誰?


「墓じゃないなら、何だよ?」



和信が聞いてくる。



「わからない、けど、、、」



そもそも、なぜ墓じゃないと思ったのかさえわからない。

しかも、じゃあ何かと聞かれると、わからない。

ただ、墓ではないのだ。

それだけは確実。



和信は不思議そうな顔をしたが、


「信じるよ。」


そう言って私の手をぎゅっと握った。

思わず照れ笑いする。





ーガチャン。




誰かが墓場に入ってきた。




ーーロバートさんだ。



彼も弟の墓の前にきて、花束を置いていた。


「ノアから聞いたのか?いろいろ。」


「はい。黒獣のことも聞きました。」


「そうか。だったら、もっと能力磨かないとな。」



異空間リンク能力のことか。

でも磨くといわれても、何をすればいいのか。

全くわからなかった。


「どうやって磨くんですか?」


するとロバートさんが答えた。



「精神統一だな。

白獣との意思疏通は基本言葉を話すものじゃないだろ?

つまり集中力を上げるんだ。」



なんとなく、わかる気がした。

五感をひとつにする感覚ー。

ネイと話すときは無意識に集中をしていた。

あの集中力をもっと向上させられるようにすればいいんだ。







私達は墓場を後にし、部屋へと戻った。

一刻も早く練習を始めたかった。

お昼までにまだ時間はある。




「和信。

少しだけ、集中していもいい?」


「いいよ。」


そう言って和信はにこりとした。









ー私は、目を閉じた。



ネイに話しかけた時の、あの感覚を思い出す。

自分の身体がどこかへ吸い込まれるような感覚。

じっくり、時間をかけて集中してゆく。



すると、周りの音が全て消えていったような感じがした。

時が止まってるいるように感じてくる。




まだだ。まだもっと行ける。

まだもっと深い場所がある。




さらに、さらに集中してゆくーーーー。


感覚が、心が、力が、全てどこかへ吸い込まれてゆくーー。


どのぐらいの時間が経ったかわからない。


もっと行けるはずーーー。


ーー!!





「誰、、、、、!」





突然、何かが同じ感覚で話しかけてきた気がした。




外からじゃない。

内側からだ。私の中に、何かいるー?




ーーさっき、墓じゃないと伝えてくれたのはあなたなのね。




私はまだ正体もわからない何かに話しかけた。

はっきりとはわからないが、ネイではなさそうだ。




だめだ。集中力が足りなくて

何を伝えようとしているのかわからない。

これ以上、集中できそうにない。




私は集中から解き放たれた。

かなり汗をかいている。

こんなに体力を使うとは思っていなかった。



「大丈夫か?」



和信が声をかけてきた。


「私、どのくらい集中してた?」


和信に聞くと、彼はちょっと言いにくそうにしていた。




「まだ2分くらいしか。」





ーーーーー!

何時間も集中していたような気がしたのに!

それだけしか経ってないなんて、、、。


かなりショックだった。



「そんなぁ、、、。」



私は頭をがっくりと下げた。



「なんか聞こえたりした?」


和信が尋ねてくる。


「私の内側から、誰かが何か伝えようとしたような気がしたよ。

でも、何かわからなかった。

ただ、さっき墓ではないってことを伝えてくれたみたい。」



「お前の中に何かいるってことか?」

「確証はないけど、、そんな気がするの。」




私はふと思い出した。

墓場では妙な胸騒ぎがした。

研究所の横のあの鳥居でも同じような感覚があった。

あの鳥居の前に立ったときも、きっと私に何かを伝えようとしたんだ。



私の中に何がいるのかはわからないけど、

もっと集中力を上げてわかるようになれば、

大きな進歩になるかもしれないー。




きっと魂生命体に間違いはない。



「あのさ、和愛。」



和信が突然話しかけてきた。


「どしたの?」

「俺さ、けっこうすごいこと発見した。」




すごいこと!?

なんだろう。すごく気になる。




「俺、和愛が集中してる時に和愛に触れると、

お前の感覚がなんとなくわかるんだ。

お前ほど集中力がないからまだ細かくはわからないけど。

そもそも、お前の腕に掴んで触れたおかげでこっちに来れたみたいだしな。」




ーーーーー!!!!

私にとっては嬉しい発見だった。

これなら和信も私を通して

魂生命体と意思疏通ができるかもしれない。




「一緒に集中力がんばって上げようね!」

「おぅ!」

私達は、ぎゅっと抱きしめあった。

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