第20話 ある日、森の中
「き、きゃ~」
ヴァルキリーと戦っていたら、急に悲鳴を上げて座り込んでしまった。
歴戦の戦士の雰囲気と
小太りのおじさんは余計なことをするなという目をしていたけど、他の神官戦士と半兵衛さんのジト目に負けたようだ。
ヴァルキリーが落ち着くのを待って、半兵衛さんと小太りのおじさんの話に加わった。
うん、僕も戦いよりも井戸端会議の方が良い。
小太りのおじさんは半兵衛さんに
小太りのおじさんの名前はオールソン。他国の貴族だったけど、
そのときに領地に保護して金銭的に助けたのが半兵衛さんのお父さんで、神官戦士として独立するまで
半兵衛さんが
「
小太りのおじさんにウィンクされた。
今のセリフってナポレオンじゃなかったかな?
女騎士はカトリーヌという女の子だった。
同い年で農家出身なのは
ヴァルキリーという天使が
その戦闘好きの天使は先ほど天界に帰ってしまったとのことだ。
小太りおじさん、ええっと、なんだっけ? ナポレオンさんが慌てている。
確かに一歩引いてオドオドと話す姿からは、ヴァルキリーと同じレベルで戦えるようには見えない。
「大丈夫です。ヴァルキリーと同じとは言いませんが、戦い方は体が覚えていますし、神気も使えます」
「むむむ、しかし……」
「敵に祖国を
うっ 僕はここまで言えないし覚悟もない。
同じだと思ってごめんなさい。
僕達の事情と状況は半兵衛さんが上手にまとめて話してくれた。
何も言わないけど、二人の
半兵衛さんとナポレオンさん
僕達としてはそれでも良いんだけど、今からお城に行かなきゃいけない神官戦士団はそういうわけにもいかないよね。
「
「城に入ってしまっては神官戦士団も被害は
「このまま、城に入らず退却する手もあるが、下手に城のバカ共が生き残ると後で責任を押し付けてきますからな」
半兵衛さんとナポレオンさんで色々と考えているが、どの案もそれぞれ欠点があり決め手に欠くようだった。
僕なら多少後で
「城が落とされるのであれば、街の皆だけでも助けなければ」
しばらく黙っていたカトリーヌが
ナポレオンさんと半兵衛さんが動きを止めてお互い顔を見合わせる。
「いや~ 貴族としての
「私もこういうときは
「しかし、助けるとなると骨ですな。一万人はいるでしょう」
「全員はもちろん無理です。少しでも多くの人を逃がすとなると……」
「上手く逃げれたとしても、それだけの人数を受け入れてくれる所もないですしな……」
頭の良い二人の考えが街の人の救出に向かったので、カトリーヌがホッとした顔をした。
農家の女の子が神託を受けて戦場に出るって……
ジャンヌ・ダルクが思い浮かぶ。
こんなに皆や国のことを考えている優しい人だから幸せになって欲しい。
「後は民衆に北東の城壁に向かってもらうことと、東の砦のボーラル
二人が
神官戦士団は城に入って、敗走となったときは辺境伯補佐を含め兵士を街道のある北西の門へ誘導する。
街の人は反対側の北東の城壁へ誘導する。
北東の壁は昔に
ボーラル子爵だったら、反乱の恐れがなく、働き手である街の人が戻ってきてくれるならば危害や迫害は加えないだろうとのことだ。
いつの間にそんな情報を知っているのだろうか?
「街の方は吾輩が担当ですな。酒と女を頼りに地下ギルドに接触すれば街の情報伝達はなんとかなるでしょう」
「では、ボーラル子爵は私が…… クゥマ」
いきなり僕の後ろから2メートル近い
殺気がすごい……
ええっと、死んだふりって意味ないんだよね。
木に登っても、熊も登れるから目をジッと見つめながらゆっくり下がるのが正解のはず。
ゆっくりと振り返り、目をジッと見つめる。
あ、あれ? 人間ぽい!
半兵衛さんがよく使う、
目を凝らすと
「彼はクゥマ、オーブリー家に
密偵ってスパイみたいな人だよね。この
「熊みたいな密偵だな」
他のみんなもビックリしている。
同じ感想で安心した。これがこの世界の標準だったらどうしようかと思った。
「
クゥマは
密偵でクゥマ…… ふぅま、
◇◆◇◆◇◆
あたしはカトリーヌ。
天使に悪魔のようなことをされました。許せません。
フルプレートとその下のクッションを取ったら、それは
ただの下着です。
下着で大立ち回りって、聖女ではなく
あたしの乙女心は粉々です。
ただ、気になることを言われました。
同い年というアロと結婚しろですか……
聖女として王と
貴族って、平民と違って決められた人と結婚すると聞きます。
それも天使からの話って決定事項ですよね……
初恋もまだですが、あたしはこの人と結婚するのですね。
背が低く、顔は少し幼さが残っています。あたし達の年齢だと男子の成長の方が遅いので、この辺は今後に期待です。
下着姿のあたしにマントを掛けてくれる優しさと、ヴァルキリーの攻撃に耐える強さはポイントが高いです。
今は戦場奴隷ですが、ハーヴェン様や強そうなドワーフ兄弟を
天使のお
えっ!? もしかして超優良物件確保でしょうか?
難しい話はよく分かりませんが、お城に入ってはいけないようです。
ただ、危険があるのならば街の皆さんは助けないといけません。
オールソン団長とハーヴェン様の話に、いつまでたっても街の皆さんの話が出てきません……
「城が落とされるのであれば、街の皆だけでも助けなければ」
二人とも、アッ! という顔をしています。
もう、うっかりさんですね。
あたしは作戦とか難しいことは苦手なので二人がしっかりしてくれないと困りますよ。
ヴァルキリーは天界に帰ってしまったようですが、
パスと言っていましたが、細い糸で繋がっている感覚があります。
天がまだ見捨てていないのであれば、天命あるまで戦わなければいけません。
農村の少女であったならば
この力のおかげで侵略者から皆を助けことができます。
だからこれでも感謝しているのですよ。
話はまとまりましたか? それでは行きましょう。
お城に入ると、辺境伯の部屋に通されました。
王城でも思いましたが、
あたし達の
辺境伯が敵に討たれたために、辺境伯補佐が指揮を取るために部屋に居ます。
取っていますよね? さっきから
その太ったブヨブヨの体で戦場に出れるのですか? それとも
「いや~ さすがは補佐殿、この戦に勝てば辺境伯に
オールソン団長が上手におだてています。
心にもないことをよくもスラスラと言えるものだと感心しますね。
あたしはオールソン団長に喋らずにニコニコしていろと言わているので、従っています。
「うむ、うむ。そうだ聖女殿、この戦が終わったら、この辺境伯の
笑顔が固まりました。ええっと、ニコニコしながら剣で切っても良いでしょうか?
「辺境伯、残念ですが聖女は神に
「おお、それは残念だ。しかし、
気持ち悪い。ねっとりとした視線で上から下まで見られました。
これなら団長の方がカラッとしている分ましかもしれませんね。
団長が言葉巧みに重要な情報を引き出して行きます。
端々に平民を馬鹿にするような言葉を発するので、笑顔を維持するのが大変です。
これなら戦闘している方が楽ですね。
はぁぁ…… おっと笑顔、笑顔。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます