第34話 恋の片思い 5
「そんなことないよ。私達の食事は普通だよ。コリー、すまない。ミーナはいつもは残さずに食事をするけど、今は気持ちが悪いみたいだ。ちょっと神殿まで送って行くよ」
「いいのよ。ダニー。それじゃあ、私ダニーお兄様が戻って来るまでここに居ますね。後で一緒に髪飾りの卸業者へ行きませんか?」
コリーがダニーの反対側に来て言う。
「コリー、俺はミーナが心配だから今日は用事が済んだらすぐに帰るよ」
「そ、そうなんですか。でも、龍姫様んは王太子様も一緒に居られるのですから、別にダニーお兄様がいなくてもよろしいのではありませんか?」
コリーが寂しそうな顔をして言った。
「そうだよ。ダニー、たまにはコリーにもかまってあげろよ。龍騎士になって、全然時間を過ごしてないじゃないか」
ユライが一瞬私を睨んだ後に、ダニーの方を見て普通に話した。ダニーは、ユライが私を睨んだことに気づいていない。
「ダニー、私は大丈夫。部屋で休んでいたら、すぐに良くなるわ。だ、だから、コリーと一緒に買い物をしてきて。わ、私もどんな髪飾りがあるか気になるし……」
はじめはコリーは、頬を赤くしてダニーを見ていたけれど、私がおねだりをしたようなことを言った時に真面目な顔で私を直視した。
「まあ龍姫様って、おねだりがとても上手な方なんですねえ。そうして殿方に物をねだるのですねえ。私も参考にしたいけど、やはりわたくしには、そんな行為は出来ませんわ」
コリーが言った。
「わ、私、おねだりのつもりではありません!」
大きな声を出して、はっと口を閉じる。
「そうだよ。ミーナがおねだりなんてしたことなんて一度もないよ。コリーも何か好きな物があったら、買ってあげるよ」
「まあ、ダニーお兄様。わたくし、とてもうれしいですわ」
コリーが両手を前で重ね合わせて、大きな笑顔でダニーに言った。
そんなコリーを見ないでダニーは、コリーに言った後に私の髪を一房優しく掴んで私の耳元で囁いた。
「それでは、ミーナに似合う髪飾りを探してプレゼントにします。ミーナの銀色の青い髪には、どんな髪飾りも似合います。ミーナが私の選んだ髪飾りを付けて下さるなんて、私はとても光栄です」
ダニーがそう言った後に、手にしていた髪にキスを落とした。ダニーのその仕草が、セクシーでドキっとする。私の顔が急に熱くなった。でも、ついコリーの顔を見て、一気に熱が冷めた。コリーの顔が怖かった。
私はこんな顔で、人に睨まれたことはない。
「では、行きましょうか」
コリーの顔が怖くて固まっている私の腰に、ダニーが手を回した。
「ええ」
やっと、それだけ言えた。
「龍姫様、お体に気をつけて下さいね。きっと私が提案したことを実効なさったら、気も晴れるでしょう。龍姫様の健康にもいいでしょう。では、さようなら」
ユライがニヤリとして言った。
「ユライから健康の対処方で、何かいいことでも聞きましたか?」
スカイに乗っている時に、ダニーが聞いてきた。
「う、うん」
私はただ頷いた。ダニーはそれ以上聞いてこなかった。
その日、私はまた熱を出してしまった。美奈の時の私は、どちらかと言うと元気な方だった。ミーユも、田舎娘で元気だった。
でも、二人の合わさったミーナは、よく熱を出すの。特に精神的にきつい時に、熱が出てします。はじめは、知恵熱だと思っていた。
でも、最近、なにか違うような気がする。
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