エアメイクノイズ
僕は時々誰もいないところで誰かがしゃべっているように感じる事がある。よく耳を澄ますとそれは水の中に立っているあぶくのようなtt音だ。
水洗トイレが流れ続けている音にも似ているかもしれない。滝の音に人の声が混じったり、ゲームセンターの騒音が段々音程を失っていく過程でもそんな音に変換される気がする。
そのあぶくのような音は、ぼくのみみをひっぱったクラスメイトの声であったり、僕の眼鏡を笑ったりというのを再び行うのである。その時僕はそれをされた瞬間感じなかったようなあらゆる感情に攻撃される。頭痛がして、動けなくなり、罪悪感と追い詰められた感覚に支配される。こんな僕をみんなは期待していたのだろうか。思い知る。
また、寝入りばな不意に流れていないはずの音楽が聴こえてくることがある。その音はとても快適だ。その音に気付くとすぐ夢から覚めてしまうが、その頃には頭の中にたまり込んだ疲れの元がすっかりなくなっている気がする。
ある日僕はあぶくのような音を道端で聞いてうずくまっていた。もう一歩も歩けないような気がしていたのだ。うずくまってるとやがて収まるのだが、この日ばかりは収まらなかった。
過ぎていく靴音が不意に目の前で止まった。
「なんだよこいつ。」
「気持ちわりーな。不審者だ、通報しろ。」
20代くらいの派手目の青年が2人、ニヤニヤしながら僕の前で立ち止まっていた。
後ろには背を丸めながら怯えたようなカッコをして、チラチラ見ながらクスクス笑っている10代半ばに見える小柄な女性がいた。
僕はこれでもう自分の人生は終わる気がした。
未来永劫、僕は彼らの餌食に選ばれてしまったのだ。
だが不意にその時。頭の後ろで寝入りばな聞こえる、あの快適な音楽が鳴り始めた。
「何があったんですか?」
もう一人、10代半ばに見える女性の隣にかなり派手目だが、やけに天然そうな背の高い、堀の深い女性が立っていた。
例えるならそう、アンジーかな。
唇が確かにそっくりだ。
ぼくはそのまま意識を失った。
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