第5話 奴隷の日常
人間はどんな環境でも時間が
奴隷として5日が経った。
奴隷100人を合わせて500人くらいの隊列は、しばらく街道を進んだ後に山に入る。
人数と荷物が多いので進軍速度は遅い。
比較的なだらかな山を3つ越え、今は4つ目の山を登っている最中だ。
奴隷の一日は忙しい。
ひたすら重い荷物を背負って歩く。
昼休みも昼食もないので日中はひたすら歩く。
足が悲鳴を上げるが隊列から遅れると
鞭で叩かれたところは赤くなるどころか皮膚が
鞭って怖い。
荷物の重さは魔法で持てるようになったが肩や背中が
でも降ろすことは許されないので我慢して歩く。
なので
夕方になると移動は終了し、やっと荷物が降ろせる。
しかしすぐに野営の準備が始まる。
まずはテントの設営。
僕の荷物には司令官用のテントが入っていたようで、奴隷4人組で立ててゆく。
地面を整地すると六ケ所ほど浅い穴を掘り、平べったい石を穴に入れその上に柱を立てていく、正方形の木組みが出来ると布を張り合わせ完成する。
初めはなにも解らず
右往左往してるときは、もちろん鞭で打たれるので覚えるのは早かった。
その次は少し離れたところに縦が50㎝ほどの長方形の穴をたくさん掘る。
長方形の真ん中を深く掘るのがコツだ。
すぐに判明したがこの長方形の穴はトイレだった。
朝になると排泄物が
トイレ作りが終われば
生木は燃えないので乾燥している木の枝を拾わなければならない。
初めの頃は燃えない木の枝ばかり拾ってしまい戻ると鞭で叩かれた。
今では枝拾い職人になれるのではないかと思うくらい良く燃える枝を集めることが出来る。
枝が集まったら大きな
水は消費が激しいので大きな樽で何度も汲みに行く必要がある。
特に水源が遠いと気が遠くなる仕事だ。
遅いとやっぱり鞭で叩かれる。
あれ? おかしいな鞭で叩かれてばっかりだよ。
この管理人、優しいのかもって思ったけど全然優しくない!
日が暮れると
朝日が昇ると再度水汲みをし、テントの片付けが終われば出発だ。
うん、ここもおかしい。
寝る時間がない……
初日に気が付いたが解決したのは3日目、眠気が限界に達したときだった。
気が付くと歩きながら寝ていた。
それは不思議な感覚だった。
体は動いているのに意識はない、目や口は半開きで
何か異常があるとすぐに目が覚めるが、何もなくなるとすぐに意識がなくなる。
人間は慣れる生き物、人間ってすごい!
◇◆◇◆◇◆
お、俺はケチな
ちょっとしたことで捕まった後、運悪く戦場奴隷になった。
奴隷なんてよほどの重犯罪者じゃなければならないのにどうなってやがる!
あの貴族は許さねぇ、念入りに
まぁ、それも生きて帰れたらだがな……
なんとか口先三寸で荷物を少なくしてもらって、ヒィヒィ言いながら歩いていると化け物に出会った。
戦場には化け物が住むと言うが、このことかと思った。
よく嘘をつく俺だが、これは嘘じゃない。
俺の三倍の量の荷物を持って歩く子供がいる……
いやいや、なんで戦場に子供がいるんだ。
幼い顔で身長は150㎝ほどだから、おそらく10歳くらいだろう。
そんな子供が戦場奴隷なんていうだけでもおかしいが、それが身長よりも大きい荷物を背負って歩いている。
しかも貴族の司令官用テントだ。
支柱一つ取っても重さは俺らの倍だろう。
肩口から血を流しながら何でもないように歩いている。
遅れると奴隷管理人から容赦なく鞭が飛んでいるが、
血を流しながら歩く姿は
野営地に着いてからもすごい。
初めこそ動きが悪かったが、今では6人掛かりで建てるテントをほぼ一人で建ている。
普通は歩き続きで疲れているのだから手を抜く。
現にあの子供以外は支柱を支えるくらいでほとんど仕事をしていない。
トイレ用の穴も俺が1つ掘る間に10は掘ってしまう。
枝集めや水汲みも早い。
どんな体力と筋力をしてるんだ!
他のやつは魔法を使ってなんとかこなしているのに、この子供は魔法を使っている様子すらない。
東の方にホビット族という子供のような種族がいると聞いたことがあるが、その
あ、また鞭を受けている。
俺が魔法防御なしであれを受けたら、きっと気を失う。
どれだけ鞭を受けても平気な様子に、ドSの奴隷管理人さえも恐れを
ある日、夜の見張りを交代し、やっと寝れると思ったときに気が付いた。
あの子供は交代してたか?
言葉が通じないらしく誰ともコンビを組んでいないと聞いたが……
翌朝、また奴隷仲間の一人が死んだ。
これで5人目だ。
こんな
体力がないやつから死んでいく。
一人いなくなると、俺たちは荷物と作業が増えて休息時間が短くなる。
ただでさえ過酷な環境がさらに過酷になって、また死んでゆく
このままじゃ俺もいつかは……
あの子供もあれだけ無理をしていたらそんなに長くはないだろう。
…… 荷物が増えてスピードが落ちた俺を誰かが追い抜いた。
あの子供だ……
な! 歩きながら寝てやがる!
よ、余裕あるじゃねぇか。
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