第6話 両雄動く
このように北条家を軸に、
ところが天正八年四月、最初に仕掛けたのは以外にも
義頼率いる安房里見家は二万の軍勢を持って
義頼にとってみれば、最大の敵は
それは幼い梅王丸の身を案じている義頼が、一刻も早く事の収束を図ろうとした
当初、義頼は安房の全軍勢を佐貫城へと引き連れてきたかに見せた。しかし、二万の軍勢の中には安房の百姓五千が含まれていたのである。
彼は残りの精鋭五千を岡本
つまり敵の本城を攻める軍勢には鉄砲隊はおろか、侍以外の者まで動員されていたことになるのだ。
それでも義頼には勝利の確信があった。
それは、この二年もの間ひたすら
勿論、梅王丸が当主を務める里見家と北条家の間にも和睦が結ばれているわけであるから、北条が兵を動かさなくとも仕方がない。その時は潔く房州の土とならん覚悟はできている。
それでも義頼はこの日のため、北条氏政が妹を
しかしてその結果、義頼が久留里城までわずか二里と迫ったとき、下総より、北条の軍勢が
このことは、すぐに安房方の
その知らせに、佐貫城の加藤
そう、その千本城はすでに、岡本頼元率いる安房勢五千によって
義頼は信景に対し、次なる矢を放った。つまりは、彼を
こうすることで、味方の勢力を温存できるばかりか、何よりも梅王丸を無事に救い出すことができるとふんだわけである。
義頼はその使者に
今度ばかりはただ書状を読み上げればよいと言うわけにはいかない。ことの利、不利を説かなければならないのだ。
この命を受けるや、早速板倉実臣は使者として佐貫城へと馬を走らせた。
一方、千本城での戦はあっけなく終わりを告げることとなる。
城落後、頼忠はすぐさま地下牢へと向かった。そこには、あの
「六郎太ーっ」
堀江頼忠の声は暗い地下牢の中で幾重にも反響する。
「頼忠殿、わしはここじゃ」
見ると、すでに竜崎六郎太は布で眼を覆い、牢屋番の
「六郎太、よう頑張ったの」
頼忠は六郎太の身体をきつく抱きしめた。
「頼忠殿、殿は何処じゃ?・・・」
言いながら、布で覆った顔で辺りを見回そうとする。
「六郎太、眼は如何した?」
日の光の元で暮らしている頼忠には、この竜崎六郎太のさまが異様に感じられたのだろう。
茂吉はことの次第を話すと、日よけの傘を
頼忠と合流した岡本頼元も、この二年もの間地下牢で
「竜崎殿、よう戻られた。ほんとによう戻られたのお・・・」
日の光のもとでは、今はまだ何も見えぬ六郎太の眼からも涙があふれ出し、それは彼の目を覆っている布を濡らすこととなった・・・
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