第32話 恋の片思い 3
「ダニーお兄様。会いたかったわ」
「ああ、コリー、元気だった?」
「はい、でも、わたくし、お兄様に会いたくて仕方ありませんでした」
私はダニーの横から少し前に出て、コリーを見た。
「っあ、失礼しました。龍姫様ですね。わたくしとしたことが。はじめましてダニーお兄様と仲良くしておりますコリーと言います」
コリーがにっこり笑った。
「はじめまして、ミーナといいます。こちらこそよろしくお願いします」
私は頭を下げながら言った。
「お兄様。お兄様の大好きなアップルパイを焼いて来ましたの。熱いうちに召し上がって下さい」
コリーは、ダニーの腕に自分の腕を絡ませてテーブルの方へ行った。
「コリー、ちょっと待って。ミーナもどうぞ」
ダニーが慌てて私の腕を掴もうとしたけど、コリーに引っ張られて行った。私はそんな二人の後を歩いた。
コリーは、美人でも可愛い顔でもない普通の顔だと思う。でも、鼻の上のソバカスや青い色の目が綺麗で、小麦色の髪の毛も綺麗。何より天真爛漫な性格のようだ。きっと彼女のこの性格が、彼女の一番の魅力なのかも。でもこの性格が私を傷つける。私はコリーの態度が分からないままテーブルの開いている席に座った。テーブルにはユライが、すでに座っていた。コリーはダニーを自分の横の席へ座らせた。私はダニーとコリーの反対側の席に座った。
「ダニーお兄様は、紅茶ね。ちょっと、今入れるからね」
コリーが紅茶の準備をして、コップをダニーの前に置いた。
「龍姫様も紅茶でいいですよね」
と、コリーが私の前にも紅茶を置いてその後にアップルパイののった皿を置いた。
「ダニーお兄様、お味はどうですか? まだたくさんありますので、遠慮なさらないで下さいね。きっと、神殿ではこんな庶民の料理なんて滅多に食べれないでしょうからね」
と言って、ダニーのコップにもっと紅茶を注ぐ。
「イヤ、神殿でも普通にパイとか食べるよ。でも、コリーのアップルパイは最高です。それに、この紅茶も美味しいよ。ミーナもそう思うだろ?」
ダニーが紅茶を手に取って言った。
「あっ、はい。おいしいです」
「ほら、やっぱりコリーのアップルパイは最高だ」
ユライがニコニコした顔で、コリーに言った。
「コリー、紅茶のお変わりを貰えないかい?」
ユライがコップをコリーの方へ向けて聞いた。
「ごめんなさい。もうお湯がないわ。仕方ないわ。キッチンへ取りに行って来ます」
コリーが席を立って、給仕のカートに手をつけた。
「ダニー、お願いだ。コリーの手伝いをしてくれないかい? コリー、昨日少し足をひねって歩きずらいんだよ」
ユライがダニーに言った。
「もうユライ。それをダニーお兄様へは内緒って言っていたでしょう!」
「コリー、あんまり無理するのはよくないから、こう言うことはちゃんと言わないといけないんだよ。だから、ダニー、コリーを手伝ってくれないか?」
ユライがダニーの方を見て尋ねた。
「ああ、分かった。ミーナ、ちょっと待っていてね」
ダニーは席を立って、カートを押して部屋から出て行った。
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