ギブ&テイク

「あんたらどんだけ寝てたの?」



朝ご飯を食べに行って早々に

鈴さんに言われた。



「でも5時間ぐらいですよ、、、?」



私がそう答えると、

鈴さんは驚いた表情をした。


「もしかして毎日もっと長い時間寝るの?」


さらに質問をしてくる。



「はい。だいたい6,7時間は。」


「けっこう寝るんだなー!

1番目(ファースト)ではそれが普通なのか。

おもしろいなぁー。

私達は1日で30分くらいの睡眠で充分だからさ。」


「さ、30分ですか!!??」



私は驚きのあまり声を上げた。



「あんたらの方がどうだったかは知らんが、

こっちじゃ寝込みを襲われるのが1番怖いからな。

気づいてるか?みんな帯刀してるだろ?」


そう言われて周りを見ると、みんな確かに帯刀している。



「刀がないと危なくて生きていけないんだ。

そういう世界さ、ここは。

それに狩りにも使うしな。

刀は同盟国から輸入してるんだけどな。」



私は背筋が凍った。

つまり、自分の身は自分で守らなくてはいけないんだ。



「じゃ。私は仕事があるんでこれで。

9:30になったらこの部屋に行ってね。

そこでまた昨日の話の続きになると思う。

今日は違うやつだと思うけど。」



そう言って部屋の場所を書いた紙を手渡し、鈴さんは仕事へと急いだ。






「はいどーぞ。」


低い声が突然聞こえてきた。



今日の食事担当の人のようだ。



かなり背が高く、2mくらいはありそうだ。

短髪の黒髪に、白い肌。目はもちろん藍色だ。

筋肉がついているのか、ガッチリとしている。

そして、何よりイケメンである。




「名前は聞いてるよ。俺はロバート。

もちろん出身は日本じゃないよ。

今は既に滅びた国の出身さ。よろしくな。」



「よろしくお願いします。」



ほ、滅びた国、、、、。

彼は笑顔で言っているけど、

何があったんだろう、、。




私が笑顔で握手すると、和信が少しこちらを睨んでいるのがわかった。

し、嫉妬ってやつ!!

かわいいなぁー和信も、、、


なんて考えていると、9時30分まで後5分と迫っていた。



私達は急いでご飯を流し込み、指定された部屋へと急いだ。


部屋に着くと、ノックをした。




ーコンコン。




ガチャ。部屋のドアが空いた。



出てきたのは、茶髪の男性だ。


「あ、どーも。俺、ノア。

さっきの食事係の弟。よろしく。」



てことはロバートさんの弟かぁ。

似てる。



なんだか和信に似て

あまり愛想がよくない印象だ。

耳には黒いピアスをしている。




私達は中に入ってソファーに腰かけた。



ノアさんが、熱いお茶を出してくれた。

香りがよく、かなりおいしい。



「さっそくだが、俺達が何者かを知りたくないか?」



ノアさんが話し始めた。



「お前らもお察しの通り、俺らはみんな同じ目の色をしてるだろ。

いわば俺達にとって、目の色が違うやつは

同種じゃないってことだ。」


「つまりお前らは俺らから見て同種じゃない。」



同種じゃないってことは、、、

一体この人達は何なんだろう。



「とはいえお前らから見たら俺たちはどう見ても人間だろうな。

だが見た目の問題じゃないんだ。」



そしてノアさんが質問してきた。



「1番目(ファースト)と2番目(セカンド)がまだひとつだった時は今からどのくらい昔のことだと思う?」



すると和信が答えた。



「1000年前くらい、、、とか?」



ノアさんが鼻で笑った。





「約46億年前だ。」





「それって、私達の地球と同じ年齢、、、!」



ノアさんが語りだした。



「へぇー。意外と研究が進んでるだな。

俺達の先祖によると、

約46億年前、人間は既に繁栄していたんだ。

遺伝子学に長け、さまざま遺伝子を組み合わせたり

また分解したりすることができていた。」


「その時に、遺伝子学を駆使して作られた生き物、

その末裔が俺らだ。」



私達は唖然とした。

こんな見知らぬ土地で、自分達が知っていた歴史を全て覆されたのだ。



「だから、国によっては人間を毛嫌いするやつもいる。

俺達は別に気にしないタイプだけどな。」



「俺達の中でも、とりわけ特異な能力を持ってるやつらがいてな。

そういう人達は特別な苗字を持ってるから

基本苗字は伏せるんだ。

能力がバレてしまうからな。

ちなみに女王や鈴さんもそのひとりだ。」



なるほど。だから苗字は名乗らないんだ。



「その特異な力の根源は白獣だと言われてる。

要するに過去に俺らに力を分け与えたってことだ。

それもDNAにプログラムされてる。つまり遺伝する能力だ。」



「俺らは何の目的で自分達が生み出されたのか知らねーし、過去に何があったかも知らねぇ。

だがひとつ言えることは、人間は1度地球ごと絶滅し、

その時に宇宙が2つに分裂したってことだ。

その時から確かに日本という国は存在していた。

1番目(ファースト)では1度日本は滅んでいる。

だけど、何十億年も経って再び日本って国ができた。

お前達がその証拠だな。

これはもはや白獣の関わりは否定できないだろう。

宇宙が分裂した時に、俺達はどうやら2番目(セカンド)に来たらしい。

俺達はそこから46億年滅んでない。」




私は言葉を失った。

そんなに長い間、なぜ繁栄し続けられたのか。




「俺達は人間に生み出された生命だ。

人間がオリジナルなら、俺達は永遠に2番目でしかない。

自然に生まれた生き物じゃない。

それを背負って生きてるんだ。」



まさかこういう人達が全くの別世界で

生きていたなんて。

この人達は、生まれた意味に苦しんできたのかな、、。



とても信じがたい話だけど、

今は信じるしかない。

和信もうなずきながら真剣な顔で聞いている。



「そして白獣は誰にでも見える訳じゃない。」



ノアさんが真剣な顔で話す。



「和愛、お前にはある能力があるおかげで、

白獣と意思疏通ができる。」




「その能力って、なんですか、、、?」


「俺達はそれをこう呼んでる。」






「【異空間リンク能力】だ。」






「どういう法則かはわからないが、

違う空間にいる他の誰かと常にお互いの空間を

共有しあう能力のことだ。」


「白獣達はみんな持っている能力だが、

人間でそれを持ってるのは聞いたことがないな。」



私は驚きのあまり、言葉が出なかった。

ついに自分の特別な力が明らかとなったのだ。

私はネイと常にお互いの空間を共有してたんだ。

だから和信や他の人には全く見えなかったのね。



「異空間リンク能力を持っているやつは、

気配が常に違う空間に置かれてるんだ。

だから俺らはそいつの気配が感じ取れない。」


「俺が思うにネイってやつは

2番目(セカンド)に住んでる白獣だと思うな。

お前らを同じ空間内に置きたかったんだろう。」



これで全てがつながった。

つまりこの空間のどこかに

ネイはいるんだ。

同じ空間にいるということは、

和信にも見えるはずだ。




「お前、父親を探してるんだって?」




ノアさんが唐突に聞いてきた。



「はい。父も多分私と同じ能力を持っていたんです。

きっと何かに巻き込まれて、

別空間に行ってしまったんじゃないかって。

それをネイに話したら、ここに飛ばされたんです。」




するとノアさんは大きく目を見開いた。




「俺達は今、白獣の力を借りる必要がある状態なんだ。

だからこれだけの待遇をお前にしている。

白獣が目に見えたとしても、意思疏通ができるのは

お前だけだからな。

だから俺達もお前の父親探しに協力しよう。

ギブ&テイクだ。どうだ?」



「父はこの空間にいるんでしょうか、、、?」



「可能性はあるな。

だからネイはここにお前達を連れてきたんだろう。

だが確証のあるものではなさそうだ。」




「それでだ。

お前達に、今俺達が直面している問題を話したいと思う。」



ノアさんの表情が一段と険しくなった。

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