手がかり

あれこれと詰め込んだ鞄は

破けそうなほどに膨らんでいた。

持ってみるとかなり重たい。

和信の家はすぐそこだから持っていける。


部屋を出ようと立ち上がった時、

インターホンが鳴った。



ー誰だろう。



玄関に行きドアを開けると、和信が立っていた。



「荷物、あんだろ。持ってやるよ。」



若干不機嫌そうな顔をしながらも、

手を差し伸べてくれた。


「ありがとう。」


私はそう言うと、部屋からひきづりながら持って来た鞄を渡した。

すると和信がまたふてくされたように言った。



「お前これ重すぎだろ。何入れてんだよ。」

「女子だから必要なものが多いの!」

「、、、あっそ。」



相変わらず愛想は悪い。


しばらく2人とも黙って歩いていたが、和信が沈黙を破った。


「お前の親父さん、、、見つかるといいな。

俺もなんだかんだ世話になってたし。」

「警察、本当に見つけてくれるのかなぁ。」

「信じるしかないだろ。」

「、、うん。ありがと。」


和信の家に着くと、和信の母の社 咲(さき)さんが迎えてくれた。



「いらっしゃい。久しぶりやねぇ。

なんか、綺麗になっちゃって。

晩ご飯作ってあるから、ゆっくり食べてね。」



満面の笑みを浮かべるその表情を見ると、

まるで快晴の朝の日のように

清々しい気持ちになった。



「部屋は2階にあるからね。

まぁ昔からよく来てたから知ってるわよね。うふふ。」



そう言って、咲さんは家事を終えて

お風呂へと行った。


とりあえず荷物は部屋に置いて、まずは晩ご飯!

そしてキッチンの横にある

食卓に並べられたご飯に手を伸ばした。

秋刀魚に白米に味噌汁。

おいしそう!!


味噌汁はもう一度わかす必要があるようね。

さてと、コンロは、、、、、


私は驚愕した。



オ、オール電化!!



スイッチのつけ方がわからない、、、、

しばらく睨めっこをしていると、和信が横に来た。



「お前、何やってんの。」


その顔は若干にやにやとしている。


「ここにスタートボタンがあるだろ。」

と、和信がそのボタンに手を伸ばした。


その時、和信の手がかすかに私の腕に当たった。


お互いに目がちらっと合う。


和信はすぐに目を逸らすと、


「後はよろしく。俺トイレ行ってくるわ。」


そう行ってその場を去った。


ーなんだろう。

なんでこんなに気まずいのか。

なぜか、心臓の鼓動がよく聞こえる。



「なんか、暑いな。水飲もっと。」



味噌汁をわかす間に

他のおかずや白米を電子レンジで温めた。

和信のもしておいてあげよう。


すべて温め終わると、

ラップを外して黙々と食べた。


しばらくして匂いを嗅ぎ付けたかのように和信が来た。

私はお返しと言わんばかりに和信に言った。



「トイレ長すぎでしょ。」

「うるせぇ。」

「便秘してたんでしょ。」

「してねぇし汚ぇよ。」



なぜだかそこから会話が弾み、

昔の話をたくさんした。



すると良則さんが来た。



「和愛ちゃん。お父さんのことは本当に残念だ。

純さんが消えた経緯は分からないが、

心当たりがないわけではないんだ。

俺たちの研究について、2人には話しておきたい。

だから、今週末一緒に会社に来てくれないか。」



あまり浮かない表情だった。



「わかった。また時間とか連絡してよ。」



答えたのは和信だった。



「あぁ。済まないな。」

「別に。気にしてない。」



ほとんど一言ずつの会話が終わった後、

良則さんは寝室へと入って行った。



「和信さ、私洗い物しとくからお風呂行ってきなよ。」

「ん、ありがと。」



そういうと和信はそのままお風呂へと行った。



、、、、もっと遠慮しろよ。



まぁいいか。しかしさっきの心臓の鼓動はなんだったんだろう。

なんだか、すごく不思議な気持ちだった。


そしてその夜、洗い物を終わらせた後はお風呂に入り、

2階の部屋で荷物を整理した後、眠りについた。








そして、結局、お父さんは見つからぬまま土曜日が来た。

5日経った今も、警察は何も掴めないままならしい。



何もしていない自分が何とも情けなく思えた。



今日はお父さんが研究していたことを

良則さんが話してくれる日だ。

お父さんの研究は是非知りたい。

それで何か手がかりが掴めるのなら。

私もお父さんを探したい。



もう何もしないなんて、耐えられないよ。



無意識に、いつのまにか拳を強く握っていた。



良則さんと、和信と私で車に乗り込む。

咲さんは玄関から手を振って見送ってくれた。。



車に乗ってから1時間程して、研究所に着いた。

ずいぶん山奥だ。

研究所の横には大きな鳥居があった。



ーなぜだか鳥居から威厳のような物をを感じた。


なんとなく、胸がざわつく。



良則さんがカードでドアをアンロックし

中に入ると誰もいなかった。



「今日は休みだから誰もいないんだ。」



良則さんはそう言って奥へと案内をしてくれた。

そこには、数え切れないほどのパソコンがずらりと並んでいた。



「適当に、ここらに座ってな。」



そう言って広いテーブルを指差した。

良則さんは真剣な顔だ。





「さっそくだが、俺たちが研究していたことについて話したい。

俺達は簡単に言うと、未知の生命体について研究していたんだ。

その名はー」


良則さんが不自然なほど間をあけて言った。





「【魂生命体】だ。」





「、、、、、えぇ!?」


私と和信の声が見事にハモった。

あまりにも突然に話が始まったため、

唖然とした。



「ははは、そうなるよな。

俺だって最初はそうなったさ。今でも正直半信半疑だ。

なんせ存在を知っていたのは純さんだけだったからな。

純さん以外は見たこともなければ聞いたこともなかったのさ。

だけど今回の純さんの失踪で

ようやく信じる気になったよ。」




魂生命体?

一体それは、、、、ー?



「俺たちが魂生命体について今の所分かっていることを話すよ。

よーく聞いてくれよ。

純さんの失踪におそらく関連してるかもしれないからな。」


そう言って良則さんは大きなスクリーンのスイッチをつけた。



これが、何かの手がかりになってくれれば、、、、、。

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