第4話 私は龍姫
私は一ヶ月くらい寺院でお世話になった。あのヒゲむじゃな男は神官だった。神官とその地域で医者を兼ねている人と聞いた時は驚いた。この一ヶ月私はこの世界のことを学んだ。元々ミーユの記憶があったからすんなりと知識が入ることが出来た。
私は隣国の龍騎士に助けられた後に、一番村と近い街へ連れて来られた。基本的に龍騎士はこの世界では最高地位にいるので、国境とか関係なく国都へ連れて行けるけど龍騎士様は自分の龍姫様の所へ戻りたかったみたいで、私をここに連れて来た。
この世界には魔物がいる。なぜ魔物が出来るのか誰も知らない。魔物を倒すのは、龍にしか出来ない。龍は龍騎士一人に一匹の龍が付く。龍がどこから来るのかも知られていない。
この世界の女子が成人すると、背中に龍の模様が現れる。その模様が現れた女が、「龍姫」と呼ばれる。未通の女性で、誰に現れるか分からない。それで、少人数だけれど一生独身を通す女性もいるらしい。全ての女性達は龍姫になりたがるらしい。
龍姫は、自分の龍騎士と一生寄り添って過ごす。龍姫と龍騎士は年をとらずに若いまま生きる。この世の人達より長い時を過ごす。隣国の龍姫と龍騎士は、百五十年生きている。最高は三百年と記録されている。この龍騎士と龍姫の最後を人が知ることはないらしい。
私がここに運ばれた時に、怪我を探していたおばさんによって背中の模様が発見された。私が龍姫と言うことはおばさんとヒゲもじゃ神官しか知らない。もし誰かに知られると攫われたり、殺されたりすると言われた……。
「どうして殺されるのですか?」
救世主のような龍姫が、殺害されるのが不思議だ。
「それはね、龍姫と言うのは国王より身分が高い存在なんだよ。龍姫と龍騎士は、この世の生き神なのよ。全て女性は、龍姫になりたがっているって言ったでしょ。
だから、まだ龍騎士を得てない龍姫は簡単に殺せる。龍姫が死んだら自分が龍姫になる確立が増えるって言うことなの。
確かに、一つの国に二人の龍姫が存在した時もあるけど今はどの国も一人の龍姫しかいないからね。だから、ミーナも気を付けるのよ」
私はここでは「ミーナ」と呼ばれている。どうしてもミーユと美奈を忘れたくなくて、名前を聞かれた時に「ミーナ」と答えた。ミーナはこの国では普通に女の名前で、すんなり受け入れられた。
数日休養して私が落ち着いた頃に、王都へ旅立った。おばさんと神官が付き添ってくれた。おばさんの名前は「クレイさん」で、彼女は一度も結婚したことがなく、ずっと修道女として神官の世話をしている人だった。
私はクレイさんに龍姫になりたくて独身なのか聞いたら、
「確かに若かった時はそう思ったけど、私は神様にお使いする人生と気づいたんだよ。だからこうしてミーナの世話が出来て幸せよ」
クレイさんが私の髪を撫でながら言った。数日しか接していないけれど彼女は私にとってお母さんのような存在になった。私は日本にいる家族や友人そして、剛志を思って毎晩泣いた。もちろんミーユの家族、村人達のことも思い出して毎日泣いて過ごした。その度クレイさんが私を抱き締めてくれた。
「ミーナの水色の銀髪は綺麗だね。つるつるして真っ直ぐで。そのぱっちりした目は、サファイヤのようで綺麗だよ。絶対に龍騎士様も、ミーナを一目で好きになってくれるよ」
クレイさんは、ミーユを綺麗といつも言う。 本当の私はこんなに綺麗な顔をしていない。こんなに腕が長くて足が長くて、腰にクビレのあるモデル体系なんてしていないのに。
私と一緒になる龍騎士様が、ミーユの容姿で私を好きになって欲しくない。贅沢かもしれないけれど、私の中身を好きになって欲しい。
「そうだ。ミーナみたいな、賢い女を誰だってすぐに好きなるさ」
相変わらずのヒゲむじゃな神官が、大きな体を少し揺らして言った。この神官のせいで、四人乗りの馬車の室内が狭い。神官の名前は「バルン」はじめは神官様って呼んでいたけれど、
「肩苦しいのは好かん。バルンでいい」
と言ったので、バルンさんと呼んでいる。
旅は二週間かかった。バルンさんは普通相乗り馬車で旅行するけれど、私を気遣って馬車を借りてくれた。私も慣れない馬車での旅だったので、個人馬車でよかった。
二人は私がショックで軽い記憶障害を起こしていると思っている。私もそれを否定しない。いくらミーユの記憶を持っているけれど、どうしてもそれを生活習慣に結び付けるのは難しい。私は美奈の記憶とミーユの記憶の統合のせいでよく熱を出した。私はそれが知恵熱と知っているけれど、二人は私が病弱と思っている。
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