「柵の中にて」という小説を書きし男の告白で聞きしこと

「柵の中にて」という意味不明な出版物をネットに、うるさきほど公表せし男を口寄せせんと思う。ソーシャルネットワークなるものを通じて知り得たことなれど迷言妄言多しと思いたる由縁なり。彼がこの世に実在せし者か、それとも異界の存在かも不明なれど福島原発事故に関する記述、オリンピック、パラリンピック、陸上自衛隊なる国の危機管理安全保障の記述多しことに関心を抱きたる。

 古より我ら口寄せを許された一族には生計を成り立たせるために冥界と現世の間の交信に限らず遠隔地に住むの親族や友人との交信を行いたる秘術ありたり。生計を維持するには現世に生存する者の口寄せをすることも大いに役立てり。先述したとおり彼が現世に実在する存在でありても口寄せは可能なり。

 今回は久しく冥界、現世いずれか不明なれど口寄せを試みんと思う。

 話したきことが多いよし、交信は安易に出来るものと予想せり。ただネットの書き込みが更新されている様子から、その時までは彼は生存したりことは確実なり。

 運良く「柵の中にて」という薄き小冊子を手元におきし知人より借り受けることに成功せり。同時に、この小冊子はかなり知れわたり、陸上自衛隊のポルノ小説と悪評を受けたるも耳したり。それに手を起き、念じたり。 念じ方は古より秘中の秘なる儀式になれば公表できず。

 すぐにその男と思われる者の声が届かん。これより以下が彼とのやり取りなり。

「自衛隊のポルノ小説という悪評を得たる小冊子を出したるは、お主か」と問えり。

「ポルノ小説か否かは疑問なりしが、汝の手元にある小説は我が手によるものなり。如何にして手に入れたりや」

「ある友人から入手せり」と我は答えたり。

 すると彼は、「多くを友人に配布したる由縁に、その一冊が汝の手元にありしか」と、すぐに納得せり。

「如何なる所存でかくなる小説を出したるや。窮鼠猫を食むという心境なりか」と、知人から聞いた説明を加えて問えり。

「窮鼠猫を食むと言う言葉が当てはまるかどうか不明なりが、苦しみ抜いた結果の選択なり。今も後遺症に苦しみ続けたる大事なり。忘れたき出来事なり」

「矛盾せり、忘れたきことなら何ゆえにネットに続けざまに公表したるや。明らかに相矛盾する行為なり」

「最初はひとえに福島原発事故のせいなり。遠い昔、若き日々の話しなれど、とある原発稼働の頃に一致する時期の話なり。もともと吾が思想に絶対などと言葉を存在ぜず、自衛隊も万が一に備えるべきなりと主張せり。我の危機感に対する回答は原発事故発生時に陸上自衛隊の可能な行動は避難支援のみと回答を得たような記憶せりが、その後は多くの部隊をたらい回しにされるような日々なり。それ以降はそのようなことを話題にする状況にもあらず。もともと劣等なる身なれば諦めるしかなし。また福島原発事故以降に国内原発再稼働の一番手になりし、全国を放浪せし吾なればその後の備えについては知らず。その地を遠く離れし後に、吾がふたたび原発について言及ししは、1996年のことなり、丁度、丁度、東北地方の山形県に勤務しし頃なり。韓国において江陵浸透事件のという北朝鮮の潜水艇が韓国沖で座礁し30名ちかい北朝鮮工作員が韓国領内を韓国軍と戦闘しつつ逃走するという事件が起きたる時なり。仙台にある東北方総監部より類似の事件が日本国内で発生した場合の対応について全部隊に対して質問あり。吾は絶対などという思想はありえぬという形而上の言葉を割け、軍事的に牡鹿半島の付け根にありし女川原発などに駆け込まれた場合の対策について質問せり。東北方面総監部とは今回の原発事故に襲われし福島県も管轄せし部隊なり。また当時、吾が勤務したる山形の司令部は無関係にあらず。福島の部隊と仙台の部隊の間に位置する部隊なり。結局は吾々クラスでは結論を得ることのなき大問題なりと、その時も実感せり」

「その件と、汝の柵の中にてという小説と如何なる関係ありや」

「あの時、このような騒動なく、原発事故に備えておれればと言う後悔なり。吾の周囲は愚かな騒動の最中になり」

「事実にありしことを書きたるや」

「事実か真実かは吾も判断できぬことなり。近代国家における事実や真実は裁判所のみありと信ずる。真実か否かを知りたくれば裁判所に訴えられたし。吾が書きたることはすべて吾の脳内に起きしことや心に感じたることなりと言うしか出来ず。されど一番、腹を立てるは彼が同棲したとわめきし女性を娶った男性と同席したと感じたる時なり、それ以降、吾が人生は大きく狂いたり」と彼は語りたり。

「男女の仲は大事ことなりと我も同じ思いたり」と吾は彼に同情したり。

 彼は意を強くしたるごとく饒舌に語り続けたり。

「個人の人格破壊や病理発症にもつながりかねぬ大事であり。刃傷沙汰、社会の治安の乱れにつながりかねぬことなり。中東を地獄に打ち落としたるISなり軍事国家も原因は男女の不自然な関係から生まれた結果にあらすや。、男女関係が国を滅ぼすこともあると言う、傾城の美女という言葉もあるほどなり。軽々しく扱えるものではなきことは明確なり」

「若く血気盛んな若い者が多い柵の中での出来事はあり、騒動になりたるは明らかなり」と 吾は同情せり。

「それ以降は我の人生も大きく狂いたり。柵の中から解放されて五年余りの歳月過ぎし今では心の傷は残りたり。先述のとおり加えて福島原発事故と中国の勃興なり。我が最近、思いたる福島原発事故後に国内最初の原発再稼働に選ばれしことも関係にありたることも、我の物語に無関係にあらざるように思うことあり。電力会社も政府も我の物語を承知したるがごときに妄想せり。2011年3月11日全電源喪失直後に現地部隊や陸上自衛隊全部隊でが迅速に応をしておりせば、これほどの大惨事に発展することもなかりきと思いたることもあり。いかなる対応をしたりか知りたきと思えど、不確かなネットのみの情報のみ。我らより中国の諜報機関の方が多くを知りたるにあらずやと不安に思うこともありたり。まったく陸上自衛隊がかっての軍隊の勇敢でなきと判断されれば抑止力も一挙に失われることなり。故に危機管理、安全保障態勢の再確立を唱えるものなり。また中国の人海戦術なるもの国際的なルールを守るは限らず。犯罪的な行為で国家を破壊せんとするものあり。中国のみならずテロも恐るべきなり。原発事故のみにあらず危機管理安全保障全域に及ぶことなり」

 彼の言葉が途切れて聞こえたり。ポタポタの車の屋根を叩く大きな雨粒の音のせいやも知れず。あるいは彼の声が小さくなりつつあるせいやも知れぬ。言葉を聞き逃さぬように、全神経を心の耳に集中して聞けり。

「思春期の頃より、エネルギー問題、食糧問題、国際紛争が、すべて人口問題に関係すると人口問題に関心を持ちしものなり。人類の生存のために原発は必要な技術やも知れぬと感じおり、いたずらに原発を否定する立場にあらず。我が国にとって一番の危険な国は反日教育と人口爆発を経たる中国なりしともすでに考えおり」

「劣等なる」と汝、自らが認めたるに疑わしきかなと疑問を彼に投げたる。

 彼は弁明を続けたる。

「真実なり。国境の壁に閉ざされたりと言えど、毛沢東時代の様子やベトナム戦争終了後に起きたる中越戦争に関心を持ちたり。仄かに聞こえたる真実は人口爆発なり。今にいたり、当時の中国国内の人口政策がごときを知り得て驚愕せり。偉大な指導者の元では人口が増えるという中国古代の思想を具現するためなり。毛沢東主席を偉大な指導者であり、人口を増えねばならないという毛沢東礼賛の声と重なる理屈なり。身近に餓死者が多く出るにも関わらず、妊娠した女性を衆目の監視下におかれるごとく強引に出産を強要したるという惨いことも聞けり。大衆は愚かなり。余談なるが原子力エネルギー開発にはアイシュタインなど多くのユダヤ人が関係しており、ユダヤ人と対立せしイスラム教徒にとってはライバルが開発した技術なり。原油を生産する中東地域はイスラム教国家が多く存在したり。愚かなる者が人類に危機を追い込まん時代なり。さらに腹立たしきは最近の

きではあらざるや。腹立たしきは最近の不倫報道なり。伝統ある出版大手の某社が片棒を担ぐがごとき行為をすることなり。日本国憲法や法律に基づき裁くことは出来ざるや」  彼は感情的になりし様子にて、声は少し震えたり。

「そのことと柵の中にてという小説といかなる関係ありや」と多少の共通点を感じつつも問い、彼の怒りを宥めんとす。

「人間は愚かなり。テロや紛争や戦争を撲滅する容易にあらず。中国の人口爆発を嘲笑せるも戦前は日本も同じなり。男の子は国の宝と誕生直後から兵隊保険に加入し兵隊になる準備を始めたり」

 いよいよ激しき雨粒の音の中に彼の言葉は途切れ途切れに聞こえるようになりたり。

「遠い昔の窮鼠猫を噛むという言葉は哀れみと同情の言葉なりたり。柵の中にてという小説を出したる汝を許したる言葉とも聞く」と小冊子を借り受けし知人の声を彼に伝えたり。知人より聞きたる彼や家族の貧困について確認することにしたり。

「遠い昔の窮鼠猫を食むと表現には反論はせず。ただ今回は大きく異なれり。怒りなり。ただし個人的には未だ窮鼠という状況は変わらぬ」

 さらに彼の声は小さくなりし。かならずしも雨粒の音とは思えず。彼みずからが声をひそめしが故なりと思う。

「昨年、実弟が東京にてのたれ死にがごとき死にて後に 我は少し肩の荷を下ろしたり。数年で彼の受け取ることが出来る年金は未だ生活保護にて生活し続けたる母の手に渡ること思いたるが故なり」

 最後に問いたり。かの小説は現実にありしことを基に書きしかと。

 彼、曰く。

「吾にとってはひたすら小説なり、虚構なり。事実であったかどうか吾に関わらぬことなり。しかしして汝らが明確な責任追求のために解明する価値と必要性ありと判断されれば法廷なり、政治の世界で明らかにされるべし。30年前の出来事とて終わりしし事件あるいは過去の歴史にあらず。むしろこれから事故原子炉の廃炉や故郷を失いし者たちが辿る長歴史の始まりなり。吾にとって2011年3月11日の福島第一原子力発電所1号機爆発の瞬間にて一つのこと終われり。ソビエトやアメリカでのチェルノブイリ原子力発電所やスリーマイル原子力発電所の事故を体験しつつ、また国内での柏原原子力発電所の事故を体験しつつもは、原子力発電は絶対に安全なりと虚構に造り、社会を弛緩させたる集団の一翼を担いたる存在やも知れず」

 と彼は繰り返したり。

 数少なき読者諸君、彼の告白を如何に感じぬ。

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