浮気
「あー暇ーあーーーーーひーまー」
「綾田…うるさい」
「今日バイト休みだからひまなんだよー光永ー今日バイトー?」
「休み」
「なら、遊ぼうぜー!」
今日は愛華が用事があるらしくバイトは休みだ。なにをしようか俺も決まっていなかった。
「いいよ、なにすんの」
「カラオケ行こうぜ!」
カラオケか、バイト忙しくて最近はまともに遊んでいなかったからな。
「いいよ」
授業も終わり綾田と学校を出ると愛華が歩いてるのが見えた。声を出しかけた時愛華の隣に見慣れない奴がいた。制服からして同じ学校の奴。
どこに行くんだ?
「?、光永?」
「悪い、カラオケまた今度」
怒ってなにか言っていた綾田を置いて愛華達を追った。
なにをしてるんだ?愛華は今日で学校来るのが終わる。来年から通信制の高校に入学する。何の用があの男はあるんだ?
少し距離を置いて着いていくと大きなイオンモールに着いた。愛華達は服や小物、文房具を見ていた。
あー、ダメだ…これ…デートだ…。
付き合い出してまだ日が浅いのにもう浮気か…。
浮気…。
愛華と出会う前に俺は一つ上の先輩と付き合っていた。可愛いくて頭が良くて、でも、おっちょこちょいで甘えん坊で、なにをしても一生懸命な人。俺はその人に惹かれていった。勿論、先輩はモテたが誰とも付き合わないことで有名だった。俺は1年の夏休み前に先輩に告白した。振られる覚悟はそりゃぁ、あった。
でも、先輩は私もと言ってくれた。それからは幸せだった。先輩は一人称が変わる人だった。学校内では私、家の中でも私、友達といる時も私、俺といる時は僕だった。本当の一人称は先輩は僕で可愛いかった。俺の家に来ては甘えてきた。毎日、学校が終わったら俺の家だった。自分の家だと落ち着かない。居場所がない。俺とに手につかない人だった。真面目な人でテストの時はテストに集中ということで会わなかった。疑わなかった。まさか、先輩が他の男と関係を持っていたなんて。
「なぁ、またあの先輩いろんな男食ってるってよ」
最初は他の人だと思った。校舎の裏に行くと変な声が聞こえた。覗くとそこに見馴れたバック、靴、制服が散乱していた。その奥にはいくつもの影が重なり合っていた。吐き気がして俺は走って帰った。
「あー、思い出して吐き気…やばい…帰ろ…」
俺は家に帰ることにした。制服のズボンに入っている。携帯がなっていたが気分的に出られる状況ではなく無視して帰宅した。
まさか、愛華に浮気されると思わなかった。どんなに愛してても結局は他人ということか。携帯を開くと愛華から電話がかかっていた。今は愛華と話す気分ではなくかけ直すのをやめた。
1時間たった辺りでインターホンが鳴り、親に出るように言われ玄関を開けた。そこには愛華が立っていた。
「愛華?…」
今は会いたくないと思い要件を聞く。
「先輩、なんで、電話…出なかったんですか…」
「体調悪かったから」
嘘をついた。本当は愛華が浮気したことにショックして出る気になれなかっただけだ。
「そうですか…」
「で、要件なに、」
「その…近藤さんから今日、お誕生日だと聞いて…」
誕生日?あー、今日は俺の誕生日か、忘れていた。
愛華は手に持っていた紙袋を渡してきた。中身を見ると俺の好きな猫のマグカップが入っていた。
「お誕生日おめでとうございます。先輩……だ、大好きです。」
顔を真っ赤にしている愛華を玄関だということを忘れ俺は愛華を抱きしめた。やっと愛華に好きと言ってもらえた。
「愛華、下校の時いたやつ誰。」
「え、下校の時?………あ!もしかして湊人の事ですか?」
「湊人?誰?」
「湊人は私の幼馴染みです。」
幼馴染みだと?…
「え、じゃぁ、イオンモールに一緒に行ったのは?」
「え?イオンモール?見てたんですか?それは…先輩のプレゼント選び手伝って貰ってたんです。」
「なんだ…」
俺は力が抜けたと同時に涙が出てきた。愛華が心配してしゃがむ。愛華を引き寄せ口を塞ぐ愛華が浮気するわけがない、信じよう、あの人とは違うのだから。
「先輩?…」
「愛華……愛してる」
「なっ!…だ、大好きです…」
真っ赤になりながら言う愛華にまた、キスをする。
「絶対幸せにする。」
「…馬鹿ですか…」
ツンデレの愛華はいつも通りだった。
あの人みたいに遊ばれるものか愛華を立派な作家にして俺も夢を追って愛華と同じステージに行く。必ず。
愛華を家まで送り猫のマグカップを眺めていると親が部屋に入ってきた。
「光永、彼女は大事にな」
珍しくそんなことを言われ少し嬉しく感じた。警官の父親は辞めとけやまだ、お前には早いなどと言ってくるものかと思っていた。
急に柄でもないことを言われぎこちなく返事を返すと髪を掻き乱され部屋を出てい部屋を出る父の背中は初めて頼もしい大きな背中だと思った。
愛華にかぎって浮気なんてない、あいつは俺のだから。絶対に幸せにして笑顔にしてみせる。
俺は初めてしっかりと眠ることが出来た。
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