第五章 『花纏月千《かてんげっち》』 阿紫花志遠《あしばな しおん》編
第五章 花纏月千 PART1
1.
花びらは天空を舞い、月の光は地上を照らす。
今宵のゲッカビジンは二度咲かない。
花天月地(かてんげっち)、この言葉はどちらも存在するだけで美しいとされる代名詞だ。だが本質的には対極に存在するものでもある。
一瞬の命しか持たないが、無限に咲き続ける花。
永遠の光を放つが、夜の闇の中でしか輝けない月。
どちらも同じ世界に存在するものだけど、天と地に分けられる程、正反対の意味を持っている。
昔から日本人は花と月を愛でてきた。それは昔の諺の多さにも比例している。
これらは全て自然を愛するがために出来た形容句だ。花天月地という言葉もその一つにあたる。
しかし今の僕はこの言葉を聞くと、必ず違和感を覚えてしまう。
なぜなら花は地上で咲き、月は天にあるものだからだ。花びらは天に舞うけれど花自体は地上に住んでいるし、月の光は地上を照らすけど月自体は天にある。
逆の方がしっくりきてしまうのだ。
時として、言葉には逆に来る方が適応する場合がある。
それはこれから始まる物語においても、いえることなのかもしれない――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます