第31話 恋の片思い 2
タケルイが去った後。「ぼー」と空を見ている私をダニーが心配して抱きしめてくれた。
ダニーは、今から実家へ行く予定だった。でも、私のことが気になって私を掘っとけない一人に出来ないと言った。だから私も一緒にダニーの実家へ行くことになった。普段私が外へ出かける時は神官兵士が付くけれど、龍騎士のダニーが一緒なので今回は二人で出かけた。
馬車の中、ずっとダニーに寄り添った。最近の私は自然と彼に甘えてしまう。ダニーもそんな私の髪を彼の長い指でとぐ。彼の指が気持ちいい。
「着きましたよ」
ダニーの体から伝わる熱が気持ちよくて、少し眠りかけていた私をダニーの声が現実へ引き戻す。私はダニーの手を借りて、馬車から降りた。
「お兄ちゃんだー」
目の前に聳える大きな屋敷から、この前のダニーの弟達と妹達が出てきた。私は目の前の大きな屋敷に圧倒されている。この屋敷は、龍屋敷の何倍も大きい。城と言っても、頷ける大きさ。
「こ、これ、ダニーの家?」
驚きながらダニーに尋ねる。
「ええ。大きいでしょう?」
「うん」
「だ、ダニーって金持ちだったんだ!?」
私がそう聞いたら、「私が金持ちではなく父が金持ちなだけです」ダニーが言った。そう言ったけど、ダニーが商会の仕事を仕切っていると聞いたので、やっぱりダニーは金持ち。日本で言うと御曹司ってなるの? まあ、社長の息子には代わりないけれど。
「今日は、龍姫様も一緒だー」
「こんにちは。龍姫さまー」
ダニーの小さい妹達が、小さいレディーのように挨拶をする姿が、可愛い。
「こんにちは」
私もついにっこりして、挨拶した。
「ダニーお兄ちゃん、スカイを呼んで」
小さい妹がお願いした後に、今度は弟達もダニーにお願いをする。
「わかったから。ここでは、無理だから中庭へ行こう」
ダニーにエスコートされて屋敷の外を歩いた。屋敷の外の景色はどこも綺麗に手入れされていて、ヨーロッパの庭を見学している気分になる。
「きちんとルールを守って龍に接するんだよ」
ダニーは注意をした後に、「スカイ」と声を出した。スカイが急に空へ現れて、私達の方へゆっくりと降りてくる。
「すごーい」
「きれいー」
「龍はどこから来るの?」
ダニーと私にも龍がどこから来るのか分からない。
「さあなあ、私にも龍がどこから来ると言うことが分からないんだよ」
ダニーが妹の髪の毛を撫でながら言った。
龍は本当に不思議な生き物だ。私も何度かダニーにスカイに乗せてもらったけれど、龍のことは何も分からない。
「じゃあ、私とミーナは中へ行くけど、あくまでも優しく龍に触れるんだよ。じゃあ、ミーナ行こうか?」
私とダニーは屋敷の中へバルコニーから入った。屋敷の中も豪華。もうこれは、お城でいいと思う。
「少し家の中を見ますか?」
あまりにも私が、キョロキョロしているのでダニーが私に聞いた。
「あっ、うん。見たい」
私達は屋敷の中を歩いて回った。部屋の一つ一つ見せてもらった。はっきり言って、何個寝室があるのかダニー自身も知らないと言った。ダニーにとって、あまり興味のないことみたい。部屋の一つ一つのデコレーションも違って、博物館のようだった。
ダニーがお城へ仕事で行く機会があるので、あまり珍しくないと言っていた言葉を思い出した。でも、本当は自分の家がお城だから、別に驚く必要がないのかもしれない。
「ダニー」
廊下の肖像画を見ながら歩いていた私達に、ダニーの弟の由来が声をかけた。
「ああ、ユライ」
ダニーがユライに言った。
「なんだ、来ていたんだ。丁度よかった。今、コリーが来ているんだ。コリーがアップルパイを持って来てくれたんだ。一緒に食べよう。そして、ダニー。彼女と一緒に髪飾りの卸業者へ行ってもらえないか? 今度入荷のことで、どの商品がいいか女性のコリーの異見を聞いた方がいいと思うんだ。いいだろう?」
ユライが私達に近づきながら言った。
「ごめん。今日はミーナも一緒に来ているから、コリーとは行けない。また、今度な」
「っえ? 龍姫も来ているのか?」
どうやら、私はダニーの影に隠れていて見えないらしい。
「こ、こんにちは」
私は急いでユライに見えるようにダニーの横に並んで挨拶をした。
「はあ、ご機嫌よう。龍姫様。龍姫様もどうぞお茶に参加して下さい」
ユライが軽く私に頭を下げて、後ろを向いて今来た道を戻って行った。
ーーなんか私のこと、嫌いなのかな?
ユライの態度は丁寧だけど、彼が私のことを嫌いなのが伝わってくる。
「じゃあ、行きましょうか? コリーのアップルパイはとても美味しいですよ」
「コリーって?」
ダニーに尋ねてみる。このコリーと言う名前は、確かユライが前にダニーへ怒っていた人の名前と同じ人だ。
「ああ、コリーですね。コリーは幼なじみです。私達の商会で働いている人の娘で、ユライと同じ年の女性です。小さい頃から、私達と仲良くしている子です」
ーーじゃあ、その幼なじみはダニーのこと好きなんだ……。
と思ったけど、口には出さなかった。ううん、出せなかった。
不安な気持ちを抱えながら私達は一階にあるダイニングルームへ行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。