無限に食べられる寿司

「お父さん、私、たくさんお寿司を食べたい」

「ははは、どれぐらい食べたいんだ」

「うーんとね、むげん?に食べたい!」

 五歳の娘が覚えたての難しい言葉でそういってから、私の戦いは始まった。

 無限とは?どれだけ頑張っても寿司を無限に用意することはできない。しかし、娘のためならば。

 構想8年、機械の制作に7年。娘の成人祝いに、何とか間に合った、無限の寿司。

「お父さん、これはなに?」

「おお、これはな、お前の成人祝いだよ」

「いや、回転寿司のレーンをプレゼントされても嬉しくないし」

 そう、無限寿司装置は、見た目は単なる回転寿司レーンなのだ。

「フフフ、見た目はただの回転寿司のレーンだが、これは無限の寿司を発生させる放置だ」

「はあ?」

「お前がまだこんなにちっちゃかったときに、無限に寿司が食べたいといっただろう?その願いをかなえたんだ」

「お父さん頭大丈夫?」

「まあ見てろ」

 訳が分からないという顔をする娘をしり目に、娘の好物の大トロをレーンに載せる。準備オーケー、システムオールグリーン。いくぞ!計器の後ろに回り、スイッチ、オン!

 相対性理論だ。かの有名な物理学者アルベルト・アインシュタインが発見した理論であり、その理論によると、加速すればするほど物体は重量を増し、光速の物体の質量は無限となる。ゆえに、光速への到達は不可能という結論なのだがーー

「ここに、私の娘への想いエネルギーを注入!」

 私の感情エネルギーにより因果律・物理法則を破壊し光速に到達する回転寿司レーン!

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 計器の数値が光速めがけて上昇する。10万....20万....25万.....30万km/s!光速だ!現在大トロの質量は無限大!いまだ!娘よ!食べろー!無限質量寿司をー!

おかしい。娘の「おいしい!」が聞こえない。

 そういえば、ソニックブームについて考えていなかった。

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