Sense

「いつも2人で何してるの?」


夏菜子が聞いてきた。


「2人が同時に部活辞めたのも、すごく噂になってるんだよ?」


夏菜子は悲しい顔をして尋ねてきた。


「付き合ってるの、、?」


「あのさ、急いでるから。また後で話そう。」


和信が切り出した。

そうだ。早くしないとネイがいなくなってしまうかもしれない。


「夏菜子は教室に戻って。ちゃんと授業受けて。」


私は震える声をなんとか振り絞って出した。

今回ばかりは言えない。

夏菜子を巻き込みたくなかった。

申し訳なくて、罪悪感で

身体中が引き裂かれるような思いだった。



夏菜子は下を#俯__うつむ__#いた。

目に涙が浮かんでいる。



「和愛ちゃん、お父さん探してるんだよね。

、、、、頑張ってね。」



震える声を絞りだし必死に言ってくれた。

その後夏菜子は後ろを向き、歩いて行った。



夏菜子、ごめんね、、、、、。



押し寄せる罪悪感を胸の奥に押し込み、

私は和信と共にネイの元まで走った。




気がつけば、また公園に来ていた。

ネイのお気に入りの場所なのだろうか。



「俺には見えないけど。

とりあえずそこにいるんだろ?」



和信が息を切らしながら言った。


「うん。ちょっと話してみるから。待ってて。」


話す、と言っても、言葉では話さない。

うまく説明はできないけど、心を集中して、感覚で話す。


湖の上に立つネイに声を出さず話しかける。

目と目がしっかりと合った。



ネイは何かを伝えようとしている。



ーそうか。



お父さんはこの感覚による会話ができなかったんだ。

だから常に声を出して、話しかけていた。

職場の人達には話さなかったのではなく、

何も分からなかったんだ。

ネイはそれを寂しがっていたのね。



ーーお父さんはどこに行ったか分かる?


感覚で話しかける。


ネイが再び何かを伝えようとしているのが分かった。


ーーネイにもわからないのね。

ーーあなた達は、一体何者なの?


そう質問してみた。


わからないという答えが返ってきた。


どうやらネイは比較的新しい魂生命体で、自分達の過去は知らないようだ。


ーー他にも魂生命体はいるの?


するとネイははっきりと伝えてきた。


ーーたくさんいるのね。


ネイは他の魂生命体には会ったことがないようだ。


ーーお父さんは、誰とケンカしてたの。


これもネイは知らないようだ。



ーー私ね、どうしてもお父さんに会いたいの。見つけられないかな?


ネイはしばらく何かを考えているようだった。

首を大きくかしげている。


するとネイがさらにこちらに近づいてきた。

ネイがおでこを近づけてくる。

何をするつもりだろうか?

私は自然と、目を閉じた。



そして私のおでことネイのおでこがコツンと当たった。





その時だった。




「ーーーーーー!」




周りの風景が突然歪み、辺りが真っ暗になった。

何も見えない。

身体が突然無重力になったような感覚。

私の腕を誰かが掴んでいるのをかすかに感じて、

そのまま意識が遠退いた。


私は一体どうなってしまうのかー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る