第4話 想像するからに人生最大の危機
温泉や銭湯では”タオル”というアナログ式モザイクがある。しかし手術台の上では”無修正”の他ならない。若い女性の看護師さんに晒されるのかと思うと貧弱なものもさらに萎縮してしまう。これは確実に「我人生の恥ずかしかったランキング」のトップに躍り出る。(ちなみにこれまでのNO.1はショッピングセンターにテナントとして入っていたアパレル店長時代、トイレで用を足した後に尻を拭いたトイレットペーパーが割れ目に挟まっていることに気付かず、そのままズボンを履いて出てきてしまった。その結果、優に2mを超えるトイレットペーパーのしっぽを引きずってショッピングセンター内を巡回していた。それ以来トイレットペーパーの無駄遣いをやめたのは言うまでもない。)
そもそも患者なんだし、場所が場所だし仕方がない。向こうにとっても何百本のうちの一本であり大して気に留めないであろうが、その一本といえども私自身である。それに追い討ちをかけるようにして貧弱なのである。私の大学生の息子は先日成人式を迎えたが、私の体に帯同する息子は依然、義務教育の過程を彷徨っている。
ネガティブになってくるとどんどん心配事も増える。以前お母さんが膝に人工関節を埋め込む手術をした時の同室だった人が、麻酔で何らかの問題があったらしくその影響で下半身に障害が残ってしまったことがあった。普通に歩くことが困難になったり、最悪、車椅子生活になってしまうこともあり得る訳だ。
私も今回の手術で麻酔をし問題が発生したら歩けなくなってしまう可能性がゼロではない。と、普通そういう心配をしなくてはならないところ、なぜか私は”下半身=帯同する息子”のイメージしかなく息子が”寝たきり患者”になってしまうのではないかという心配に支配されていた。今回の麻酔が全身麻酔ではなく下半身麻酔であることも下半身具合に拍車がかかっていたようだ。
人間には災害発生時、自分だけは大丈夫であろうと思う「正常性バイアス」という心理的特性を有しているが、息子に関してはそうでもないらしい。
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