愚かさの一つの到達点

 余談だが、馬鹿が取るべき態度とは、自らの愚かさを知悉して、人に差し出がましくしないようにし、そっと自分の人生を自分一人で完結させることである。むろん理想的な態度であるからそううまくはいかないにせよ、だ。

 例えばここにお腹の調子が悪い学生がいるとする。しかし体育の授業がプール開きだったからと張り切って入水し、途中でクソをひりだすだけひりだし、とにもかくにも排泄排泄排泄として、正常な水を汚泥になさしめ、朋友を汚して汚して汚しきったら、いかがであるか。むろんこの学生が悪いに決まり切っている。では何が悪いのか。

 お腹の調子が悪いのにも関わらず、プールに入ったことだ。けして、お腹の調子が悪いこと自体ではない。

 しかしここに、一つの問題点がある。言うまでもなく、自分が馬鹿であると認識できるなら、それは馬鹿ではない。あるいはこう言い換えてもいい。馬鹿の中でも一等賢い馬鹿だけが、自分が馬鹿だと認知できる。あるいは、馬鹿of馬鹿は、馬鹿だと自己理解できない。無知の知、という言葉すらあるぐらいである。知らないことを知るのは思ったより難しい。そこで周りの人間が、「お前は馬鹿だ」と教えてやり、あるいは口をふさいでやる必要がある。

 これが、炎上である。燃え尽きる人生はそれでも何かはの役には立つ。一つには似た馬鹿に愚かさを自覚させ、もう一つには愚かさゆえの累犯を押し留めることである。

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