神速の戦姫
「どうして付いてくるの?」
街に入ってから、いつの間にか後ろに付いて来ていた男の子に向かい問い掛ける。
問い掛けたところで男の子は黙ったままだ。
男の子に気付いてから、ずっとこの状態だ。
「あぁ、もうこっちは何にも分からない状況でイライラしてるのに。お母さんのところに帰りなさい」
都子が言うが、それでも男の子は付いてくる。
「あなたの親はどこ!? そろそろ実力行使に出るわよ?」
今度は向き合い、男の子に問う。
「まぅ……ま」
男の子が都子を、指差しながら言う。
「私はあなたのお母さんじゃないの……はぁ……分かったわよ。来なさい」
男の子を抱き上げる。暫く街の中を歩くと『guild』と書かれた看板が見える。
「ギルドってなに……って、あんたに聞いても仕方が無いわよね」
取り敢えず、建物の中に入ってみる。
建物の中は、テーブルと椅子が沢山並んでおり、酒場のようになっている。その席に囲まれるように、カウンターが設置されている。
「あら、お嬢さん見ない顔ですね」
愛想のいい笑顔で、受付人であろう龍人がに話しかけられる。
「ここはどんな場所なの?」
都子が受付人の龍人に問う。
「はい、ここでは様々な依頼を受け、それを達成することで報酬がもらえる場所です」
龍人は愛想のいい笑顔を崩さず答える。
「ご丁寧にどうも」
都子は龍人とは対照的な態度で、依頼掲示板と大きく書いてある板に歩き出す。
掲示板を見ると、紙に髑髏のスタンプが押されており、スタンプの数で危険度を表しているようだ。
「スタンプは一個から三十二個まであるのね。ならこれでいいかな」
都子は紙を一枚手に取り、カウンターに置く。
「お客様はまだエージェントにご登録なされてませんよね?」
カウンター越しに龍人が尋ねてくる。
「ええ、していないわ」
「ギルドでは登録してい頂かないと、依頼を受けることができないんです」
困ったような顔をして、龍人が言う。
「なら今登録しなさい」
都子が言うと、龍人はカウンターの下から、紙と羽根ペンを取り出した。
「では、こちらの紙に、お名前をお書きください」
言われた通りの場所に名前を書き、龍人に渡す。
「あともう一つ、この子のも」
抱き抱えている男の子を指差し、都子は龍人に言う。
「あぁ……はい。ではお名前をお書きください」
龍人は一瞬曇った顔をしたが、笑顔に戻り紙を出すり
「ねえ、名前は?」
男の子の名前をまだ知らない都子は、男の子に問い掛ける。
「あぅ、ありゅやむ」
男の子はキャッキャと、楽しそうに手を振り答えるが、全く理解出来ない。
「もう……分かった。あなたは今からフユって名前よ」
紙にフユと書き、龍人に再び紙を渡す。
「ありがとうございます。では武器はお持ちでしょうか?」
龍人が黒いケースをカウンターの下から取り出し、机の上に置く。
「持ってないわ」
都子が言うと龍人はケースを開く。
「ではこちらからお選びください」
開いたケースの中には、剣や槍、斧、ナイフがきちんと整頓された形で並んでいる。
「私は剣ね。フユは?」
フユは手を伸ばし、ナイフを手に取る。
「では登録完了しましたので、ご依頼を確認致します」
龍人はカウンターの下にケースを仕舞い、依頼書を見た龍人の顔が、笑顔から引きつった笑顔になる。
「こちらの依頼は、登録なされたばかりでは少々難易度が高いのではないでしょうか?」
「黙って受諾する」
都子は龍人を睨みつける。
「分かりました。では頑張ってください」
都子の目を見た龍人は、急いで受諾済みのサインを書く。
依頼書を手に、都子はギルドの出口に歩き出す。
「フユ戦闘中は大人しくしてるのよ?」
腕が辛くなってきたので、フユを下ろし、手を繋いで道を歩く。
「これから暫く歩くわよ」
依頼書の内容を確認すると、山の頂上付近に討滅対象が現れたと書かれている。
「陽が落ちるまでには街に帰りたいわね」
都子は太陽の位置を確認し、少し考える。
「ちょっと走るから」
ギリギリだと判断した都子は、再びフユを抱き上げて走る。
「口をしっかり閉じるのよ。じゃないと舌を噛むわよ」
山の中腹辺りまで登ってきた所で、山の上から人が走ってきた。
「出たぞ、逃げろ!」
五人の男が、都子の横を転けそうな程、前のめりになり走り抜けていった。
「ここで待っててよ。動いたら駄目よ」
フユを木の陰に寝転がせる。
「グガァァアアァァ!!」
そう遠くない所から、大きな咆哮が聞こえた。
都子は、フユの近くでの戦闘を避ける為、咆哮が聞こえた方向に走る。
「大きいわね」
フユを寝かせた木から少し離れた所で、大きな龍が見えた。
「見ただけでも十六メートルはあるわね」
木陰に隠れていた都子だが、落ちていた木の枝を踏んでしまう。
枝の折れる音で、龍がこちらに気付く。
「グガァァアアァァァァァ!!!」
先程よりも大きな咆哮を都子に向ける。
「うるさいわね。聞こえてるわよ」
都子は咆哮に怯まず、龍との距離を詰める。正面から突っ込んで来た都子に対し、龍も前から突っ込む。
龍の射程距離に入った途端、龍が右腕を都子に向かって突き出す。
「遅い、雑、分かりやすい」
都子は体を捻り、鋭い爪を回避しつつ捻った勢いで右腕を斬り落とす。
「ガァァ!」
右手が地面に落ちる前に、龍は都子目掛けて尻尾を振り回す。
都子はそれを回避するために、大きく上に跳躍して避ける。
「しまった」
尻尾は囮で、真打は同時に繰り出していた左腕だった。
「つっ……」
剣を盾にして受けるが、都子の体は軽々と吹き飛ばされる。
「ちょっ…無理…」
二本の木をへし折り、三本目の木にぶつかった所で、都子の体はようやく止まる。
「あぁ……もう……この世界に来てから体が軽いから疲労することなく行けると思ったけど……流石に手加減してちゃ無理ね」
都子は短く息を吐いて、気を引き締める。
「面白いじゃない……聖の血が騒ぐわ。」
服がボロボロになった都子は、不敵な笑みを浮かべながら、龍に向かって歩く。
普通の少女が出しているとは思えない程の殺意が、都子の体から溢れ出る。
「グッ……グ……ガァ……」
見えない筈の殺意が体を硬直させ、龍が動かなくなり、苦しそうに悶える。
「この程度の殺意で動けなくなるの? 期待外れね……聖家、五十四代目次期当主、聖都子。慎んで参らせていただきます!」
鞘から抜き放たれた剣が、龍の胴体を削ぐ。
「龍ってどんなものかって、少し期待してたけど、興が冷めたわ。終わりね」
首が落ちた龍は炎に包まれる。その炎が消えると、人型の黒い影が地面に自由落下する。
「んしょ……と」
落下してきた龍人を受け止め、フユの隣に寝かせる。
「終わったわよフユ」
静かな寝息を立てて眠っているフユの頭を、都子は優しく撫でる。
「すぅ……すぅ」
その隣に寝ている黒い人型だった物から、徐々に黒い物が引いて行く。
それは完全に元の姿を取り戻すと、都子と同じくらいの年齢の、龍人の姿になる。
「暫く起きそうにないわね。仕方がないから、起きるまで見張っててあげるわ」
剣の状態を確認すると罅が入っており、戦闘機能は残っていそうに無い。
「困ったわね」
都子は呟き、剣を鞘に納める。
フユの下まで行き、フユが握っているナイフを手に取る。
「ナイフなんて教えてもらったことないけど、これしか無いなら仕方がないわよね。襲われたら其奴等から武器を奪えば良いか」
高い木の上に登り、周りを見渡す。
「あの光は火? 賊かしら」
木から飛び降り、フユを抱き上げ、違う木の裏に布を敷き、そこに寝かせる。次に龍人の少女を、フユの隣に寝かせる。
「あっちの木に、剣を置いたままだったわ」
先程居た木に、剣を忘れてしまったのに気が付き、急いで取りに向かう。
「おい、剣が置いてあるぞ」
もう少しで辿り着くと言う所で、前から男たちの話し声が聞こえた。
都子は、木の陰に身を隠して、男たちの話に聞き耳をたてる。
「おいおい、この剣ボロボロじゃねーか」
「もしかしたら傷を負った騎士が置いていったのかもしれんぞ」
「てことは、ここら辺にまだ居るかもしれねえってことか?」
「そうだな。金目の物を持ってるかもしれねーぞ」
「そりゃチャンスじゃねーか」
男たちは、都子が身を隠している木に接近する。
「このまま来られたら、あの二人が見つかるわね」
フユと龍人の少女が居る方向を確認する。
「はぁ……仕方がないわね。フユの為フユの為」
ナイフを抜き、音を立てることなく木を登る。
「おい、何か見つかったか?」
「いや、まだだ」
男たちが木の下に来た。
木から落下し、気付かれる前に、二人の後頭部をナイフの尻で殴り、気絶させる。
男たちは声を漏らすことなく、受け身を取ることなく倒れる。
「全く……呼吸が荒いからタイミングを合わせるのが大変だったわ」
男たちを木の陰に運び終えたところで、誰かの視線を感じ、そちらの方向にナイフを構える。が、直ぐに構えを解く。
「お見事ですね」
いつの間に起きたのか、龍人の少女が今のを見ていたらしい。
「盗み見なんて感心しないわ」
男たちが腰に付けていた剣を拾う。
「それは……ごめんなさい。声を掛けていたら邪魔になってしまうと思ったので」
龍人は焦った様子も無く、落ち着いた口調で話す。
「まあ、そうね。実に賢明な判断だわ。ところで、あなたは剣を使えるかしら?」
フユが寝ている木の下まで行き、フユの隣に腰を下ろす。
「一応使えます」
龍人は、こちらに向かって歩きながら答える。
「ならあげるわ」
龍人に剣を投げ渡す。
「ありがとうございます。ですが、私は味方とは限りませんよ?」
龍人は受け取った剣を抜く。
「敵なら叩き潰すだけよ? 一戦やる?」
都子は立ち上がり剣を抜く。
「やめておきます。勝てる気がしませんし……そもそも私はあなたの敵じゃありませんから」
龍人は剣を下ろす。
「仲間とは限らないって言って剣を抜いたのは誰よ。まあそれは良いわ、あなたの名前は?」
都子は剣を納めて、フユを抱き上げ、敷いていた布を仕舞う。
「はい?」
龍人は唐突の質問に、思わず聞き返す。
「だから名前を聞いてるの」
街に戻るため、暗い山道を二人で歩き出す。
「私の名前はアルマです」
アルマは後を付いて来て、都子の隣に並んでからそう名乗った。
「そう、私は都子。こっちの眠ってるのはフユ」
自分の名前と、相変わらず眠っているフユを紹介する。
「お子さんでしょうか?」
アルマはフユを見ながら、都子にそう質問する。
「そんな訳ないでしょ」
「では弟様?」
「違う」
「では何方なのですか?」
「保護したのよ。街でずっと私に付いて来ていたから」
会話をしながら歩いていると、前から光が見える。
「さっきの賊の本隊みたいね。さっきのは偵察みたいなものかしら」
「ここは私が行きます」
アルマが剣を抜きながら前に出る。
「あの数じゃ危ないわよ」
明らかに五十は居ると思われる。
「大丈夫だと思います」
アルマは道の真ん中に立ち、賊が来るのを待つ。
「都子様は隠れていてください」
「別にアルマも隠れてれば、私たちは見つからないわよ?」
「いいえ、此処で止めなければ、また誰かが被害に遭います」
「お人好しね」
呆れたように、都子が木の陰に移動する。
徐々に馬の足音が大きくなる。
「誰か立ってるぞ」
次には、賊がアルマに気付いたと言う内容の会話が聞こえる。
「女だ」
「おい、結構美人じゃねーか」
「てめーらあんまり傷つけんじゃねーぞ。俺がいただくからな‼︎」
賊のリーダーと思われる男が周りの賊に向かって叫ぶ。
アルマは賊にかこまれる。
「やれ!」
その一言で、男たちはアルマに一斉に襲いかかる。
「はぁ!」
しかしアルマは一人一人の攻撃を避け確実に斬り伏せていく。
「あの子、人の姿の方が強いんじゃないの?」
木の陰から、アルマの戦いぶりを拝見する。
「てめーら苦戦してんじゃねーぞ。ちょっとくらい傷が付いても構わねーから早くやれ!」
三十人程斬り伏せた所で、アルマに疲労の色が見えてくる。
「ちょっと危ないわね。頑張るのは良いけど、出来ないことはしないものね」
都子はフユを寝転がせて、剣を抜く。
木の陰から飛び出し、アルマを取り囲んでいる賊を、外側に居る奴から斬り倒す。
「なんだ!?」
アルマを囲んでいる輪の内側の賊が背後を見るが、背後に居るのは倒れている仲間だけだった。その現象が至る所で起き、賊は混乱し始める。
「な……何が起きてるのですか?」
アルマは驚きながらも、怯んだ賊を確認し、好機と見たのか、一気に薙ぎ払う。
アルマを囲んでいる輪を無視し、賊に命令を出している男の下に向かう。
「賊の頭はあなたね」
都子が二人の男に守られるように立っている男に問い掛ける。
「な、なんだてめえは」
三人の賊は、突然現れた少女の姿を見て動揺する。
両側に立っていた男たちが、都子目掛けて斧を振り下ろす。
「消えろ!」
斧よりも先に、都子の繰り出した剣が、男たちの首を掻く。
「な、何なんだてめえは」
残された真ん中の男は、腰を抜かして後ずさる。
「何って。私の知り合いがあなたの出来損ないの部下に襲われてるから私は助けに来ただけ」
男の首に刃を当てる。
「死ねクソガキ!」
背後から殺意。その次に男の声がぶつかる。
「馬鹿ばっかりね、声を出すなんて」
反転して後ろの賊を斬り伏せる。
「気付かないとでも思ったの? 舐められたものね。調子に乗るなよクズ」
眼光に殺意を乗せて男を睨みつける。
「都子様!」
部下に囲まれていたアルマが、息を切らしながらこちらに走ってくる。
「アルマ。やっと終わった?」
都子は振り向かずに言う。
「はい。お時間を取らせてしまいましたが、その男がこの賊の頭ですか」
アルマが横に立ち、剣に付いた血を布で拭う。
「そうみたいよ」
都子は、男から初めて目線を外し、アルマの方を見て微笑む。
「どうするおつもりなのですか都子様」
アルマは剣を鞘に戻し、息を整えながら傷を布で塞ぐ。
「恐らくこいつらは街で略奪してきたんだと思うわ」
都子の指差す先には、この国の通貨や金品が積まれている。
「先程囲まれた時にも、全員のの賊の武器には、血が付着していました」
明らかにアルマの気が落ちている。
「どれだけ殺したの?」
座り込んでいる賊に問う。
「四十軒くらい襲ったな」
男は、都子の顔を睨み返した後、にやけながら答える。
「あなた、ここで人生終わるけど、言い残した事は?」
都子が賊に殺意を強めると、男は頭を抱えて悶え始める。
「がっ……ぐぁ……ぐっ」
「まあ、そんなものは言わせないけどね」
「な……何を……されたのですか?」
アルマが腰を抜かし、へたり込む。何とか振り絞った声は震えている。
「ただ軽く殺意をぶつけただけよ? って、情け無いわね、立てるかしら?」
都子はアルマの頭を撫でてから、手を差し伸べる。
「ありがとうございます」
アルマは都子の手を取り立ち上がる。
「それじゃあ殺すわよ」
再び男の首に刃を当てる。
「都子様」
アルマは、先程までとは対照的な、低いトーンの声を発し、都子の前に出る。
「なに?」
前に出たアルマは、剣を抜き、悶えていた男の首を斬り落とす。
「へぇ」
驚き半分、期待通り半分の声が口から出てしまう。
「行きましょう都子様。略奪されたものは返しに行きます」
アルマは、血の付いた剣を布で拭い、鞘に納めてフユを抱き上げる。
「そうね。依頼達成報告の後、きちんと持ち主の元に返さないとね」
気を取り直して、残りの道を歩く。
ーーーーーーーー
都子たちが街に着く頃には、既に夜が明けていた。
「ほんっとに疲れたわね」
都子は、隣でフユを抱いているアルマに話しかける。
「そうですね。私は宿を探しに行きますので、都子様はギルドで依頼達成報告をしたら待っていてください」
賊から奪還した金品を三往復して、ギルドの前まで運ぶ。
「とにかく早く寝たいわね」
都子は欠伸を手で隠しながらギルドの中に入る。
「達成したわよ、迅速に報酬を渡しなさい」
都子は依頼書をカウンターに叩きつけ、不機嫌オーラ全開で受付の龍人に言う。
「はい、こちらの報告でも、お客様が討伐したとの報告がありましたので、報酬は予め用意してありました」
そう言い、龍人は報酬の入った袋をカウンターに置く。
「ん、どうも。それとギルドの前に置いてある袋は、山の麓にある町の人に返してあげて、それとその町から略奪した賊を討伐したんだし、そっちの報酬も上乗せして」
上乗せされた報酬も受け取り、他の依頼を見る為、掲示板に向かう。
依頼書を端から見ていると、掲示板の真ん中に、危険レベル六十三個の依頼書で目が止まる。
「他の同じレベルの依頼より、報酬が約四倍じゃない」
その依頼書を手に取りカウンターに受注手続きをしに行く。
「お客様。こちらの依頼は国外まで行かなければなりませんが、よろしいでしょうか?」
受付の龍人は、相変わらず笑顔で接待する。
都子は接待業も大変だと、改めて思う。
「別に良いわよ、国外でも何でも」
近くのテーブルの上に凭れ掛かる。
「タリアス王国の王族が持っている、アーセナル(武器庫)と言う宝具を手に入れて欲しいと、この国の元老院からの御依頼ですね。現在タリアス王国は謀叛が起きていて、戦争中ですが……まあ、元老院もその隙にアーセナルを手に入れようと言う算段らしいのですが。この情報はこの依頼を受ける方全員に……」
都子は長ったらしい説明を打ち切り、手続きがされた依頼書を持ち、ギルドの出口に向かう。
「ギルドの前で待っときましょうか」
ギルドから出ると、フユを抱いたアルマが丁度ギルドに入ってこようとしていた。
「今日の宿、見つかりましたよ」
アルマがふわりとした、優しい笑顔で微笑んだ。
「そ、そう。ありがと。お疲れ様」
アルマの不意打ちの笑顔にドキッとしたが、頭を振って忘れる。
「次の依頼は国外に行く事になったわ。場所はタリアス王国、手に入れるものはアーセナルって言う宝具」
気を紛らわす為に、先程受けた次の依頼をアルマに話す。
「タリアス王国って、今は戦争中じゃないのですか?」
「そうみたいね。でも報酬は同じ危険レベルの依頼に対して約四倍よ?」
「少しずつこなしていけば、危険を侵さずとも貯まりますって」
「仕方がないでしょ。受けちゃったんだから」
「何に使うつもりですか?」
「この国を出て斑鳩を探すためだけど?」
「斑鳩?」
そう言えば話していなかったと思い、都子は思い出を懐かしむ様にアルマに話す。
「私がこの世界に来たきっかけよ」
「そうなのですか」
「その子のフユって名前は、斑鳩から取った名前なの」
「斑鳩フユって名前なのですか?」
「違うわ。九条斑鳩って名前よ」
「ではどこから取ったのですか?」
「元は聖冬って名前だったの。まあ、それも本名じゃないけどね。まあ、ついでに、私の名前は聖都子って言うのだけど」
「斑鳩様は、都子様の御兄妹ですか?」
「いや、血は繋がっていないわ」
「では婿養子ですか?」
「いや、聖家の当主だったのだけど。お祖母様から正式に聖性は貰えていなかったから」
「ではなぜ聖なのですか?」
「先代が死ぬ間際自分の名前をあげたからよ。先代の名前は聖聖冬」
「名前を分けたってことですか」
「そうよ。でも、聖を名乗る事を良く思わないお祖母様が許可しなかったから、聖冬って名は旧名となってるわ」
聖家の話をしている内に、宿泊予定の宿の前まで歩いて来ていた。
「ここです。都子様」
宿の中に入って、チェックインしてから二階に上がり、一つの部屋に入る。
「はぁぁぁ」
都子は部屋に入るなり、荷物と剣を置いて、ベッドに飛び込む。
「とりあえず寝ましょう。流石に疲れました」
アルマもベッドに飛び込む。
「そうね。私も今日はくたくただわ」
目を瞑ると、あっという間に心地良い感覚に陥りら意識が遠くなっていった。
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