悪夢の後
グランフリート率いる北タリアス軍との衝突後、ストレント軍はラーン砦に引き返し、怪我人を治療する。
戦闘が繰り広げられた戦場では、鈴鹿とエイルーン、そしてネイトが亡骸を見つけては台車に乗せて、砦に運ぶ作業が繰り返されていた。
「一旦王都に戻ろうと思うが、どうだネイト」
ストレント兵の死体の前で、手を合わせているネイトに鈴鹿が問い掛ける。
「そうしたいのは山々です。ですが、皇帝陛下が居ない状態で帰ると、国民に不満が生まれます」
立ち上がったネイトが、台車にまた一人乗せる。
「なら、バサク砦まで引き返して、兵を休めるのが一番良いのでは?」
エイルーンが言い、一人ずつ丁寧に寝転がせた台車を引いて、砦に向かう。
「はい、それが一番得策かと思います騎士長。更にハク砦とミルス砦。それぞれどちらも壁がある鉄壁の要塞。其処が落とされる事は無いと思いますので、王都は安全な筈です」
この戦いの為、王都の兵が手薄になった事の方が、鈴鹿は不安に思う。
王都を暫く空ける為、その周りの守りを固めても、王都が中から崩れては、どれ程周りに気を配っても手の打ち様が無い。
「ネイトは王都に戻ってくれ。今回の戦死者は驚く事に四百人ぴったり。残り九千六百の内、ネイトには四千人と共に王都に戻ってもらう」
「分かりました。王都で怪しい動きがあれば、逐一報告致します」
二人とも台車が埋まったので、砦に向かう。
「鈴鹿、確認した所、もう居ないぞ」
戦闘の範囲が狭かったからなのか、馬で見回りに行っていたケラサス、アルセラ、アルミタの三人が、予想よりも早く帰って来る。
「りんりん! もうストレント兵は居なかったよ。陽も落ちたし、タリアス兵は明日にしよー」
三人の中で末っ子的なポジションの、天然兵器アルミタが、手を振りながら言う。
「ああ、見回りありがとうお前たち。砦に帰って休んで良いぞ」
一番大人しいアルセラが、丁寧に礼をする。
対してケラサスは、こちらを見る事も無く、さっさと砦に帰って行く。
ケラサスを見たアルセラがケラサスを追い掛けて行くが、ケラサスは無視をする。
もう一度アルセラがこちらに礼をする。
「では騎士長。私は王都に帰還する為の準備があるので」
ネイトはしっかりと一礼し、砦の中に入って行く。
「じゃあ騎士長、私は自室で休みます」
「馬鹿を言うな。休む暇は無い。お前きはこの砦の守を任せる」
砦に戻ろうとするエイルーンの、首根っこを捕まえる。
「と、言いますと?」
「私が二千人率いてアーマクスの砦を攻める。お前は再び北タリアスが来た時の迎撃準備をしてもらう」
「それは私にクロノコードとして、正式な命令でしょうか?」
エイルーンが真面目な顔で聞いてくるが、鈴鹿は肩を二回叩き、何も言わずに砦に歩く。
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