第22話 尿道の中の銀色に光る怪獣
*「お待たせしました。その後どうですか?」
麻酔のアラームが鳴った後に現れたのは執刀医の先生だった。退院からの尿の状態や先週血尿で外来に来て止血薬を貰ったことなどを伝えた。これで”Who”は明確になった。
*「では内視鏡を入れていきます。」
”How”だけは実体験するしかなさそうだ。
相変わらず「先っちょ」だけは異なる感覚でありながらも、入れることによる痛みは感じない。物理的接触の感覚のみだ。
*「こ、こ、このとこだけ・・・。」
先生が内視鏡を突っ込みながらぐいぃぃぃっと下のほうに強く押し込んだ。
(そんなに押し込んで大丈夫なのか!?)
正確にはわからないがこういうことだと思われる。どういうことかというと、下半身の人体断面図を見るとよくわかるが、女性が尿道から膀胱までは直線的になっているのに対し、男性は尿道が膀胱の下で90度に曲がっている。その曲がっているところで内視鏡を通すために180度まで開こうとしているのではないか。(ちょうどホチキスの針を交換する時に開くイメージだ。)
*「大丈夫ですか?」
それはこっちが聞きたい。
椅子の横に20インチくらいはありそうなモニターがある。内視鏡の映像を見るためのものだ。こちらからもモニターの映像が確認できる。なにやら内臓らしいぷよぷよした質感の壁が映し出されている。
*「この青いのがステントでこれを今から抜き取ります。」
”How”に関しては自分の体内を見ながら施術出来るレベルといっておこうか。
その時モニターのほとんどを占めるくらい巨大な銀色の物体がフレームインしてきた。
(おおおおおおおおおおおおお!)
その物体は先は丸いが巨大な口を持ちギザギザの歯を持っている。映画エイリアンそのものというか、パックマンを銀色にして歯を付けたというか、マリオのキャラの黒い奴(ワンワンって名前?)。そんなぞっとする奴が私の尿管の中に潜んでいる。失神しそうになりそれ以降モニターが見れなくなった。実際はステントの端を掴んで引っ張るための小さいトング的器具なのだが、画面いっぱいに映し出されれば怪獣にしか見えない。
*「ちょっと、変な感じがしますよぉ。」
(#☆$%£*Э!)
*「はい、終わりました。また血尿が出るかもしれませんが気にしなくていいです。」
ひっこぬかれた。
変な感じと言われたのもよくわかる。表現の仕様が無い。あえて言うなら、
”棒ごと抜かれた。”
そんな感じしかしない。大穴が開いているのではないかとさえ思える。
麻酔を除けば所要時間15分もかかっていないだろう。椅子は再び待ち受け状態に変形した。
*「1ヵ月後にまた経過を見たいので来てください。お疲れ様でした。」
私の戦いは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます