第7話

「な――神様――」

「ん? なんじゃ」


 押入れから程よく見える位置に配置したテレビを、これまたいい位置にあるテーブルにおいてあるお茶とスーパーお菓子を堪能している神様に、帰ってきて速攻で声をかける。


「土曜日の9時って遅くないよね?」

「む? たぶん普通の時間だとは思うが」


 俺は毎朝5時起きなので、9時なんかもう昼の時間に近い感覚である。

 だから挨拶にはベストタイムだと思い、お隣さんちに向かったのだが、先程のありさまになったのである。


「なんか、すごい不機嫌に対応されたよ。髪の毛もボサボサだったし、寝起きだったんだと思う」

「そうか。妾にも隣は見えないし、わからないのじゃ。まぁ、元気出せ?」


 久々に見るテレビに釘付けになりながら、お茶をズズッとすすって、3個目のスーパーお菓子の袋をパリパリと開ける神様。


「あっ、それ! 俺のお小遣いで買った、お楽しみのスーパーお菓子!」


 もうすでに1/3なくなってるうううう。


「テーブルにおいてあったから、お供え物かと思ったぞ。すまんな」


 あああああ、と落胆する俺。

 地元までここから新幹線でも2時間半はかかるっつーのに、さらに1,000円で9個しか買えないのにぃぃっ。


「ま、まあお賽銭てことにして、願い事があったら叶えてやるから落胆するでない」

「じゃあそのスーパーお菓子100個とか」


 涙目で俺は神様に訴える。

 だが神様は首を横に振る。


「だめじゃ。金絡みなことは無理じゃな」


 即答である。


 ***


 夕方、銭湯に行ってくる、とアパートを出たときに隣の女性と鉢合わせた。

 今はバッチリメイクと派手なドレス、毛皮のコートらしきものを着ている。

 あんな出会いだったので、俺はペコリと頭を下げただけだが、女性は俺に話しかけてきた。


「朝はごめんなさい。どーしても弱くてぇ」

「い、いえ」


 ニッコリと微笑む女性。

 どう見てもキャバ嬢だなぁ、と思ったけど朝のが怖かったので、出来るだけ無表情になる俺。


「夕方3時頃なら普通起きてるから、用があったらそのときにお願いしまぁす」

「は、はい」


 と妙な甘ったるい声の女性はカツカツとヒールを鳴らして階段を降りていった。

 うう、ここって治安悪いのかなぁ。

 いまさら怖くなってきたので、そそくさと銭湯まで行き、そそくさと風呂に入ってくる。

 初めての銭湯だったけど、俺は他人の背中に模様がないかどうかを気にしてばっかりだった。

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