第二部「覚醒」 第二章「とんだネズミ」

僕には危険を察知する能力がある。

僕は「虫の知らせ」に従うことで何度となくトラブルを回避してきたのだが、今回は久々に日本に帰国するフライトということもあってつい、警告を無視してしまった。

 それがこの始末だ……。 

百回目の後悔をしながら、天井裏から操縦室内を見下ろしていた。


「おとなしく我々の指示に従えば無茶なことはしない。俺たちは9.11の奴らとは違うんだ」

僕の乗った日航のオランダ発成田行きのジャンボが東欧系らしい二人のハイジャック犯に乗っ取られたのは、成田まであと5時間という時だった。彼らはスチュワーデスを人質に取って操縦席を占領したのだ。乗客はまだこのことを知らされていなかった。

「このまま成田へ向かえ。要求を出す時はこちらが指示する。それまでは普通にしていろ。今、ハイジャック警報を出したらロシアに撃墜されかねないぞ。自分たちの町に突っ込まれたらたまらないからな。日本の領空に入ってしまえば、日本政府にはその度胸はない。お互いに安心と言う訳だ」

「乗客に気付かれるなよ。もしヤツラが騒ぎ出したら俺たちも選択の余地はない。手におえなくなったら自爆するしかなくなる。分ったな」

この場にいる犯人は二人、しかしあと何人が外で乗客に紛れているか、分らなかった。

 どうしよう。

僕は天井の配線にぶら下がりながら話を聞いていたが、うっかり足を滑らせてしまった。

「何か落ちてきたぞ」

 犯人の一人が僕を見つけて驚いたように声を上げた。

「ありゃ、ネズミだ。飛行機にネズミを乗せているとは大した会社だ」


そう、僕は今、ネズミなのだ。

僕がこの能力に目覚めたのは学生時代だ。寮の部屋に一人でいた時、突然不思議な感覚に襲われ、あっという間に身体が縮んでネズミに変身してしまった。まさに悪夢を見ているような、恐ろしい初体験だった。

それでも僕がこの体験に比較的スムーズに適応できたのは、まだ若くて頭も柔軟だったからだろう。そして変身することに慣れてくると、僕はこの天からの授かりものを楽しむようになった。僕は一日に何度も変身を繰り返し、次第に能力を磨いていった。同室の日隈はしょっちゅう僕がいなくなるのを寂しく思っていたようだが、どっこい僕は部屋の中にいたのだ。

さらに僕はこの能力を使って好奇心の赴くまま、学校、寮のありとあらゆるところを覗いて回った。おかげで友人、教授たちの秘密を沢山知ることになり、そのせいで少し大人びた学生だったと思う。ただ、僕なりの倫理観で判断して、この能力の悪用はしなかったと胸を張れる。

一時期の熱狂が冷めた後はより冷静になってきた。変身中に事故に遭っては、元も子もない。ネコに襲われてネズミのまま死んでしまう可能性もあることを考えると、変身するにも慎重にならざるを得ない。もちろん、この超能力を乱用してはいけないのもよく分っていたので、ここぞと言う時以外、自制するようになったのだ。

僕は普通に会社に就職し、普通の社会人生活を送った。超能力を使ってお金を稼ぐとか、悪事を働くような気持ちにはならなかったがそれは、幼い頃から受けていた「正義の人であれ」という父親の教育のおかげだろう。変身能力について正面切って話し合ったことはないが、恐らくは事態を推測していたと思う。ひょっとしたら、父親も同じ能力をもっていたのかもしれない。

普通人の生活を送るために普通に就職したのだが、皮肉なことにこの能力を最大限に使わざるを得なかったのはその会社の命令で、東欧の国に赴任した時であった。ある日突然、方針が180度変わってしまうような国で相手先の意向を探るのは、ある意味で自分たちの命を守るためでもあった。僕は、この国で変身能力の封印を解き、ありとあらゆるところを嗅ぎ回ったのである。

僕にはもう一つ、外国語修得の才能もあって、何処に行っても直ぐ日常会話には不自由しなくなるのだった。そこで僕は秘密の話を求めて、会社幹部の部屋や党の地域執行委員会にまで忍び込み、彼らの会話を盗み聞きした。

僕が変身能力を使って集めた情報は自分と会社を救うと同時に、かの地の友人たちを何度か助けることにもなった。あの当時は、ちょっとした情報で貴重な薬が手に入ったり、粛清を免れることが可能になったりしたのだ。彼らは僕を「東方からやってきた小さな救世主」と呼んで今でも交流は続いているが、いまだに彼らは僕が、文字通り小さくなってそれらの情報を仕入れたことは知らない。


オランダ離陸後、すぐ僕は何人かのスチュワーデスと仲良くなった。フライト前に感じた不安もあって僕も少々積極的だったのだ。その中の一人は、「聖華と呼んで」と言い、「ネズミみたいな可愛い、円らな瞳」と僕にささやいた。彼女たちと楽しくやっていれば、あっという間に成田に着くはずだった。

ところが、僕の予感はやはり正しかったのだ。

突然、パーサーが聖華を捜しに来たと思ったら、あっという間にスチュワーデスが全員消えてしまった。頭の中で警報がガンガン鳴る。間違いなく、緊急事態だった。それで、いささか危険ではあったが、僕は変身して調べてみることにしたのだ。

僕の席は非常口の真横で隣はいない。室内は照明も消されて殆どの乗客は寝ているので、気付かれる心配はなかった。座席に横になり仮眠用のブランケットをかぶり、その中で精神を集中した。僕は、小さくなあれ、と唱えるといつものように身体が震え始め、顔が縮み、腕が縮み、足が縮み、あっという間にネズミに変身した。

そのまま服を抜けると僕は前方に走った。スチュワーデスは一人もいない。それで僕は2階に上がり、操縦室に向かった。何度もジャンボに乗っているので勝手は分っている。配線を通すダクトがあるはずだった。ルートを間違えて少し手間取ったが、何とか配線の間を抜け操縦室の天井にもぐりこんだら、ハイジャック犯を見下ろしていた言う訳だ。


ありがたいことに奴らは、天井から落っこちて床下の計器の間に隠れた僕を探すつもりはないらしい。パイロットたちが犯人の言うことに素直に従っているのは、犯人が一人のスチュワーデスを(何とそれは聖華だった!)縛り上げて彼らの足元に転がし、首筋にナイフを突きつけていたからだった。すぐそばには爆弾らしい手荷物も置かれていた。

まだ、日本領空まで時間があった。それで僕は、その場にいないスチュワーデスたちを探すことにした。僕が配線と格闘している間に、行き違いに下に降ろされたらしい。スチュワーデスがいつまでも出て行かなかったら、乗客たちも不審に思うはずで、それを避けるために平常を装わせる必要があったに違いない。

僕が下に降りた時、彼女たちは乗客へのお茶出しを準備していた。僕はその中から仲良くなっていた一人を見つけてこっそり肩に乗って耳元でささやいた。

「後ろを見ないで。僕だよ。一体どうしたんだ。これはハイジャッカーの指示なのかい?乗客に美味しいお茶を一杯、ハイジャックより愛を込めて、とか」

 僕の声に彼女はギョッとしたように身体の動きを止めたが、すぐにささやいた。

「その声は音澄さん?どこにいるの?」

「いいから、僕もハイジャックのことを知っているんだ。でも、なぜ君たちは?」

「いつもどおりの仕事を続けるようにと言われたの。もし、怪しまれるような行動を取ったら聖華を殺して即座にハイジャック宣言をするというの。それに、乗客の中にまだ犯人の仲間が潜んでいるらしいの。私たちが情報を漏らしたら乗客を殺すと言われていて、誰が犯人の仲間かもわからないし」

「そう言うことか。監視されている訳だ。分った。何とか考えて見よう」

「あなたはどうして自由に動けるの。なぜ、このことを知っているの」

「いいから、心配しないで。これから少し探ってみるけど、決して回りに悟られないように、真直ぐ前を向いて話すんだよ。決して諦めるな。仲間にもそう言うんだ」

「待って。会社の非常保安員がこの飛行機にはいるの。例のテロ以降、乗りこむようになったの。彼に連絡して。シートは30-Dよ」


僕は彼女の背中を飛び降りると座席の下を走って30-Dに向かった。飛行機会社は直近、自己防衛で保安員を置いていたのだ。彼らは乗務員との間で暗号コードを決めており、それで緊急時のやり取りを確実にすることになっているとスチュワーデスは教えてくれた。

僕は30-Dの座席に上り、耳元に近いところでささやいた。男は仮眠を取っているのか、じっとしていた。まさか、こんなに直ぐ自分の出番が来るとは夢にも思っていなかったことだろう。

「起きろ、身動きせずに聞け。コードSS55だ」

流石にプロだった。僕の一言で目を覚ますと、一瞬何事かを判断するように身体が緊張したように思えたが、そのままの体勢で動かなかった。

「ハイジャックが発生した。まだ、乗客は気付いていない。スチュワーデスが人質だ。仲間が乗客席に残っている模様。僕の言う意味は分かったか。分ったら静かに首を動かしてくれ」

男の首が微かに動いた。

「犯人は操縦室にいるが、直ぐに動くことはない。日本領空に到達後、行動を起こすらしい。君には同僚はいるのか」

男の首は小さく横に振られた。残念ながらこの男、一人らしい。

「情報を仕入れてくる。このまま待っていてくれ。決して振り返るな。僕の姿は秘密にしたい」

「あんたは一体?」

 男のささやきを無視して僕は通路を駈けた。

問題は、いかにして縛られている聖華を助けるか、そして爆弾を無力化するか、だった。

優先順位をつけるんだ。まず、犯人の数を調べよう。そしてこれには当てがあった。

やつらは乗務員と話す時は英語を使っていたが、二人で話す時は乗務員に悟られないよう、早口の母国語を使っていたのだ。そして、それは僕が仕事でしばらく過ごした某国の方言だったのだ。だから、彼らの言葉をじっと聞いていれば手がかりが手に入るはずだった。

操縦室の中は僕が抜け出した時のままだった。犯人たちは機長たちから離れて後部に座っていて、すぐそばに聖華と爆弾入りのバッグを抱えていた。よくみるとバッグからリード線のようなものが出て犯人の一人の胸ポケットに繋がっているのが分った。起爆スイッチはあそこか。

機長たちは操縦席に座っていて、時々後ろを振り向いて犯人たちを目で探るが、そのたびに聖華の首にナイフが押しつけられるので、諦めたように前を向く。犯人たちが飛行中は何もしないというその言葉を信じて成田まで飛行機を飛ばす覚悟を決めつつあったのだ。

このままでは動けない。

僕はもう一度天井に上って、操縦とは関係ない機体の部材をカリカリ齧り始めた。

「なんだ、あの音は」

「さっきのネズミじゃないのか?もし、操縦系統の配線を齧られたらどうするんだ」

 犯人たちは天井を見て騒ぎ始めた。パイロットたちは黙って前を見ているだけだった。

そのうち、一人は母国語で喋り始めた。

「こいつら、何か企んでいるんじゃないか。大丈夫か」

「心配するな。まさか我々二人だけとは思っていないだろう。仲間が外にいるように思わせている限り、めったなことはやらないさ。万が一でも飛行機を墜落させるような危険をおかすわけがない」

「そうだな。それにしてもカリカリ嫌な音だぜ。実を言うと、俺はネズミが苦手なんだ」

 犯人たちの会話は短かったが、僕は天井でしっかり聞き取ることが出来た。奴らは二人きりだ。何と言う幸運、これなら手はありそうだ。

僕は静かに床に下りた。そして爆弾の入っているカバンの底を噛み破って中に潜り込んだ。ネズミに変身している時は暗闇でもはっきり見えるし、近眼もなくなるのだ。僅かに開いた上部のチャックの隙間からさしこむ光があれば十分だった。

爆弾については詳しくないが、ここにあるのはきわめて幼稚な仕組みであるのは明らかだった。ひょっとしたらただの玩具かもしれない。しかし、そんな幸運を期待するわけにはいかない。僕は犯人のスイッチにショックを与えないように静かに配線を噛み切って無力化した。これで、二つ目まで問題をクリアした。後、一つ。

僕はカバンを這い出すと操縦室を出て、保安要員のところに急いだ。

「いいニュースだ。犯人は今、操縦室を乗っ取っている二人だけのようだ」

それを聞いて、男は明らかにホッとしたように息を吐いた。僕は後ろを振り返りそうになる男を制して続けた。こちらがただのネズミだなんて知られる訳にはいかなかった。秘密情報員か何かを装っていて初めて、僕の指示に従ってくれるのだと分かっていた。

「こちらは見るな。乗客に混乱は起こしたくない。静かにこの事件を片付けよう。僕の計画はこうだ」

 僕は保安員と打合せを済ますと、また操縦室に戻った。スチュワーデスには男がこれから起こることを知らせるはずだ。いずれにしても彼女たちはいざと言う時、乗客を落ちつかせなければならない。


「うわぁ、ネズミだ!ネズミがケーブルを齧っている」

機長の叫び声で聖華の首筋にナイフを当てていた男が前に飛び出した。ネズミは苦手と言っていた男だ。もう一人はバッグを抱え、スイッチに手をかけて叫んだ。

「おかしなことをすると女は死ぬぞ。スイッチを押す覚悟も出来ている。分っているな」

機長は黙って座席の脇を指差し、男は恐る恐るそこを覗きこんだ。


「黙って聞いて。音澄だよ」

いきなり耳元で話しかけたのは男が離れた瞬間を狙った賭けだったが、聖華は冷静だった。僕の声をすぐ思い出してくれた。

「救出の段取りはついた。今から足の縄を噛み切る。でも悟られないようにして。今度、騒ぎが起きたら近くにいる奴を目一杯蹴り上げるんだ。いいね。了解したら頷いて」

余計なことは言うな。ただ黙って頷いてくれ。僕はそう祈った。

一瞬の後、聖華は小さく頷いた。

僕は彼女の足の方に回り、影になっているところの縄を齧り始めた。聖華がギクリとしたように震えるのが分ったが、構わずギリギリのところまで齧った。あとは足を少しでも動かせば縄は千切れ飛ぶ。

聖華はどうやって僕が縄を切ったのかと思っているだろう。いや、どうやって姿を見せずに話しかけられたのかという方が不思議だろうか。でもそんなことを本当に気にし始めるのは、多分ずっと後のことだ。

「確かにネズミがいるみたいだ。あちこち、齧られている」

犯人は戻ってきてそう告げた。僕がさっき、齧っておいたところを見つけたに違いない。機長も上手に演技してくれた。犯人の注意はまだ、齧られた配線に向いているのだろう、ありがたいことにさっきよりナイフの刃は聖華の首筋から離れていた。


僕は大急ぎで操縦席の外に出て、待機していた男の上に近づいた。そして、準備が出来たことを伝えた。男は黙って了解のサインを送りながら、何とか声の主を探そうとキョロキョロしていたが、人間の姿を探しても見つかるはずはなかった。

僕は操縦室の天井に戻った。真下にはバッグを抱えた主犯格の男が立っていた。最終段階だ。失敗は許されない。ワン、ツー、スリー!

僕は天井から男のシャツの首筋めがけて飛びこんだ。そして思いっきり噛みついたのだ。

「ウギャー!!」

男はものすごい声を上げて跳ね回った。そしてナイフを捨ててシャツに手を突っ込んだ。ネズミ嫌いのほうは何が起こったかわからぬまま、相棒に駆け寄り、聖華への注意が一瞬逸れた。

その瞬間を捉えて聖華は足の縄を蹴り千切ると同時に男の股間を蹴り上げた。機長たちも一斉に振り向き、男に飛びかかっていった。主犯格の男はまだ叫び声を上げながら、爆弾のスイッチを押しつづけたが、もちろんむなしくコードが揺れるだけだった。

操縦室のドアをあけ、保安員が飛び込んできた時は、全て終わっていた。


飛行機の中は薄暗くなっていた。

僕が配線を齧って照明電源を切ったのだ。

たった今、乗客は控え室に移動を始めたが、目だった混乱はなく、そんな大事件が起こったことはほとんど気付かれていなかった。


僕は保安員と計画を打ち合わせる段階で、自分は存在を知られることが許されない政府の極秘エージェントと信じこませていた。僕のことはあくまでも秘密にしなければならないと告げて、機長への指示メモを男に書かせた。だから、機長も突然足元に現れた緊急連絡用紙を見て、指示通り(そこには「今すぐ大きく叫べ」と書いてあった)行動してくれたのだ。

したがって、この事件は公式には保安員が乗務員と力を合わせて犯人を捕まえたことになる。それ以外は誰もいない。もちろん、JALの面目を潰すようなネズミもいないのだ。

 僕は気付かれずに人間に戻るため、最後まで待っていた。

 毛布に潜り込んで変身を始めたところで突然、声が響いた。聖華の声だった。

「何処にいるの、音澄さん。みんなは混乱の中で覚えていないかもしれないけど、私はあなたのことを忘れていないわよ。あなたの座席にあったのは抜け殻のような服だけ。ひょっとして、あなたは透明人間?」

そう言うといきなり、聖華は毛布を剥ぎ取って床にほうり投げた。僕は毛布に摑まったまま、投げ出された毛布の下に転がった。

参ったな。このままでは服のところまで戻れない。

「透明人間なんかじゃないよ。でもちょっと姿を見せられない理由があってね」

そう言いながら、ゆっくり毛布をかぶったまま引き摺って、座席の方に移動した。

そのまま、僕の変身は続いていた。きっと彼女の目にはだんだん毛布が脹れあがっているように見えているはずだ。

「手品なの?」

 恐る恐る彼女がささやいた。ありがたい誤解だった。

「そうそう、これは一種の手品と腹話術なんだよ。手品の種は毛布の下だよ、ほら、だんだん大きくなっているだろう。こっちにおいで、覗いてごらん」

彼女の足音がゆっくり近づいてくるのを僕は毛布の下で裸のまま待っていた。


僕が勢いよく、その店に飛び込んだ時、テレビを見ていた3人は驚いたようにこちらを振り向いた。日隈、大河、駒園、僕の旧友たちだ。

「信じられない。あの報道陣の間を抜け出して、よく間に合ったな」

「抜けるのは得意なのさ」

 僕は今回の一時帰国の際、この定例会に直行すると連絡してあった。しかし、彼らは成田でのハイジャック騒ぎを知って、まさか僕が間に合うとは思っていなかったらしい。

ハイジャック事件に突然巻き込まれて、やむなく能力を使ってしまったが、仕方のないことだった。飛行機会社の保安員は僕のことを、国家のトップシークレットと判断して口をつぐむであろうし(おかげでマスコミの攻勢に晒されることなく抜け出すことが出来たのだ)、聖華も不思議な手品を使う、素敵な男性という以上には詮索しないだろう。

いずれにしても、僕は彼らの命の恩人なのだから。

「あなたたちの会う時って不思議に何か、事件があるのよね」

 ママがそう言いながらテレビのボリュームを下げた。

 僕たちはハイジャック事件の続報に背を向けて、久々の再会に祝杯を挙げた。



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