第3話

 えーと……

 言われたとおりに玄関から外に出て、さっきの出来事を考えてみる。

 なんで押入れに神様?

 そもそも八百万の神様とか言ってたけど、俺は生まれてこのかた神様や幽霊とか妖怪なんかのたぐいは見たことも聞いたこともない。ああいや、それなりに御参りしたり、『わたしには見える! 体育館のステージの隅にほらあああぁ!』とか言う同級生とか、そんなのはいた。

 でも自分自身が本物の神様なんか、見たことがない。


 しばらく考えて、ありそうな案を上げてみた。

 1.実は誰かが入り込んで生活している。

 2.俺のストーカー。

 3.岩谷さんの巧妙ないたずら。

 4.俺の幻覚。

 5.本当に超常現象。つまりマジ神様。


 1なら警察へ即通報。

 だってそもそも無断で勝手に部屋に入って生活しているとかヤバい系の人だ。

 赤い隈取とかしてるし。


 2は……

 俺はどこをどう見ても普通。

 優等生じゃなかったし、スポーツも出来たってタイプじゃない。顔も超フツメン。残念ながら告白された経験はない。……なにか、オラ、悲しくなってきたぞ、○○ーザ!!

 なので、たぶん2の可能性は薄い。

 だけど、超普通な俺だけど、どこかの誰かの好みのツボに入ったとかいう可能性もあると信じたいので、まったくないとは言えない。

 若干クドくなったのは、モテない俺の言い訳なので、そこは見逃してください。


 3がこの中では一番確率が高い。

 仕込むとすれば、岩谷さんならば楽にできる。

『実は孫娘じゃったんじゃ――驚いたろ?』とかなんとか言ってカッカッカと笑いそうだ。


 手には俺の故郷のお菓子がある。

 牛乳と一緒に食すと最も美味いと言われる、最強のお菓子。岩谷さん、お隣さん、真下に住んでいる方の分の3セットだ。

 アパート自体2階建てなので、上に住む人はいないし、俺の部屋は角部屋なので、お隣さんは一人だけである。


 俺はこのお菓子を餌に、岩谷さんを尋問……いや挨拶へ行くことにした。

 4以降の項目は岩谷さんの出方次第で考えることにする。

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