第20話 はじめてのおつかいはライナー性のファール
退院したのが金曜日だったので土日の休日を大人しく過ごした。土曜日は子供達に教えているボウリング教室も新年一発目だったが休み、月曜日から社会復帰した。なるべく下腹部に力を入れないように生活しているので、必然的に腰が引けていつものようには歩けない。よって日々、『元気にトボトボ歩いている。』
退院から火曜日までは順調と言うべきだったが水曜日になると血尿が顕著に現れだした。入院している時はここまで血尿血尿してなかった。退院後の注意書きに泌尿器科外来へ電話して相談してくださいと記されていたので、電話をするとそのまま病院に直行することになった。
術後の血尿は仕方のないことである程度は想定の範囲だそうだ。個人的には尿管に入っているステントがなにか悪さでもしていないかと心配になるが、エコーでは問題なかったようだ。止血薬を貰い毎食後に飲み続けると3日後には血尿も治まってきた。改めて退院後の注意書きを読んでみると、
・水分は一日1L~1.5L摂って下さい。
・汗をかいたら水分補給をしてください。
・脱水を引き起こすのでアルコールは控えましょう。特にビールは結石を作りやすく・・・
と書いてある。
おじいちゃん先生、”ビールに縄跳び”って言いましたよね・・・。
退院してからは尿漏れを危惧して尿漏れパッドをしたほうがよいかと思いドラッグストアに行ってみたが、男性用はどこも置いてなかった。病院の売店に置いてはあったが”息子全体をすっぽり包み込むタイプ”だったので、そこまではしなくてもいいし、用足しの時に不便と判断して購入しなかった。他の男性用となると介護用のおむつまで巨大化してしまうので、ここは割り切って女性用パッドを購入することにした。家族に頼まれたような顔をして『はじめてのおつかい(男の子・46歳篇)』開始だ。
いろいろ探してみたが、サイズ的にふさわしいのは生理用品の列にしかなさそうだ。
(ナプキンはわかるがライナーってなんだ?)
陳列棚の一角をしっかりライナー群が支配している。手にとって商品説明を読もうにも女性生理用品売場に長居はしたくない。ただライナーは形はナプキンと同じようでも生理日以外に使用してくださいとの記載に目が留まり、ナプキン→生理、ライナー→非生理の住み分けは理解出来た。生理でない時に使うのは尿漏れか?よくわからないが2択の消去法でライナーを購入した。
で、ライナーを初装着するのだが、
(どういう向きに貼るんだ?)
両面テープが付いているのだが下着に貼るのか体に貼るのか?密着させるのであれば両面テープを体に貼るべきだが、男性には立体的な3Dオブジェがあるので貼る位置に困る。”丸ごとバナナ”のように包んでみる一手もあるが、本来の目的の場所が覆えないので却下。紆余曲折の末、下着に貼ることにした。隙間は出来るけど、たぶん、これが正解だ。女性用を使用している時点で間違いかもしれないが。
これで安心。
しかし翌朝目覚めてライナーが適切でないことを悟った。
「先っちょがライナーから大いに逸脱している。」
そうか。男性は可動機能を有しており、特に朝は可動しやすいので、病院で販売していたすっぽりタイプがよかったのだ。ナプキンかライナーか迷うところではなかった。さらにいえば血尿が出ているのでナプキンのほうがよかった。はじめてのおつかいは失敗に終わった。
それから買いなおすのももったいないのでライナーを使い続け、貼る位置の要領を得た頃、日付もステントを除去する26日になろうとしていた。
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