第28話 夜会 3

「この方がですか? これは幸運な。はじめましてクセイ男爵です。この王都から二週間くらい馬車に乗って西へ行った所に領土があります。私の館も海に面しております。領土は海の幸で、それは豊かな所です。ぜひ龍姫様に来て頂きたい所です。どうぞ私共の結婚式へ参加してくだいませんか?」


 男爵が聞くけど私は息を止めていて、頭に酸素が回ってなく、頭があんまり動いていない。


「まあ、それはなんと言う素晴らしい提案なんでしょう。生憎私達は長旅は無理ですが、龍姫様は龍に乗って行けばすぐですわ。やはり、どなたか参加しないと、寂しい結婚式になってしまいますしねえ」


「それはいい。それでは結婚式で待っています。後で招待状を送りますね。へっへっっへ。龍姫が結婚式に参加するなんてこれですごい自慢になるわい。


 失礼、私も他の方々に挨拶をしてきますのでここで失礼します。メリエッシも友人との会話を楽しんでおれ。当分は王都へ来ることなんてないからな」


 男爵が人ごみの中へ行った。


「はああー」


 しまった。思いっきり息を吸った!


「龍姫様。まさか、息をしていなかったなんてことはありませんよねえ」


 隣の赤毛が話かけたので思いっきり首を振る。


「ううん~?」


「そうですよねえ。いくら近くにいて臭くても息を止めるなんて言う令嬢にはあってならない行為なんてしていませんよねえ」


 と、聞いたので、私はひたすら首を振った。


「まあ、いいでしょう。それにしれも、よくあの匂いに耐えることが出来ますねえ」


 と、赤毛がメリエッシに言った。


「わ、わたくしは……」


「まあ自分の旦那様になられるお方の匂いなんて、どれも素敵になるのでしょうねえ」


 メリエッシが返事をする前に赤毛が言った。


「それにしても、あんな男と結婚するのも嫌なのに、辺鄙な所が領土と言うのもねえ」


「わたくしでしたら、そんな所に住みたくありませんわ。知っていますか。そこは、犯罪者達の流刑の島があるらしいですわ」


「まあ、それはどう言うことですか?」


「なんでも、罪を犯した人達は、その男爵の領土の浜辺からその辺鄙な島へ送

られるらしいですの。その島は、荒波に囲まれていて逃げ出すことが出来ないらしいですの」


「王太子妃と男爵夫人、これもすごい差ですこと。ほっほっほー」


 令嬢達が一斉に笑い出した。


「わ、わたくし、す、少し気分が優れないので、し、失礼します」


 メリエッシがそう言って、バルコニーの方へ走って行った。私はそんなメリエッシが、気になって追いかけた。赤毛の令嬢はもう私が必要ないようですぐに手を放してくれた。バルコニーから外へ出て彼女を探した。運良く誰も私が龍姫と気付かずに、止められることなく庭に出ることが出来た。


「うっうううううう」


 小さな泣き声の方へ歩いた。ベンチに座って泣いていた。


「大丈夫ですか?」


 私が声をかけると、メリエッシが驚いて頭をあげて私を見た。


「あっ、龍姫様」


「ううん座っていて。私も座ってもいい?」


 彼女が立って挨拶をしようとするのを止めた。 


「ええ、もちろんです」


 私は月明かりの中で、メリエッシを見た。彼女は可愛らしい顔をしていると思う。タケルイがこんなタイプなんだと思い少し胸が痛い。

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