第30話 恋の片思い

「ミーナ、このことは私とメリエッシの間で話し合って解決したことなんだ! 今さら私がノコノコ彼女に会いに行って、結婚相手のことをとやかく言う方がかえって彼女に対して非礼になる。私が止めに入ったら、私と寄りが戻ると言うことになる。もちろんそんな気は、私にないが彼女の方は期待してしまうことになってしまう」


 タケルイの言っていることは、もっともだと思う。頭では分かるけど、心が付いていかない。


「で、でも……」


 そんな風に、口ごもる私にタケルイがイラついた。


「だから、何度も言っているだろう。メリエッシのことは、終わったんだ! 私が一体いくら彼女にお金を払ったと思うんだ! こんな大金を払って、婚約解消をした実例なんて今までなかったんだぞ!

 それによって、私は、私の財産はほとんどなくなった! 祖母から譲り受けた宝石だって! 父から貰った宝剣だって! 全部、メリエッシにあげたんだ! 私は、本当にどうかしていたんだ!

 メリエッシとの結婚に、家族や大臣達、周りの友人は全員反対したけど! 反対したけど、私は! 私は、借金や財産困難はメリエッシのせいでなく、父親のせいだと思って皆の異見を無視して婚約したんだ!」


 タケルイが手に拳を作りながら叫んだ。


「それなのに! 今度は婚約破棄になった途端、法外な金額を請求してきた。確かに、私はメリエッシにキスをしたが、それ以上の体の関係を持ったことはない! それなのに、男爵と言ったら、娘が傷物になったと自分から言いふらして私に責任と取るように請求してきたんだ!

 それも結婚出来ないと言ったら、妾でもいいと言うんだぞ! 自分の娘を妾に望む父親なんて一体どうかしている! そして、それを父親の隣で大人しく聞いているメリエッシも、信じられなくなったんだ。以前はか弱い彼女を守るのが私の使命と思っていたけど、今思うと私はなんと幼い男だったと思うよ」


 私はタケルイの話を、ただ聞いているしか出来ない。


「ミーナは、自分の意思を持っていて強い。でも、強い中に弱さがある。私はそんなミーナに惹かれる。ただ言いなりになっているか弱い女より、そんな女性の方があまりにも弱くて愛おしい。私はいつ折れてもいい儚いミーナに惹かれる。愛している」


 タケルイが私の手を自分の両手で包んで、言った。


「私にとってメリエッシは、もうどうでもいい存在なんだ。そんな気持ちを持っている私が、メリエッシに何か助言をすることは、返って彼女を傷つける……」


 私にもタケルイの言っていることが正しいと分かるの。分かるけど……。


「で、でも……」


 ーーああ、私は何を言っているのだろう。


「もういい! 勝手にメリエッシの心配をすればいい! ミーナにとって、私より彼女の方が大切なんだ! もう勝手にしろ!」


 タケルイが私の手を放して、怒ってサファイアに乗って空へ行った。私は急なことで、ただそこに立ったまま空へ飛び上がるサファイアとタケルイを見ていた。

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