彼女の夢

水越 琴葉

プロローグ


確か、あの人の声は、低く、心地のいい音。

けれど、他の特徴はあやふやで。

例えば、どんなテンポで喋っていただとか、どれくらいのボリュームで話していただとか、どんな言葉を遣っていたのかさえも、うっすらと私の耳に鳴るノイズ音が邪魔をして、上手に思い出せない。


何かの匂いがする。

すん、と鼻から息を吸ってみた。

これは、覚えてる。きっと、思い出せる。


カモミールジンジャーの香り。


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彼女の夢 水越 琴葉 @kotonohako

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