。
しかしちょいと買い被り過ぎじゃないかな……?
「ハルヒトさんは他にも強い剣があるのに、トツカノツルギだけを使うじゃないですか?
普通だったら他の剣にちょっと手を出したりするのにそれもしない。
あとは暇な時に剣を眺めてたり手入れしたりする事が多いので、その……
自分に接してる時と何となく似てるなぁなんて、ちょっと思っちゃったりとか、はい」
「って事はあれか。
―――俺の場合は勇者は剣と等しく聖女を愛すってトコかね」
思い付きでそんな事を呟くと赤らみながらエリスは微笑んで返してくれる。
そして自分で言っておきながらマジ恥ずかしくなる。
アホかね俺。
「あ、そう言えばハルヒトさん……」
「うん? どうした」
はたと何かを思い出した様子でエリスがそう尋ねてくる。
エリスは少し言い出しずらそうに手をもじもじさせ、自分の胸をさする。
「その、ハルヒトさんが実は大きなおっぱい大好きって本当なんですか?」
「きゅ、急にどうして胸の話? そ、そそそんな事はないよ! てか誰からそんな―――」
「エリエットさんがすれ違いにそう囁いてったので……」
「ちょ、あんのエロエットぉおおおおおお!?」
あんにゃろう人のエリスに何ふき込んでやがる。
後日、頭に来て直接文句を言ったら「男のチラ見は女の凝視」なんてまた言われ。
くそ、やっぱあの時、揉みまくってやりゃ良かった。
―――と、そんな考えが過ぎれば、Gカップの行き遅れOLの
そして『英雄色を好む』なんてことわざを囁いてくるが、俺は目を逸らした。
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