黒獣

「俺達が直面している問題、それは、、、」




「黒獣の存在だ。」




黒獣?

いったいそれはなんだろう。



「白獣がいればその逆、黒獣もいる。

とは言っても、元々白獣だったのが何らかの原因で危険なやつに変わってしまった状態ってことだ。

黒獣になってしまうと、心のコントロールができない。

正直暴走されたら俺達は一瞬で終わる。」




嫌な冷や汗が出てきた。

魂生命体は宇宙を作り出せるほどの力を持ってるはず。

そんなのが暴れたら、、、

想像するだけで恐ろしい。


そしてノアさんが静かに息を吸ってから言った。



「単刀直入に言うが、

お前の父親はそれに巻き込まれている可能性がある。」



「え、、?」


思わずゴクリと唾を飲んだ。

和信も肩の力が抜けてしまってるかのようだった。



「黒獣が現れだしたのはほんの最近からなんだ。

そしたらお前らが突然やって来た。

偶然とは思えない。

とにもかくも、黒獣をなんとかしなくちゃならない。」



黒獣と関わっていくことが

父親を探すことに繋がるなら。

何だってしたい。



「協力させてください、、、!」



ノアさんが少しだけ笑顔を見せた。


「白獣は個々で能力が違うんだ。

その中でも黒獣をやりあうには

【浄化能力】を持ったやつが必要なんだ。」



浄化、、、?

それはつまり、黒獣を白獣に戻すということだろうか。



「浄化された黒獣は死ぬ。

白獣には戻れないんだ。悲しいことだがな、、。


白獣達は基本群れをなさず

お互いの情報共有もしてないみたいなんだ。

だからこそそのパイプ役に和愛ならなれるってことだ。」


「お前はまだ異空間リンク能力の断片しか能力は使えてない。

まぁ無意識だからな。

意識するよう鍛えれば、他のやつとも繋がれる。」



そういえばネイが言ってたな。

魂生命体は他にもたくさんいるんだって。

その魂生命体達とも意思疏通ができれば、

何か分かるかもしれない。



「ちょっと着いてきてくれよ。」


突然ノアさんが手招きをした。

なんだろう?



宮殿の中の大きな廊下をしばらく歩いていく。

こう見るとかなり広い。

綺麗に磨かれた照明が壁に沿っていくつも並び、

光を放っている。


そして大きな扉が見えてきた。

そこを開けると、思わぬ景色が目に飛び込んできた。




ー墓場だ。




室内に墓が並べられているのを見るのは

なんとも言えない違和感があった。


綺麗に並べられた墓には、

いくつも花束が添えられている。

数はそんなに多くない。



そしてまたノアさんが奥にあった1つの墓の前で足を止めた。

暗い表情でその墓を見つめている。


墓には



【Roy(ロイ) Fox(フォックス)】



と書かれている。



「俺達の弟なんだ。」



ノアさんが視線を落としたまま言った。



「黒獣にやられたんだ。

守ってやれなかった。」



悔しそうな表情でノアさんが言った。


家族を失うことがどれだけ辛いか。

今の私には痛いほど分かった。

私の父も無事かどうかは分からない。


「俺の苗字は知らないふりしとけよ。」


そう言うとノアさんはくるりと背中を向け

墓場をあとにしようとした。



すると、突然和信が右奥を指差して言った。




「あの一角だけ墓が隔離されてるのは何でですか?」




和信が指差した方に目をやると、

確かに、綺麗に並べられている他の墓から

数メートルほど離れた場所に

いくつか墓が並んでいる。

墓には鞘に納められた刀が置かれている。



すると、ふと研究所の隣にあった鳥居を思い出した。

あの鳥居から感じた威厳と同じようなものを

その墓からも感じた。



「それは俺達の先祖の墓だ。

それも、1番最初の俺達さ。」



ノアさんが答えた。



「さ。もう行こうぜ。俺もやることあるからさ。」



そう言うとノアさんは今度こそ墓場をあとにした。



「和信。」



私は言い知れぬ胸騒ぎを覚え、和信に話しかけた。


「どした?」


和信がきょとんとした顔で返事をした。





「ーあれは墓じゃない。」





私は、なぜだか分からないけどそれを確信した。

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